那須川天心を前にしても、動じずに振る舞い続けた井上拓真(C)産経新聞社 勢いに乗る“新鋭”を前にしても、まんじりとせず―…

那須川天心を前にしても、動じずに振る舞い続けた井上拓真(C)産経新聞社
勢いに乗る“新鋭”を前にしても、まんじりとせず――。元世界王者の掲げ続けてきた「目標」はブレなかった。
11月21日、ボクシングのWBC世界バンタム級1位・那須川天心(帝拳)と同級2位・井上拓真(大橋)が、東京都内で記者会見を実施。3日後に江東区のTOYOTA ARENA TOKYOで行われる同級王座決定戦に向け、両雄が意気込みを語った。
【写真】決戦は11・24…那須川天心が投稿した井上拓真とのフォトセッション
話題性は十分だ。格闘技戦績47戦全勝(キックボクシングは42戦)という華々しい実績を持つ那須川は2023年にボクシングに転向。いわば異なる場所からやってきた新鋭は、転向後8戦目にして初の世界戦となる。お茶の間にも届くネームバリューを持つ27歳に対する関心は高まっている。
世間の関心は那須川に向いている。ゆえに拓真は燃える。
23年10月に現WBA休養王者・堤聖也(角海老宝石)に屈し、王座陥落を喫した29歳には、「引退」の二文字もよぎった。がしかし、悩み抜いた末に現役続行を決断。久しぶり迎える“決戦”に向けてこれ以上にない準備を重ねた。
かつてないほど己を追い込んだ。それは周囲も認めるところだ。大橋秀行会長は言う。
「拓真は、この試合に備えてスパーリングとトレーニングとこれでもかというぐらいに激しい練習を積んできました。それはまさに強くなるか、怪我をするかという闘いのトレーニングでした」
試合に向けて「コンディションもすごくいい。練習も何一つ抜くことなくここまでやり切れた。状態も過去イチ。良い状態」と前を向く本人も充実感を滲ませる。トレーナーも務める父・真吾さんも「今までで一番、同じ温度差でトレーニングが出来た。幅も技術も増えた」と認めるように、技術戦が見込まれる大一番に向けて抜かりはない。
見据えるものは、世界王者への返り咲きではない。あくまで「那須川天心に初めての黒星を付ける」という一点にある。「(那須川の言った)『井上家をぶっ壊す』というのは、そこまで意識していない」と語る拓真は、静かに自身の想いを語った。
「今回の試合はベルトどうのこうのではなく、しっかりと天心選手に勝つ。それで結果が後からついてくればいい」
「知名度もある天心選手に初黒星をつける、自分のファンの期待にも応えるという意味でも倒しに行きたい」
そう簡単にボクシングの牙城は崩させない――。実績と経験値で上回る拓真が、注目の日本人対決をいかに戦うか。運命のゴングは間近に迫っている。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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