千葉県を代表する進学校・県千葉。県船橋、東葛飾と並んで県立御三家と呼ばれている。そんな名門に楽しみな左腕が現れた。その名…
千葉県を代表する進学校・県千葉。県船橋、東葛飾と並んで“県立御三家”と呼ばれている。そんな名門に楽しみな左腕が現れた。その名は加賀谷 一(はじめ)。最速140キロの速球には伸びがあり、スライダーの切れ味も抜群だ。この秋は県大会2回戦敗退ながら、千葉県選抜に選出された。
ケガ続きでも8校からスカウト
11月、取材日に見せた加賀屋の投球練習を見て、逸材であることが実感できた。
テークバックが大きく、スムーズな腕の振りから繰り出される回転の良い直球、チェンジアップ、カーブ、スライダー。いずれも精度が高い。
県千葉の黒川健太監督も「新チームになってから、千葉高野連の役員の方々が所属している高校と練習試合をさせてもらいました。そのたびに加賀谷は高く評価されています」と語る。
加賀谷は徳島市出身。4歳のときに千葉市に移住し、小学1年生から千葉市の有吉メッツで野球を始める。左投げながら投手、捕手を兼任していた。千葉市選抜に選出され、その大会での投球が中学硬式野球の名門・京葉ボーイズの関係者の目に留まり、入団が決まる。
同チームには、主力選手が出場する京葉ボーイズに加え、控え選手が出る京葉下総ボーイズ、京葉八街ボーイズがある。加賀谷はなかなか主力チームである京葉ボーイズで出場ができなかった。腰椎分離などの怪我に悩まされ、思い通りに投げられない日々が続いたからである。そんな状況でも試合で投げれば、左腕ながら130キロ近い速球を投げ込んだ。登板機会は少なかったが、高校進学に際しては8校ほどから誘いがあったという。
それでも加賀谷は、超進学校・県千葉への受験を決めた。同校には加賀谷の兄・昊さんも通っていた。ちなみに昊さんは現在、東大工学部に進学し、東大唯一の硬式野球サークルである「東京大学丁友会硬式野球部」に所属している。
「自分の家庭は勉強優先です。中学は千葉大付属中に通っていましたが、提出物を出さないこともあって、評定平均はあまり良くなかったんですけど…試験には自信がありました。自分も進学校に行きたいと思って県千葉への受験を決めました」
一般受験を経て、見事難関校に合格。中学時代、故障が多かった加賀谷は、高校に入って積極的に柔軟体操に取り組んだ。1年通してやり抜いた結果、故障は減った。また、投球フォームも改良した。
「自分は体の構造が特殊というか、人よりも肩、肘が柔らかいんです。中学の時はその柔らかさに怠けてストレッチをあまりしなかったので、怪我をしてしまった。高校ではどうすれば怪我せず良いボールを投げられるのか、自分流で探した結果、テークバックを大きく取る投球フォームにしたんです」
その成果は高校2年の夏前、東大との練習試合に現れた。東大がラプソードで測定した加賀谷の球は、最速140キロ・2450回転・回転効率99%を記録したのだ。
東大野球部で上を目指したい

新チームで挑んだ今年の秋季地区予選を勝ち抜いた県千葉は、千葉県大会に出場。惜しくも2回戦で茂原北陵に敗れたが、加賀谷はその潜在能力の高さを発揮した。加賀谷は自分のレベルアップを実感している。
「今年の夏ごろからコントロールが安定してきました。また、変化球がある程度ストライクに入れられるようになりました。今までは先発として試合を作れるのか不安なところがありましたが、安心して任せてもらえるようになったかなと思います。ただ負けた茂原北陵戦は相手が私学ということで意識してしまいました。チーム全体で思い通りの打撃ができなかったり、自分もあまり感情をコントロールできませんでした。私学にも負けないマインドが大事だと思いました」
加賀谷の今の課題は最後の夏に向けて140キロ台後半の速球を投げること。そしてスライダー主体だった投球からチェンジアップを取り入れて、投球の幅を広げることである。
この10月、千葉県選抜の合同練習にも参加したことも刺激になっている。
「県を代表する私立の選手たちと一緒に練習できたのは楽しかったです。また(代表の)選考会では、私学の選手たちに負けない力があることもアピールできました」
2026年、加賀谷は県千葉を牽引するエースとして期待される。
「目標は、春ベスト16以上に入って、夏のシードを獲得すること。そして夏はもっと上に行きたいです」
そんな加賀谷が夢を語る。
「国立の中で野球も強くて、そして勉強もすごいとなれば、東大野球部。東大野球部に入ってさらに上を目指したいと思います」
実際、加賀谷には東大を狙える学力はあるという。
「母が医者なので、自分も医者になりたい、という夢もありますけど……。野球を引退するまではできる限りレベルが高いステージでやりたいです」
文武両道を地で行く加賀谷の活躍に注目したい。