クラブ創設20年目の節目に悲願達成――。サッカーJ3のヴァンラーレ八戸は29日、沖縄県沖縄市でFC琉球との今季最終戦に…
クラブ創設20年目の節目に悲願達成――。サッカーJ3のヴァンラーレ八戸は29日、沖縄県沖縄市でFC琉球との今季最終戦にのぞみ、1―1で引き分けた。この結果、勝ち点72で2位となり、クラブ史上初となるJ2昇格を決めた。
引き分け以上で自動昇格圏の2位以内が決まるヴァンラーレだったが、苦しい戦いだった。後半16分、FC琉球に先取点を奪われる。3位FC大阪の結果次第では自動昇格できない可能性もあった。
だが、後半23分、MF永田一真選手が右足でシュートを放った。「攻めなければ昇格はないと思っていた。自分はとにかくゴールに向かうシュートを打つことだけ考えた」と永田選手。ボールは相手選手に当たりながらゴールに吸い込まれ、同点となった。
その後は攻め込まれる時間帯もあったが、守備陣が踏ん張り、同点で試合終了を迎えた。昇格を決めた瞬間、ピッチに倒れ込みながら喜びを表す選手もいれば、仲間と抱き合う選手もいた。
ヴァンラーレは夏場に勝ち星を重ね、一時は首位を走っていた。だが、シーズン終盤の6試合は勝ち星がなく、なかなか昇格を決められなかった。石崎信弘監督は「本当にほっとした」と笑みをこぼした。選手に対しては「この1年、本当によく頑張ってくれた」とねぎらった。
GKの大西勝俉主将からは涙がこぼれた。「チームの全員が昇格に向かって日々頑張っていた。一枚岩で戦い、本当に欲しいものを手にできた」と喜んだ。遠く沖縄まで駆けつけ、敵地で声援を送り続けた約60人のサポーターらには「本当に感謝しかない」と述べた。
来季からは上のカテゴリーになり、厳しい戦いが待っている。石崎監督は「もっと成長しないといけない」としつつも、「今日はみんなで昇格を喜びたい」と笑顔で語った。(小田邦彦)
■「夢のよう」サポーター歓喜
待ちに待った歓喜の瞬間がやってきた。サッカーJ2への昇格が決まったヴァンラーレ八戸。「夢のよう」「次はJ1を」――。試合終了の笛が鳴ると、サポーターたちは涙を流しながら抱き合い、喜びを爆発させた。
ホームスタジアムがある青森県八戸市の八戸まちなか広場「マチニワ」では29日、クラブ主催のパブリックビューイングが開かれ、ユニホームを着たりタオルを手にしたりした約1千人のサポーターが声援を送った。
「本当にJ2へ行くんだ。夢を見ている感じです」。リーダーとして応援を引っ張った大久保秀映さん(45)は、大型モニターに映し出された選手の姿を見つめながらそう語った。
サポーター歴は10年以上。ホームのプライフーズスタジアムでサポーターの先頭に立ったこともある。J2の舞台で同じ東北のクラブとの対戦が楽しみという。「選手たちが頑張って、新しい扉を開いてくれた。これからは厳しい戦いになると思うが、さらに上のJ1の舞台を目指して選手を信じて応援するだけ」と力を込めた。
最前列で戦況を見守った工藤花子さん(50)は昇格決定の瞬間、涙が止まらなかった。ヴァンラーレが社会人リーグ時代から応援しているといい、「これまで苦しい時期もあったけど、選手たちはやってくれると信じていた。『ありがとう』の言葉しかない」と目を潤ませ、「これで八戸が盛り上がっていけば」と期待を込めた。
ヴァンラーレのJ2昇格は子どもたちにも大きな夢を与えた。小学2年の浦田岳さん(7)はクラブの下部組織でプレーしている。
ホーム戦ではゴール裏で旗を振るほど熱心に応援し、FWの澤上竜二選手の大ファンだ。「点を取ってくれるから好き」といい、「僕も将来は澤上選手みたいになりたい」と目を輝かせた。
沖縄に駆けつけたサポーターたちも、選手たちに熱い声援を送った。応援を率いた西塚文也さん(33)は開口一番、「ほっとした」。シーズン終盤にかけて勝利が遠く、この日も後半途中までリードを許す苦しい展開だった。「絶対に点を取ってくれると信じていました」。全力で戦い、J2昇格をつかみ取った選手たちをねぎらい、感謝を伝えた。(野田佑介)