ハイレベルな技術戦を見せた拓真と天心(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext 負け知らずの“神…

ハイレベルな技術戦を見せた拓真と天心(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 負け知らずの“神童”が散った。

 11月24日、江東区のTOYOTA ARENA TOKYOで行われたボクシングのWBC世界バンタム級王座決定戦(12回戦)で、同級1位の那須川天心(帝拳)は、同級2位の井上拓真(大橋)に判定決着(0-3)で敗戦。キックボクシング時代から53勝無敗だった男は人生で初めて敗れた。

【写真】天心、散る 井上拓真の執念が勝った激闘をチェック

 多くのボクシング・マニアが集った会場は、気づけば、割れんばかりの「拓真コール」がこだましていた。完全アウェーの空気に呑まれたのか。天心は徐々に後手に回っていった。

 出足は悪くなかった。初回は絶妙な距離感を保ちながら右のカウンターを炸裂。終了のゴングが鳴った直後には腕をグルっと回しながら小躍りも披露し、充実ぶりを感じさせた。

 しかし、ラウンドを重ねるにつれ、神童の動きを見切り始めた元世界王者が牙をむく。カウンターを恐れずに距離をグッと詰めた拓真は手数を増やしていくと、ガードの上からでも強打を繰り出して主導権を握る。

 何とか反攻したい天心も8回にはカウンターとアッパーを繰り出すも、拓真の牙城を崩すには至らない。相手に傾いた展開を変える一押しが足らなかった。

 8回終了時の公開採点は3-0で拓真にジャッジが勝利をつけると、仕掛けるしかなくなった天心は手数を増やして、攻勢を強めた。だが、「向こうは慌てている」と冷静に相手の出方を伺う元世界王者を前に渾身のパンチを当てきれず……。試合終了のゴングが鳴った直後にガッツポーズを見せた拓真とガクッと肩を落とした天心。両雄のコントラストが試合内容を色濃く物語った。

 格闘技人生で初めて喫した黒星。世界王者戴冠よりも「天心を倒す」という野望に重きを置いた拓真の執念に敵わなかった。

 試合後、大歓声を受ける勝者を尻目に、唇をグッと噛み締めながらリングを去った天心は何を思うか。この試合の発表会見時に「もちろん負けは一切考えてないですし、負けない。でも、負けたからといって『すべてを奪えると思うなよ』とは常に思う。負けることもあるんだろうなという覚悟も持っている」と語っていた27歳の胸中やいかに――。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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