秋季兵庫県大会で4強入りを果たした伝統校・彩星工科。旧校名の村野工時代には春夏合わせて甲子園に3度出場した実績を持つ。 …
秋季兵庫県大会で4強入りを果たした伝統校・彩星工科。旧校名の村野工時代には春夏合わせて甲子園に3度出場した実績を持つ。
1992年春を最後に甲子園から遠ざかっているが、近年は復活への道のりを徐々に歩み始めている。2020年に創立100周年を迎え、2022年7月にかつて横浜を率いた平田徹監督が就任。翌年から現校名になり、スポーツコースも設置された。
平田監督の指導力もあり、23年秋に8強入り、今秋は5年ぶりの4強と着実に力をつけている。前回の取材から約2年半、甲子園出場も現実味を帯びてきた彩星工科の現在に迫った。
平田監督を慕って入学した選手が中心となって秋ベスト4に
「技術的にも精神的にもどんどんレベルアップしていると感じますね」と前回の取材から部の変化について語ってくれた平田監督。特に現2年生は「強いリーダーシップを持っている」と平田監督が評するアルテス丈琉マリオンを中心に実力のある選手が揃った。
ペルー人の父を持つアルテスとエースの中山滉大(2年)は京都東山ボーイズ出身。他にも県外の選手はいて、全体の3分の1ほどが寮に入っているが、京都府や徳島県など、なるべく車で2時間以内に行けるようにしているという。アルテスは入学を決めた理由に平田監督の存在を挙げていた。
「監督さんが高いレベルの野球を教えられていると聞いたので、それにすごい興味を持ちました。自分はプロを目指しているので、高いレベルで教えて下さったら、(プロに)近いんじゃないかなと思って、ここにしました」
ちなみに平田監督は選手から「徹先生」と呼ばれている。同校に同姓の教員がいるからとのことだ。
前回の取材でも質の高い練習が目立っていたが、今回の取材でも目を引く練習があった。それがキャッチボールである。
普通は2人1組で行うところを彩星工科は4人1組で行っている。その理由を平田監督はこう語ってくれた。
「いかに実戦に結びつくようなキャッチボールができるかということは、チーム作りの土台になることだと思います。守備の最大の目的は失点を防ぐことで、守備に常につきまとうテーマはランナーとの競争ということです。そのことをまずしっかりと選手に理解させた中で、捕ってから正確にすぐ投げるっていうことが実戦的なキャッチボールだと思いますけど、1対1でそれをやると、お互いに忙しすぎて追いつかないんですよね。なので、4人1組にして、捕ったらすぐ投げるということを徹底すると、タイミング的にはちょうどいいんじゃないかなと。なので、4人1組で徹底的にスピーディーかつ正確なキャッチボールを要求してるということですね」
キャッチボールは肩慣らしではないということは誰もがわかっていることだが、それを実行できる仕組みを行えているチームは少ないように感じる。このキャッチボールは平田監督が彩星工科に赴任してから実行しているもの。練習の意図と目的を明確にさせながら、技術を向上させるための知識を日々アップデートしている。
今年は内角を突くストレートと低めへのチェンジアップを武器とする左腕エースの中山を中心に5人の投手を擁する。「僕の後ろに4人も良いピッチャーがいるので、安心して投げることができました」(中山)とこの秋は多彩な投手陣を擁して県4強まで勝ち上がった。
神戸国際大付、東洋大姫路に敗れて出た課題

しかし、準決勝では明治神宮大会準優勝の神戸国際大付に1対2で敗れると、3位決定戦の東洋大姫路戦では6回終了時で1対2と競り合うも終盤に投手陣が崩れて、1対13で敗退。あと1勝で近畿大会出場を逃す結果となった。
「よく頑張ったと総括することもできるし、ただ、準決勝、3位決定戦と一番肝心なところで2つ落としたというところもまだまだだなと。発展途上のチームなので、あと一歩のところでしたが、来年に向かって希望に燃えていくというのと同時にあと一歩届かなかったという悔しさをバネにして、どんな結果であってもそれを力に変えていくしかないと思うんですけどね」(平田監督)
不足していたのが得点力。粘り強い守備で勝ち上がることができた一方、敗れた2試合はいずれも1得点と打撃面で苦戦。「バッター陣が打つことが少なくて、どんどん足を使う試合が少なかった」(アルテス)と課題が残った。
取材日での練習では平田監督自身が打撃投手を務め、ケースバッティングを実施。状況に応じた打撃や走塁を体に叩き込んでいた。
学校は来年度に男子校から共学になり、どんどん進化を遂げている。その中で野球部は中心的な役割を担っており、生徒会長も誕生した。
「部員には『常に全校生徒の模範たろう』、『みんなから応援される野球部を作ろう』ということを言っていて、そういう中でたまたま3年生の元気なやつが生徒会長立候補して、圧倒的な得票で生徒会長になりました。それはそれで野球部にとってはすごく誇らしいことだなと思いますね」(平田監督)
部員も2学年で69名に増え、前回の取材時より強豪感が増してきた。「甲子園に行くという熱い気持ちで、この冬練頑張っていきます」と意気込みを語ったアルテス。甲子園に戻って来る日もそう遠くはないかもしれない。