ゴング直後から幾度も左ミドルを相手に蹴り込み、突如、同じ軌道から突き刺さるヒザでひと刺し。見事なKO劇に識者も「刀でど…
ゴング直後から幾度も左ミドルを相手に蹴り込み、突如、同じ軌道から突き刺さるヒザでひと刺し。見事なKO劇に識者も「刀でどんどん振っていたら短刀でサクッと来た感じ」と独特の表現で勝利を称えた。
後楽園ホールで開催された「Krush.182」、豊田優輝(BELLWOOD FIGHT TEAM)と光佑(WSRフェアテックス三ノ輪)の対戦は、豊田が2ラウンド左ヒザ一発でKO勝ち。序盤からの、しつこさすら感じる執拗な左ミドルと見せかけての見事な一撃でド派手に締めくくった。
両選手とも昨年11月以来、じつに1年ぶりのKrush復帰戦。31歳のベテラン・光佑は基礎に立ち返って技術を見直した1年。一方、「K-1カレッジ2019」優勝者の豊田は、3連敗から脱出するも呼ばれず「もやもやしていた」と吐露。ともに準備万端で臨んだ一戦だ。
アグレッシブな両者はゴング直後からスイッチが入ったかのようにミドルやローの応酬。豊田は思いっきりのいい左ミドルを皮切りに、右の前蹴り、再び左のミドルと蹴りが冴える。下がりながらも自分の距離でミドル、ローとテンポよく蹴る豊田に対して、光佑は前に出たいのに出るたび被弾する“受け一辺倒”の展開。この独特の間合いからの蹴り一辺倒の攻めに、ファンも「特殊な左ミドル」「左ミドルで完封している」「相手の前進を止める蹴り」とざわめき始めた。
2ラウンドも開始から豊田の執拗な左ミドルで開幕。解説の卜部弘嵩が再三にわたり「光佑の左の対処が良くない」と厳しく指摘。一方のKrush宮田充プロデューサーは「光佑が盛り返してきた」とのフォローも、実際の攻防は依然として豊田の左ミドルが主役の展開だ。
光佑はローやパンチで対抗しようと前進を続けるものの、攻めのたびにボディとガードをミドルで叩かれ続け、「ミドル蹴られすぎ」「またミドル」との指摘が多数。卜部は「蹴り返してればまだ全然いいです。僕は最後に攻撃した方が有利と考えています」「審判団への印象もありますが、自分のメンタル的にも大事」とやや強めに持論を展開していたが、その発言を裏付ける瞬間が訪れる。
豊田がこれまでと同じように横から左ミドルのモーションを見せたかと思うと、その軌道のままテンカオ気味の左ヒザをボディに突き刺す一撃。これに光佑が前方に崩れ落ちるようにダウンする。
卜部は「ミドルと同じような軌道でしたね」と指摘。ファンからは「レバーじゃん」と、その破壊力に驚きの声が多数。ミドルで上と外の意識を釘付けにしておいて、同じ振りからボディへ“グサリ”。技術的にも見た目にも非常に“映える”フィニッシュを卜部は「刀でどんどん振っていたら短刀でサクッと来た感じですね」と独特すぎる言い回しで表現。さらに「軌道が左ミドルに慣れていた分見えなかった…軌道が読めなかった。攻め方として良かった」と絶賛した。
印象的だったのは、試合後の“様子”だ。勝者・豊田がコーナーでアピールしている間も、光佑はしばらく前のめりの姿勢から起き上がれずリングに突っ伏したまま。ボディに深く刺さったダメージの大きさが、そのまま画面に映し出されていた。