過去の日本代表とは別物の雰囲気が、今の日本代表には備わっている(C)Getty Images 9~11月に行われたW杯強…

過去の日本代表とは別物の雰囲気が、今の日本代表には備わっている(C)Getty Images

 9~11月に行われたW杯強化シリーズの6試合。メキシコ戦、アメリカ戦、パラグアイ戦、ブラジル戦、ガーナ戦、ボリビア戦は、3勝2分け1敗に終わった。メンバーを大幅に入れ替えたアメリカ戦のみ敗れたが、相手はすべてW杯出場(もしくはプレーオフ進出)のチーム。ブラジルへの初勝利も含め、上々の結果だった。

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 チームの雰囲気はすこぶる良い。ボリビア戦は森保監督がA代表を指揮し始めて100回目のメモリアルマッチだった。71分に町野修斗が2点目を挙げたとき、選手たちはベンチ前へ駆け寄り、森保監督を歓喜の輪に入れ、共に肩を組んで祝福。ちょっと珍しい光景だった。

 試合後のピッチでも選手から背番号100のユニフォームと花束が渡され、さらにお約束のウォーターシャワーをぶっかけて祝福。森保監督はそのときの様子を記者会見で話している。

「記念ユニフォームや花までもらえるとは思っていなかったので、本当にサプライズでした。キャプテンからチームを代表してのお祝いの言葉と、試合中に2点目が入ったときに円陣に加えてもらえたことで終わりかなと思っていたところ、最後にさらにサプライズをもらえて嬉しかったです。

 ウォーターシャワーについては、私が最後に締めの言葉を言うとき、みんなペットボトルを手に持っていて、誰も話を聞いていないなと思いながら、自分の言葉もどこかに飛んでしまいましたけど、締めた後に選手から水をかけられ、いじってもらえて、非常に嬉しい思いで100試合目を終えることができました」

 選抜チームが、まるでファミリーのように感じられる森保ジャパン。史上最強の日本代表がこんなにも良い雰囲気で、絆が強くて。これはW杯、本当にいけそうだね!……と、素直に思えないあなたは30代以上のサッカーファン。大会前の流れが良すぎると、本大会でコケる呪いに取り憑かれておられるようだ。2006年、2014年……その落胆たるや。直前の流れなんて、悪ければ悪いほど本大会で勝てるんだよ! とさえ思っているかもしれない。気持ちはわかる。今までそうだったから。

 ただ、筆者はその歴史が変わると期待している。もちろん、油断だけはシンプルに気をつけなければいけない。今回のボリビア戦も3-0で勝利したとはいえ、W杯に出場するならプレーオフ枠でポット4が濃厚な相手に、これほど苦しめられたのだから。

 だけど、今のA代表は過去のそれとは決定的に違う点がある。

 2006年のジーコジャパンも、2014年のザックジャパンも、グループステージを突破した2010年の岡田ジャパンにも当てはまるが、どのチームにも必ず「前後論争」が存在した。攻撃陣は前から守備をしたがり、守備陣は下がって守りを固めたがる。その意見がまとまらず、バチバチと火花を散らすアレだ。2010年はその論争に決着をつけた状態でW杯に挑んだので、戦術はハッキリとして一体感があったが、大会中にその意思が揺れてざわざわし始めると、チームが壊れる原因になりがちだった。

森保監督の100試合目というメモリアルマッチで、チームは勝利をプレゼントした(C)Getty Images

 一方で、最近はこの「前後論争」をあまり聞かなくなった。理由はおそらく、今の選手たちは「知っているから」だ。ほぼ全ポジションで控え選手に至るまで、欧州で試合に出続けている彼らは、アグレッシブに行けばボールを奪えることを知っているし、ラインを上げてもスペースをカバーする自信がある。逆にブラジル戦では慎重に入ったように、この相手、この状況では無理せず、慎重に守らなければならないことも知っているので、攻撃陣も嫌々下がるわけではない。

 今まで攻撃陣と守備陣に分かれて「前後論争」があったのは、ひとえに知らなかったからだ。2010年にグループステージを突破した直後の記者会見で、当時の岡田監督が言ったことは今も覚えている。

「やはり世界の中でトップレベルと本気の試合がなかなかできない。W杯以外では親善試合しかできない。そういう中で本気の相手とやったらどうなるだろうという手探りの状況が、実はこれくらいで、これくらいできるんだと。これ以上無理するとやっぱりやられるんだということを、選手が肌で感じてつかみ出したことが非常に大きい。さじ加減といいますか、その辺りの判断を選手ができるようになったことが一番大きいと思います」

 岡田ジャパンがW杯の最中につかみ始めた、世界の肌感覚、さじ加減。それを知らなかった頃は、相手の基準がないので「前から行きたい」「引いて守りたい」と自分たちのwant中心の議論になって、意見が割れやすかった。しかし、今はA代表の大半が肌感覚やさじ加減を知っているので、shouldの議論になる。shouldは相手や状況が正解を決めるので、大きく割れることが少ない。今は攻撃陣も守備陣も、欧州のレベルを日常的に経験しているので、相手をイメージした肌感覚が合いやすい。

 2014年のW杯の頃は海外組が増えていたが、それでもポジション毎のばらつきは残っていた。その歪を内包しながら手探りで戦い、強化試合までは好調でも、本大会になって相手が1個上のパワーを出して来ると、チームが揺れた。それが表れやすいのが「前後論争」であり、相手を知らないから戸惑うし、意見や感覚が揃わない。

 今、たとえば堂安律は「僕たちは欧州でプレーしていて、欧州を知っている」と言う。今のA代表は世界の肌感覚を知る選手が、ほぼ全ポジションにそろっている。世界のshouldで戦える彼らに、かつてwantの手探りでW杯へ行っていた頃の経験則は当てはまらない。彼を知り己を知れば、百戦あやうからず。孫子の兵法にある通りだ。世界を知り、shouldで戦える彼らの好調を不安に感じる必要などない。このW杯でオールドファンの呪いが解けることを期待している。

[文:清水英斗]

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