2025年シーズンWRC第14戦ラリーサウジアラビア(グラベル)は、11月29日(土)に最終日の3SSを走行し、ヒョンデ…

2025年シーズンWRC第14戦ラリーサウジアラビア(グラベル)は、11月29日(土)に最終日の3SSを走行し、ヒョンデのティエリー・ヌービルが今シーズン初勝利を達成。2位には同じくヒョンデのアドリアン・フルモーが入り、ヒョンデは今季初の1-2フィニッシュを達成。3位にはトヨタのセバスチャン・オジエが入り、これでオジエは自身9度目のドライバーズタイトルを獲得、これまでセバスチャン・ローブが持っていた最多チャンピオン獲得数に並ぶこととなった。

この日は、SS15〜SS17を走る65.86km。SS15/17「Thabhan(16.29km)」、SS16「Asfan(33.28km)」を走行する3SSが、2025年シーズンWRCのラストを飾る。中間サービスは設けられない。28日(金)の競技3日目までを終えた段階で、総合首位はMスポーツ・フォードのマルティンス・セスクス、3.4秒差の2番手にヌービル、41.5秒差の3番手にトヨタの勝田貴元というオーダーとなっていた。



オープニングステージのSS15は、パワーステージとしても使用されるSS。各車ともソフトタイヤ6本でステージへと向かうなか、オジエとエルフィン・エバンスのふたりはソフトタイヤ5本という背水の陣で勝負をかける構えだ。このSS15を制したのはフルモー。3.4秒差のSS2番手タイムにカッレ・ロバンペラ、4.0秒差のSS3番手にヌービルというオーダーになった。前日首位のセスクスは9.4秒差のSS6番手タイムで、2秒という僅差ながら、総合首位の座をヌービルに奪われることとなった。チャンピオンを争うロバンペラは総合5番手、オジエは総合6番手、エバンスは総合8番手とポジションは変わらないが、スーパーサンデーとパワーステージでのポイント大量獲得を目指す。

続くSS16「Asfan」では、大きなドラマが待っていた。ラリー最長となる33.28kmのSSは砂・土・岩のあらゆる路面が登場するハイスピードコース。このSSを渾身の走りを披露したのはオジエ。SS2番手タイムのヌービルに2.6秒という差をつけて、ベストタイムをマークした。SS3番手にはトヨタのサミ・パヤリがつけている。このSSではロバンペラ、勝田、そしてセスクスに大きなトラブルが発生した。ロバンペラは左フロントタイヤをパンクし、ステージ内での交換を余儀なくされて大きくタイムロスを喫することとなった。勝田は左コーナーをワイドに行きすぎた際に横転。フロントガラスは割れ、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストンが足で支えながらなんとかフィニッシュまでたどり着いたが、右2輪をパンクするなど大ダメージを負ってしまった。さらに、2番手を走行していたセスクスは2度のパンクに見舞われて、いずれもコース内で交換。トップのオジエから7分43秒4という絶望的な遅れを喫し、上位争いから姿を消すこととなった。上位陣最終走者のフルモーは、接近したセスクスの巻き上げるダストに悩まされてSS9番手タイムとなったが、のちに救済タイムが与えられた。



この結果、総合首位はヌービルがキープ。54.7秒差の総合2番手には救済タイムが与えられたフルモー、1分10秒9の総合3番手にはオジエが一気に浮上した。以下4番手にパヤリ、5番手に勝田、6番手にエバンス、7番手にロバンペラというオーダーに。また、セスクスはSS16後にロードセクションでマシンを修復、TC16A(テクニカルゾーン&リグループ・イン)に17分遅着して170秒のペナルティを科されることに。これで総合11番手となってしまった。

