江戸時代から続く伝統行事「錫山(すずやま)相撲」が3日、鹿児島市下福元町の錫山地区であった。秋晴れの下、山あいの会場に…

 江戸時代から続く伝統行事「錫山(すずやま)相撲」が3日、鹿児島市下福元町の錫山地区であった。秋晴れの下、山あいの会場に拍手や歓声が響いた。

 錫山相撲は、江戸時代初期に開発されたスズ鉱山の鉱夫らの安全祈願や力試しのために神社に奉納したのが始まりとされる。鉱山が廃れたあとも地域住民らが相撲大会を守り続け、1962(昭和37)年には横綱柏戸が土俵入りを披露した。今年で368回目。地元児童らの熱戦や健やかな成長を願う「赤ちゃん土俵入り」、樟南と鹿児島実の高校相撲部対抗戦、親子相撲、相撲甚句の披露などもあった。

 「夢は大相撲の横綱」と話すのは、小学生の部で優勝した日置市吹上町の花田小3年、内(うち)慶斗(けいと)君(8)。身長153センチ、体重73キロの体格で上級生を圧倒した。昨年の全九州わんぱく相撲大会の2年生の部でも優勝。元横綱の稀勢の里(現・二所ノ関親方)のように前に押し進む力士が目標で、得意の突っ張りをさらに磨きたいという。

 錫山小教諭の徳重宏祐さん(34)は赴任6年目。都合が悪くなり親子相撲に参加できなかった保護者に代わって出場した。赴任後生まれた娘2人はどちらも「赤ちゃん土俵入り」を経験した。「伝統ある相撲を取りながら、児童らとさらに心が通いあう気がします」

 地区の世帯数は100を割り、人口は200人余り。相撲大会は熱気を帯びる一方で、存続への不安もつきまとう。実行委員長の右田幸治さん(73)は「若者も減り、出場者の確保だけでなく、俵編みや土俵づくりなどの技術の継承も、ままならない」と、厳しい現実を語る。(エリアリポーター・町田正聡)