◇国内女子最終戦◇JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ 最終日(30日)◇宮崎CC◇6543yd(パー72…

プレーオフを制し、解放感が全身を駆け抜けた

◇国内女子最終戦◇JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ 最終日(30日)◇宮崎CC◇6543yd(パー72)◇晴れ(観衆4453人)

硬くて遅い、とにかく切れる。何が起こるか分からない宮崎CCの高麗グリーン。難度1位の18番でのプレーオフ2ホール目、鈴木愛は下り80cmのパーパットを慎重に沈めた。「1年間がやっと終わった~」と思った後で「優勝できて良かった~」。大歓声の中、両手を突き上げ、解放感に浸った。

「うまい選手がいっぱい来たら、私の順位が下がるやん」。それが大会前の思いだった。出場40人限定のエリートフィールドに、大会史上最多6人の米ツアーメンバーが参戦した。31歳の元賞金女王は“日本ツアー代表”の意気込みを「そんなのないです!」と即座に否定。「日本よりアメリカのセッティングの方が間違いなく難しい。しかもいろんなコースを経験していて、ことし実績を上げた選手ばっかりでしょ?」とリスペクトを示した。

攻めと守りを割り切って

そんな謙虚な言葉と裏腹に、勝負師のマネジメントをフル回転させた4日間だった。キム・ハヌル(韓国)が通算9アンダーで制した2016年以来9年ぶりに優勝スコアがひと桁アンダーになった難セッティングのコースに、割り切って向き合った。

「チャンスホールは9番から13番まで」と“攻めるホール”を定め、そこで初日に4連続バーディ、2日目に4バーディ1ボギー。首位から出た最終日も9番(パー5)は3打目勝負で1m、10番は2打目を54度のウェッジで1m、11番(パー5)は227ydから3Wで2オンさせて2パット、実測134ydの12番(パー3)は8Iで乗せた5mを沈めた。絵に描いたような4連続バーディで「69」のスコアを作った。プレーオフでは一転、ガードを固める。「私に18番でバーディはない。岩井さんがバーディを取ったらしょうがない」とパー狙いに徹し、2ホールともティショットを右ラフに打ち込む厳しい流れをしのぐ。岩井千怜のボギーで決着をつけた。

随所で技術を見せつけた

大会開幕前の月曜日、練習ラウンドでたまたま男子のレジェンド・中嶋常幸と会った。いつも通り54度、58度のウェッジでティフトン混じりの芝や、強烈な逆目が多いグリーン回りをこなす難しさをこぼすと助言をくれた。「PWを開いて打ってみたら?」。やってみると、ズバリはまった。4日間、何度も“新アプローチ”を実践。72ホールで11度、ボギーを打ったが、連続ボギーはゼロ。傷を最小限に食い止めた。

間違いなく強い31歳

国内メジャーは2014年、16年を制した「日本女子プロ選手権」以来9年ぶりの3勝目。通算22勝目にして2冠を達成した。「このメンバーの中で一番になれるとは思ってませんでした」と言って見せた笑顔は本物だ。31歳のあふれる技術と柔軟な思考が若手全盛の国内女子ツアーで存在感を見せつけた。(宮崎市/加藤裕一)