11…
11月15日、U18日清食品トップリーグ2025の女子最終日、岐阜女子高校対日本航空北海道の一戦で笛を吹いたのは、実践学園高校3年の三海世奈だ。同大会で女子高校生がレフェリーを務めるのは今回が初の起用であり、高校在学中のレフェリーが高校の全国トップクラスの試合を担当する貴重な機会となった。
現在3年生の三海は東京の実践学園高校に在籍し、東京都女子高体連に所属する高校生レフェリーだ。バスケットボールを始めたのは小学校4年生から。中学時代は東京都の梅丘中学校でプレーし、高校ではマネージャーに転身しつつ、中学3年の引退後から審判資格の取得に取り組んだ。
「将来トレーナーになりたいという目標があり、チームを違う角度から支えたいと思っていました。ルールや競技理解を深めることで、プレーヤーやコーチとは異なる視点でチームに還元できると感じたことが、審判活動を始めた理由です」と語る。チームを支える立場で得た経験が、審判としての視点を広げる契機になったという。
女子高校生のレフェリーは全国的にも数が限られており、男子に比べ母数は多くない。それでも、同世代の女子が審判資格を取得する動きは徐々に増えており、今回の起用もその流れの中に位置づけられる。
今夏のインターハイ準決勝のカードでもある岐阜女子対日本航空北海道戦では、全国上位の選手たちが見せるスピードとフィジカルの攻防が続いた。「普段よりもスピードがある展開で、留学生の高さに対応する目の使い方など難しさもありましたが、自分なりにアジャストしながら最後まで楽しんで吹くことができました」と振り返り、スピード・高さ・状況判断のいずれにおいても手応えを感じていた。
この試合では、2004年のアテネオリンピックをはじめ、多くの国際大会で審判を務めてきた須黒祥子氏がクルーチーフを担当した。須黒氏は三海の適応力と判断力を高く評価し、「想像以上にしっかりしていました。最初はフォローが必要かと思いましたが、途中からはその必要はないと感じました。吹くべきところをきちんと吹いていました」とコメントした。
さらに須黒氏は、三海の言語化能力を大きな資質として挙げる。「自分の考えを整理して言葉にできる力があります。審判は自分の判断を持ち続けることが求められる職種であり、その点で非常に向いていると思います。コミュニケーションの面も含めて、可能性を感じます」と語り、明確に評価した。
審判を志す女子高校生はまだ多くはないが、須黒氏は三海の取り組みが今後の広がりにつながると見ている。「やりたいと思っていても、どう始めていいか分からず踏み出せなかった女子の皆さんが多いと思います。今回の事例を知ることで、より多くの子たちがチャレンジにつながってほしいです」と話し、今回の登用が次世代の刺激になる可能性を強調した。
現在、三海は大学進学を目指して受験に取り組んでいる。「トレーナーを目指しながら、審判の資格をステップアップしていきたいです。両立できるところまで続けたいです」と明かし、大学進学後も審判活動を継続する意欲は強い。また、「須黒さんのように国際的に活躍できる審判員になりたいです。後を追って、高みを目指したいと思っています」と将来像を描く。
三海世奈が高校生のビッグタイトル、U18日清食品トップリーグという舞台で示したパフォーマンスは、審判としての適性、吸収力、そして成長意欲を兼ね備えていることを示した。今回の経験は、女子の若い世代が審判の世界に挑戦していくための新たな道標となりそうだ。
文=入江美紀雄
【動画】U18日清食品トップリーグでジャッジする三海世奈レフェリー