国立競技場(東京都新宿区)で22日にあったサッカー天皇杯決勝で、FC町田ゼルビアが初優勝を果たした。J1昇格2年目での…
国立競技場(東京都新宿区)で22日にあったサッカー天皇杯決勝で、FC町田ゼルビアが初優勝を果たした。J1昇格2年目での初タイトルに、スタジアムに駆けつけたサポーターは「こんな日がくるとは思っていなかった」と喜びを爆発させた。
黒田剛監督は試合後、「サポーター、町田を支えるいろんな方々が来られて、気持ちを選手スタッフに注入していただけたこと、心から感謝を申し上げたい」と話した。
ゼルビアは1989年のクラブ創設以来、地域振興活動をアイデンティティーとしてきた。地元・町田市には、選手の「推し活」を励みにする高齢者たちがいる。
10月29日、市内のデイサービス「リハフィット」では、利用者たちが青いユニホームに身を包み、選手の到着を今か今かと待っていた。手にはキラキラに装飾されたうちわ。選手が登場すると歓声があがった。
「この年になってこんなにワクワクできるとは」
そう語る松本和美さん(70)は一昨年、大病の手術をきっかけにデイサービスに通い始めた。サッカーを見たこともなかったが、施設の仲間とともにサポーター活動に取り組むうち、気づけば夢中になっていたという。
今春には応援うちわを手作りしてスタジアム観戦し、「推し」の中島裕希選手の6月の誕生日には手作りのプレゼントとともにお祝い動画も送った。「応援することが楽しい。生きがいを見つけました」とほほえむ。
うつ症状に悩んでいた高橋トミ子さん(78)は、スタジアム観戦で大声をあげて応援したところ、「今まで悩んできたことはなんだったんだろう」と爽快な気持ちになったという。新聞で過去の試合結果をさかのぼってチェックするなど、熱心に応援する日々を送る。
この「推し活」は、サントリーウェルネスとJリーグが共同で推進している「Be supporters!」という取り組みだ。高齢者や認知症の方など普段は周囲に「支えられる」場面の多い人が、地元サッカークラブのサポーターになることで「支える」存在になることを目的にしている。
決勝戦の22日、施設長の深山直樹さん(52)はスタジアムのゴール裏で大声を張り上げた。優勝を見届けると、すっかり枯れた声で「現地観戦を目標に日々リハビリに励む利用者さんにとっても、ものすごい力になる」と語った。(竹中美貴)