陸上の世界選手権が9月、東京で34年ぶりに開催された。計10個のメダルを獲得した陸上強国・ジャマイカ。代表チームは大会…

 陸上の世界選手権が9月、東京で34年ぶりに開催された。計10個のメダルを獲得した陸上強国・ジャマイカ。代表チームは大会直前、鳥取市内でキャンプを行った。

 「選手たちを大会に向けて勇気づけた。それから、鳥取のみなさんが歓迎していることも伝え、『交流イベントに参加して』と促した」

 鳥取県のスポーツ国際交流員、クリスティン・デイさん(39)はそう振り返る。母国の代表チームと、県や県民とのコミュニケーションで橋渡し役となった。

 自身も元代表選手だ。オリンピック(五輪)は2012年ロンドン、16年リオデジャネイロの両大会で女子1600メートルリレーの銀メダルを獲得。15年の世界選手権北京大会では同種目で金メダルに輝いた。

 現役を引退後、アスリートの活動を支援する仕事に携わった。ジャマイカの選手たちがもっと輝ける舞台を――。夢はどんどん膨らんだ。「アスリートの支援を通じ、世界各地に陸上競技を広めたい。それがジャマイカ陸上の強さを世界に示すことにもつながる」

 日本の「JETプログラム」に応募し、今年8月に鳥取県のスポーツ国際交流員に着任した。国外から招いた青年らに、自治体などで国際交流や外国語教育などに携わってもらうプログラムだ。

 鳥取は思い出の地の一つ。金メダルを獲得した世界選手権北京大会の事前キャンプで2日間滞在した。「練習環境が素晴らしかった」。そんな印象が強く残っていた。

 いまの任期は1年。今年の世界選手権で大任を果たし、今後は県内の陸上教室などで指導する。「子どもたちや高校生などレベルに合わせたトレーニングと実践的なアドバイスで、鳥取の陸上競技力を高めていきたい」

 次回の世界選手権は27年、北京で開催される。「もしジャマイカ代表が鳥取で事前キャンプを行い、私が鳥取にいれば、もちろんジャマイカと鳥取の力になりたい」(富田祥広)

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 1986年生まれ。鳥取での暮らしは「静かな環境がとてもいい」。職場には弁当を毎日持参する。「チキンとライスが大好き。定番はジャマイカ流の豆ご飯。それに野菜」。先日、鳥取市内でタクシーに乗ったら「モデルの方ですか?」と運転手に尋ねられた。「ファッションにも興味がある。チャンスがあるなら、将来はモデルもやってみたい」(富田祥広)