蹴球放浪家・後藤健生は、西日本のサッカー熱の「急成長」を感じている。その要因のひとつがスタジアムだ。長崎への取材旅行で…
蹴球放浪家・後藤健生は、西日本のサッカー熱の「急成長」を感じている。その要因のひとつがスタジアムだ。長崎への取材旅行では日本酒と、新スタジアムの「素晴らしさ」に酔いしれながらも、なでしこジャパンの未来への「漠たる不安」を感じていた!
■個人の「能力」任せで大丈夫か?
先週末、日本女子代表(なでしこジャパン)のカナダ戦を見るために、長崎まで行ってきました。
日本は11月29日の「MS&ADカップ」では3対0、12月2日のトレーニングマッチ(公式Aマッチ)は1対0と連勝しました。
対戦相手のカナダは2021年東京オリンピックで優勝した強豪で、FIFAランキングも日本の8位に対してカナダは9位。しかし、今回のカナダはなぜかチームづくりが進んでいない状態のようで、プレー強度も緩いものでした。
日本は2試合合計で4点を取りましたが、第1戦の谷川萌々子の先制点が43分、第2戦の田中美南の決勝点が45分。あの相手なら、もっと早い時間にしっかりとゴールを決めておくべきだったと思います。
もちろん、サッカーというのは完璧に攻めてもなかなかゴールに結びつかない競技ですし、シュートがバーやポストに当たる不運もありました。また、第1戦の谷川のゴールは右サイドの高橋はなからのクロスを田中が頭で折り返して、谷川が決めるというきれいなゴールでした。
しかし、日本代表の攻撃は個人能力任せ、個人のアイディア任せで、「こうやって攻めるんだ」というコンセプトの共有ができていません。
2025年はニルス・ニールセン監督就任直後の「シービリーブスカップ」で3連勝して以来、E-1選手権の台湾戦以外に勝利がなかった、なでしこジャパン。カナダに連勝したものの、来年3月のアジアカップを前に危機的状況は続いています。
■「まぶしすぎる!」新スタジアム
さて、長崎まで行ったもう一つの目的は、長崎スタジアムシティ(ピーススタジアム)の見学でした。
昨年秋に完成したスタジアムシティ。九州新幹線の終点であるJR長崎駅から徒歩圏内。長崎市内を南北に貫き、路面電車(長崎電気軌道)が走る国道206号線に面するという絶好のロケーションにあり、V・ファーレン長崎のホーム「ピーススタジアム」とBリーグ長崎ヴェルカのホーム「ハピネスアリーナ」、そしてホテルが併設された複合施設で、ショッピングモールやオフィス棟も入っています。
老朽化した陸上競技場ばかりの東日本から考えると、うらやましい限りの施設でした。
実際、メインスタンド上段の記者席に座ると、バックスタンドの上に巨大なホテルがそびえ立っていました。グラウンド側客室のベランダからは試合の模様を見下ろすことができます。ホテルが併設されたスタジアムは世界にはいくつもありますが(たとえば、中国北京の工人体育場)、客室のベランダからこのような形で観戦できるというのは見たことがありません。
ただ、ホテルのガラス窓に反射した西日が記者席に差し込むので、まぶしくて仕方ありませんでした。季節や時間による太陽の角度を考えてキックオフ時間を設定する必要があるでしょうし、あるいは窓ガラスを反射が少ないものに変えるべきかもしれません。
■街を挙げてV長崎を「応援」!
女子代表の試合が行われた12月29日はJ2リーグの最終節で、V長崎はアウェーで徳島ヴォルティスと引き分けてJ1昇格を決めました。
この日の長崎はテレビのニュース番組でも試合の話題が取り上げられ、路面電車の運転士も青い応援シャツを着用していました。ハーフタイムには「J1昇格決定」のアナウンスがあり、スタジアムは拍手に包まれました。日本対カナダの試合の入場者数は8634人。V長崎の試合と重なっていなかったら1万人入っていたかもしれません。
まあ、長崎にとって重要な日に、長崎市に滞在できたのは僕にとっては貴重な経験にはなりました。