◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 3日目(15日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー7…

中嶋常幸は米ツアーで活躍した日本人選手の草分け的存在

◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 3日目(15日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)

10月の「アジアパシフィックアマチュア選手権」(アラブ首長国連邦)でプレーオフ負けした16歳の長崎大星(勇志国際高)は、中嶋常幸が主宰を務めるトミーアカデミーの出身だ。日本ツアー通算48勝の71歳からすると、祖父と孫ほどの年の差がある。

ドバイで敗れ、来年の海外メジャー「マスターズ」と「全英オープン」の出場権を取りのがした長崎について、中嶋は「良い経験も辛い経験も、全部プラスになる」と語った。今週のプロツアーでは、悔し涙はすっかり枯れた様子で堂々と予選を通過。「とてもユニークだし、才能豊かだし、見ていて楽しいよね。天真爛漫っていうか」と目を細める。

まだ16歳

まだ高校1年生の生徒の良さは「再現性が高く、やっぱりリズム感がいいところだね。持って生まれた資質が、かなり高レベル」だという。身長は現在164cm。恵まれているとは言えなくとも、「イアン・ウーズナム(ウェールズ/165cm)にしても小さかったしね。体格はそれほど影響ないと思うよ」と1991年のマスターズ王者の名を挙げて将来を期待した。

近年、世界を日常的に意識するジュニアが増えたことを中嶋も喜んでいる。「やっぱり日本のゴルフレベルが高くなったと思うんだよ。ドライバーの飛距離は海外の選手とも大きな差はなくなった。150yd以内のショットも日本の選手は十分戦える」。残されたギャップに関して「あとは200から230yd付近のショットの精度が違う」と指摘した。

アマチュアの長崎大星(左)が師事する中嶋常幸。若手に思うことは

その差を生むのは日本と欧米のゴルフ場の違いにもある。「やっぱり日本の芝は、楽は楽だよね」。多くのコースのフェアウェイを構成する高麗芝からのショットは、ボールがわずかに浮いた状態から打てる。「アメリカみたいにペタっとした芝から打つとなると、それだけインパクトでコンタクトの良さが必要になる。日本の芝でいくらやってもその差は縮まらないんだ」と厳しい。

「だからどんどん(海外に)出ていかなくちゃいけない。成績が思うほど出なくても、やり続けていればいいと思うけどね」。中嶋は1980年代後半、米ツアーに本格参戦した。今では松山英樹小平智久常涼畑岡奈紗らが自宅を構えるフロリダ州オーランドにいち早く拠点を置いた日本人選手だった

10代の長崎(中央)、30代の石川遼(左)、50代の深堀圭一郎が同じ組でプレーした

それでも、AONの一画を担ったレジェンドは「俺たちはもう往復で、掛け持ちしてやっていたから、結局“どっちつかず”になってしまった」とキャリアを振り返る。当時は今とは違って日米ツアーに賞金額の差がほとんどなかった時代という背景もあるはずだが、「(海外では)優勝争いをするのが精一杯。向こうでたくさん勝つためには、向こうに本拠地、軸足を置いて戦わないといけない」と考える。

「両方で頑張ろうとするとなかなか苦しい。アメリカを中心にしながら日本ツアーにも多少出るという形がこれからはベストじゃないか。日本ツアーにとっては寂しいことだけれど、海外で活躍する選手を見たいのであれば」。多くの後輩たちが画面の向こうで飛躍する姿を待ち望んでいる。(静岡県御殿場市/桂川洋一)