Jリーグ入りを目指すクラブの「最初の関門」となるのが、全国地域チャンピオンズリーグである。今後の日本サッカーの底上げの…

 Jリーグ入りを目指すクラブの「最初の関門」となるのが、全国地域チャンピオンズリーグである。今後の日本サッカーの底上げのためにも、同大会は「変革の時期」に来ていると言うのは、サッカージャーナリスト後藤健生だ。どのような「変革」が必要なのか?

■「あらゆる意味でレベルの差があった」

「レベルアップ」に関して、決勝ラウンドで全敗に終わった東京ユナイテッドFCの福田雅監督が語っていた。

 東京ユナイテッドは慶應義塾大学ソッカー部のOBチーム、慶應BRBに東京大学ア式蹴球部OBチームが加わって結成されたチームで、Jリーグ加入も目標としているが、現状は「アマチュアクラブ」の位置づけだ。

 他のJリーグ加盟を目指すチームのように元Jリーガーを加えることもなく、毎日トレーニングを行える環境にもない。

 福田監督は「地域CLに出場した他チームとはあらゆる意味でレベルの差があった。それを埋めて、この舞台で勝つためにはフォーマットを変える必要がある」と言う。

「すべて1点差の負けだったが、明らかな差があった」と福田監督。

 たとえば、優勝したジェイリースのキャプテンは現在35歳の八反田康平。筑波大学時代にユニバーシアード代表となり、その後、清水エスパルス名古屋グランパスで活躍した選手だ。また、右ウィングバックの松本怜は現在37歳だが、青森山田高校から早稲田大学に進み、Jリーグでは横浜F・マリノスに入団。大分トリニータでJ3降格とJ1復帰までを経験した選手だ。

 メンバー表の「前所属チーム」の欄を見ても、ジェイリースFCやヴェロスクロノス都農の場合は、Jリーグクラブの名前がズラッと並んでいる。

 これに対して、東京ユナイテッドの選手たちの「前所属チーム」はほとんどが大学チームなのだ。

■実力的に「ナンバーワン・チーム」は

 ジェイリースは、今回の地域CLではワイルドカードとして決勝ラウンドに進んだチームだが、決勝ラウンドの戦いを見る限り、実力的にナンバーワン・チームだったのは間違いがない。

 VONDS市原FCと東京Uの関東勢2チームはハードワークやロングスローを含むセットプレーで対抗。一方、元Jリーガーも多く含む九州の2チームは内容のある戦いを見せた。

 とくにジェイリースはしっかりとボールをつないでビルドップし、相手陣内深くでいわゆるポケットを取る動きをしたり、バイタルエリアでワンツーパスをつないだりと多彩な攻めを披露した。

 会場となった市原のゼットエーオリプリスタジアムの芝生が重くて、パス回しに苦労していたようだが、それでも内容的にジェイリースは良い内容のゲームで勝ち切った。

■レベルの向上に合わせて「変えるべし」

 ほんの数年ほど前まで、J3リーグの競技レベルはけっして高いものではなかった。降格もなかったので、監督が理想のサッカーを追求するようなチームもあれば、泥臭いサッカーに徹しているチームもあった。一方、当時はJFLにもJリーグ入りを目指さない実業団チームも多かったから、J3リーグとJFLでは競技レベルの差はほとんどなかった。さらに、関東大学リーグにも、たとえば三笘薫上田綺世のようなJリーグの下部組織から入ったプロ予備軍が多く、J3リーグを上回る戦力を誇っていた。

 ところが、最近10年ほどでJリーグ全体の競技レベルが上がった。

 まず、J1リーグで川崎フロンターレや横浜F・マリノスの攻撃サッカーがインパクトを与え、その後は堅守速攻型が覇権争いをするようになった。そのJ1のレベルアップがJ2、さらにJ3リーグに波及。それに伴って、JFLのレベルも上がってきた。

 従来、JFLではHonda FC(本田技研)やソニー仙台のような会社名を掲げた実業団系のチームとクラブチームが拮抗していたが、現在ではHondaを除いて、会社系のチームは下位に低迷している(Hondaは今季も優勝)。Jリーグ入りを目指すクラブは元Jリーガーを中心にチームを構成するようになったのだ。

 そして、その波はもう地域リーグにも波及してきている。そして、地域CLという大会も、本気でJリーグに上がるために人件費を使って元Jリーガーを集めて、練習環境などを整えたチームの争いになっているのだ。

 だからこそ、この大会のレギュレーションやフォーマットも競技レベルの向上に合わせて変えていくべきときなのである。

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