SS15の再走となるSS17パワーステージは、16.2km。2度目の走行ということもありパンクの危険性は減っているように見えるが、深く轍が掘れたコーナーが点在し、油断はできない。なお、セスクスは最終SS前のロードセクションでマシンをストップ。悔しいリタイアを余儀なくされている。SSはナッサー・アル‐アティヤ(Mスポーツ・フォード)からスタート。続けてコースに入ったのは、今季限りでフルタイムドライバーの座を退くことを表明したヒョンデのオィット・タナック。タナックは暫定ベストとなる11分4秒6をマークし、フィニッシュ地点ではコ・ドライバーのマルティン・ヤルベオヤと固い握手を交わした。Mスポーツ・フォードのジョッシュ・マカリアンとグレゴワール・ミュンステールはこのタイムを上まわることができず。来季から全日本スーパーフォーミュラ選手権を主戦場とするロバンペラは、タナックの暫定ベストから0.2秒遅れのSS2番手タイムでフィニッシュ。エバンスはタナックのタイムを9.7秒上まわり、暫定ベストタイムを更新。最終セクションで轍に引っかかり一瞬ヒヤリとする場面はあったものの、6位以上のポジションを固め、オジエの結果を待つことに。

SS16でマシンに大きなダメージを負った勝田はフロントガラスを捨て、ゴーグルを装着してコースイン。着実なペースでフィニッシュし、チームへの感謝とともに「SS16でのアクシデントは、ペースノートの精度が甘かったかもしれません。ここから学んで、来シーズンはもっともっと強くなって帰ってきます」と力強くコメント。5位以上を確定させて2025年シーズンを終えた。パヤリはリスクを避けた走りで暫定SS6番手タイムでまとめ、4位以上を固めた。そしてオジエも堅実な走りでフィニッシュ。エバンスから7.2秒遅れとなる暫定SS2番手タイムで3位以上、そして9度目となるワールドチャンピオン獲得を決めた。コ・ドライバーのバンサン・ランデにとっては初のワールドタイトルとなった。オジエとランデはGRヤリス・ラリー1のルーフに駆け上がり、天高く拳を突き上げ、喜びを表した。

総合2番手のフルモーはポジションを守るべく手堅い走りで、SS6番手タイムをマーク。これで2位表彰台以上を手中に収めることに。上位陣の最終走者を務めるヌービルもきっちりと走り切って、苦しいシーズンの最終戦で今季初勝利を決めた。ヒョンデにとっては今季初となる1-2フィニッシュ、ヌービルにとっては通算22勝目だ。



最終SS終了時点での暫定総合順位は、ヌービル、フルモー、オジエ、パヤリ、勝田、エバンス、ロバンペラ、ミュンステール、マカリアンの順。パワーステージポイントは、エバンス、オジエ、タナック、ロバンペラ、勝田がそれぞれ5〜1点を獲得した。スーパーサンデーはオジエ、エバンス、ヌービル、フルモー、パヤリという順となった。この結果、ドライバーズポイントはウイナーのヌービルが28点(25点+3点+0点)、2位のフルモーが19点(17点+2点+0点)、3位のオジエが24点(15点+5点+4点)、6位のエバンスが17点(8点+4点+5点)を獲得した。これでオジエが293点とし、エバンスを逆転。エバンスは4点差の289点で2位となった。マニュファクチャラーズポイントはトヨタが735点、ヒョンデが511点、Mスポーツ・フォードが205点、TGR-WRT2が158点となっている。

これで2025年シーズンのWRCはすべての競技を終了、束の間のシーズンオフへと入ることになるが、約2カ月後の2026年1月22日〜25日には開幕戦のラリーモンテカルロがスタートする。すでにトヨタは2026年のドライバーズラインナップを明らかにしているが、ヒョンデとMスポーツ・フォードはまだ体制を明らかにしておらず、その動向にも注目が集まる。また、26年はラリージャパンが半年前倒しとなる5月28日〜31日に第7戦として開催される。新機軸の導入など、こちらにも注目だ。

WRCサウジアラビア SS17後暫定結果
1. T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1) 3:21:17.3
2. A.フルモー(ヒョンデi20Nラリー1) +54.7
3. S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:03.3
4. S.パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:51.7
5. 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) +1:59.9
6. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +3:43.9
7. K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +5:31.5
8. G.ミュンステール(フォード・プーマ・ラリー1) +7:07.2
9. J.マカリアン(フォード・プーマ・ラリー1) +8:30.5
10. O.ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー2) +10:00.6