9月にランチア・イプシロン・ラリー2HFインテグラーレを正式発表したランチアは11月18日、フランスのベルサイユ・サトリ…

9月にランチア・イプシロン・ラリー2HFインテグラーレを正式発表したランチアは11月18日、フランスのベルサイユ・サトリーにあるステランティス・モータースポーツの本社で同車両を世界初公開し、あらためて2026年WRC2への参戦を表明した。開幕戦モンテカルロを皮切りに、少なくとも8戦に出場、ラリーでの優勝とタイトル獲得を目標として明確に掲げる。

なおランチアは、10月にはすでにWRC2への参戦を明らかにしていたが、ドライバーについては現在も交渉中。12月中旬には発表できる見込みだとしている。そのほか、ERCやイタリア、フランス、スペイン、ベルギーなどの国内選手権レベルの競技にも活動を広げる。ERCでは、今年のトロフェオ・ランチアでタイトルを獲得したジャンアンドレア・ピサニ/ニコラ・ビアジが、ランチア・コルセHFチームから、ワークスのイプシロン・ラリー4HFで参戦する。

イプシロン・ラリー2HFインテグラーレの開発では、7つの部分にフォーカスしたという。
●大幅な軽量化と低重心化で車両の重量バランスを調整
●最先端の空力開発で高速域でのダウンフォースと安定感を向上
●プジョー9X8のアーキテクチャに由来するターボ管理システムと、新開発アンチラグシステムを搭載
●ギヤ比とデファレンシャルを改良し、駆動系をあらゆる路面状況に対応するよう最適化
●シャシーとサスペンションの最適化で、舗装路と未舗装路の両方で最高の性能を発揮
●人間工学に基づき、ドライバーの快適性と集中力を最大限に高めるよう再設計
●ボディシェルとロールケージは、優れた剛性とFIA安全基準への完全準拠を確保する完全新設計

カスタマー向けの供給は、FIAが定めるラリー2のコストキャップに準拠したうえで、2026年の第1四半期にも開始される見通しだ。
イプシロン・ラリー2HFインテグラーレの主なスペックは下記のとおり。
主要諸元
全長 4070㎜
全幅 1820㎜
ホイールベース 2550㎜
車両重量 1230㎏(規定最低重量)
燃料タンク容量 80L
エンジン ランチア・コルセHF直列4気筒DOHC+ターボ
ボア×ストローク 77.0mm×85.8mm
排気量 1598㏄
最高出力 287hp/5000rpm
最大トルク 425Nm/4000rpm
ECU マレリ
駆動方式 4WD
ギヤボックス サデフ製5速シーケンシャル
デファレンシャル(前後) 機械式
ブレーキ(前後) ベンチレーテッドディスク
ブレーキディスクサイズ(前後) 355mm(ターマック)/300mm(グラベル)
ブレーキキャリパー アルコン製4ピストン
サスペンション形式(前後) マクファーソンストラット
ダンパー レイガー製3way
ホイール(ターマック) 8×18インチ
ホイール(グラベル) 7×15インチ
タイヤ ミシュラン製

25年はラリー4でイタリア選手権2WDマニュファクチャラーズタイトルを獲得したほか、イプシロン・ラリー4HFのワンメイクシリーズ、トロフェオ・ランチアはイタリア選手権全体の25%を占めるほどのエントリーを集めて成功を収めた。



また、ラリー2HFインテグラーレとともに、ランチアHFファミリーで、FIA公認車両ヒエラルキーのほかのカテゴリーもカバー。ラリー6対応のイプシロンHFレーシングは、本格的なラリーデビューを可能とする安価なカテゴリーだ。3気筒1.2Lターボエンジンは145馬力を発生し、6MT、機械式LSDを装着して、3万8900ユーロ。1960年代のフルビア・クーペHFにインスパイアを受けたFFのイプシロン・ラリー4HFは、3気筒1.2Lターボエンジンは212馬力を発生。サデフ製5速シーケンシャル、機械式LSD、強化ブレーキ、マクファーソン式サスペンション+オーリンズ製3ウェイ調整式ダンパーを装備し、7万4500ユーロとしている。この3モデルは、ステランティス・モータースポーツ・レーシングショップで受注する。
https://lancia-corsehf.com/en/

ランチアのCEO、ロベルタ・ゼルビは「ランチアのWRC復帰は、謙虚さと決意、そしてイタリアの誇りに基づいて築かれました」とコメント。
「我々は自らの伝説的な遺産を十分に認識しています。それは我々を萎縮させるどころか、最高のパフォーマンスを発揮するための原動力となっています。ランチアは確固とした取り組みで、競技の場に帰ってきました」



ランチア・コルセHFのディレクター、エウジェニオ・フランツェッティは、WRC2冠を誇るミキ・ビアジオンがプロジェクトの技術顧問を務めた2025年のトロフェオ・ランチアの成果を振り返り、ランチアのラリー復帰が持つ価値を強調する。
「ランチアがラリーに復帰する姿は、ひとつの輪がつながるような感覚だ」とフランツェッティ。
「私はこれらの車両が形作られる過程を目の当たりにし、テストに貢献し、今ではプログラムの若手ドライバーたちとともに働いている。誰かがラリーを夢見る時、その夢のなかにまたランチアが浮かぶようになると思うと、胸が高鳴る思いだ」