◇国内女子◇伊藤園レディス 最終日(16日)◇グレートアイランドC(千葉)◇6769yd(パー72)◇曇り(観衆432…

父・信幸さんに抱きすくめられる脇元華

◇国内女子◇伊藤園レディス 最終日(16日)◇グレートアイランドC(千葉)◇6769yd(パー72)◇曇り(観衆4325人)

クラブハウス前で多くのプロ仲間に初優勝を祝福された後、脇元華は父・信幸さんに抱きつかれた。ハグなんて生やさしいものじゃない。泣きながら、自分の体を締め上げるような激しさで「よくやった」と何度も語り掛けてくる。30秒ほど続いた抱擁を解かれたとき、脇元は涙でしゃがみこんで動けなくなった。

エネルギッシュな父だ。真冬にゴルフ場の池に入り、ロストボールを回収したりするなど過酷な仕事で貯めた資金を元手に会社を起こし、現在は宮崎市内を中心に多くの飲食店を経営するまでになった。

脇元と次女、長男を必死に育て上げた。幼少時にモデルのオーディションを受けるなどルックスに秀でていた脇元を「そっちの世界では埋もれてしまう。もっと一つの才能を磨き上げられる分野で」とゴルフの道に導いた。

苦しい時、ずっと支えてくれた父

「今日は雨だから」と練習場に行きたがらず、行っても猫と遊んでばかりの脇元をゴルフに目覚めさせたい。中学2年の時にタイへ合宿に連れて行った。その時、脇元が近くで開催していた米女子ツアー「ホンダLPGAタイランド」を生観戦。宮里藍、世界ランキング1位になったツェン・ヤニ(台湾)、15歳でプロ転向した天才ミッシェル・ウィらを見て「キラキラしていて、私もゴルフで頑張りたい」とようやく本気になれた。

脇元は3度目のプロテストで合格。プロ転向後にパターでイップスになった。12月に手術を受ける腰が悪くなることは過去に何度もあって、そのたびパフォーマンスが落ちた。心が何度も折れかけた。そんな時に決まって「華はできるから。おまえは特別だから」と励まし続けてくれたのが父だ。

プロ8年目のツアー初優勝を決め、昨年はメルセデスランキング上位者(30位)の資格で初出場した地元・宮崎開催の最終戦「JLPGAツアー選手権リコーカップ」に、今年は『当該シーズンのツアー優勝者』として出場できる。ただ、その前に「大王製紙エリエールレディス」(20日開幕/愛媛・エリエールGC松山)も大事な試合だ。12年前の2013年大会にアマチュアでツアーデビューした。キャディを務めていた信幸さんは冬の到来を感じさせる寒さの中、なんと半そで短パン姿。「華がちょっとでも目立つように」と無名の16歳だった自分を、体を張ってサポートしてくれた。

「お父さんに優勝を見せたかった」

「両親が離婚して、父と祖母に育ててもらった」という脇元は「お父さんにレギュラーツアー優勝を見せたかった」と感慨深げだ。28歳の初優勝は最高の親孝行だった。(千葉県長南町/加藤裕一)