11月9日、愛知県豊田市の豊田スタジアムを拠点に愛知県・岐阜県の舗装路を使用して開催された4度目のラリージャパンがフィニ…

11月9日、愛知県豊田市の豊田スタジアムを拠点に愛知県・岐阜県の舗装路を使用して開催された4度目のラリージャパンがフィニッシュした。1年目は観客がステージ内に進入、2年目はオフィシャルカーがステージスタート後もステージ内に留まり、昨年は妨害の意図を持った一般車のステージ侵入を防げず、スタート直前のワークス車両と鉢合わせするという前代未聞の事件が起きた。大会主催者には、5万ユーロの罰金と、2025年大会までにマーシャルトレーニングを実施して25年大会でさらなる問題がないことを執行猶予条件とする10万ユーロの追加罰金が課せられていた。言うなれば、正念場の年だった。

モータースポーツのなかでも公道を使用するラリーにとって、競技運営上の安全性確保は欠くことのできない条件だ。その点に関して、今回のラリージャパンは大きな問題はなく閉幕を迎えた。WRCのセーフティーデリゲートを務めるニコラ・クランジェは、取材に対し「すべてが順調に機能していた。私たちは満足している」と競技運営に合格点をつけた。この成功に至るまでに、FIA側からはそれぞれのブリーフィングの『方法』、『担当者』、『理由』を徹底して指示。ブリーフィングを通して関係者たちをより良く知ることで、より適切な配置も可能になったという。さらにクランジェはWRCチリのフィニッシュ後、ジャパン開催の5週間前に現地入りして、実際のプロセスと現場での運用に重点を置いて作業。大規模な駐車場で、マーシャル配置、無線ポイント、アクセス管理、テープ封鎖などを再現したステージのシミュレーションを実施した。ラリー開幕の前日には既報どおり、ラリーHQのあるスカイホール豊田でも同様の訓練を実施。Mスポーツ・フォードの協力で、実際のラリー1車両でもトレーニングを行い、安全対策に万全の体制を整えた。

一方、今年のラリージャパンは豊田スタジアムでのスーパーSSに代わり、豊田スタジアム対岸の公園と市街地を組み合わせたトヨタ・シティ・スーパーSSを実施。8000人分の観客キャパシティは埋め尽くされたが、観客目線では一部の観戦エリアで照明が十分ではなかったり、解説が十分に聞こえないなど、初年度ならではの課題も見えた。来年は5月末に会期が移るため、開催が半年後に迫っているが、来年以降もこの市街地ステージを継続開催するかどうかは現時点で未定。これまで愛知のラリーを支えてきた新城市が今季限りでSSの実施を取り止め、岡崎市も中央総合公園でのステージを今年限りとすることを発表しており、主催者はすでに対応策に動いているという。





4回の開催を経て、今後は様々な側面で変化が予想されるラリー開催について豊田市関係者は『豊田スタジアムスーパーSSの再活用は、長期にわたってスタジアムが使用できないことなどの負荷から困難』とみており、ステージ構成については代替コースで魅力を補完することが可能との認識を示している。また、愛知県最大の都市である名古屋市も参画に前向きであることから、都市圏への広がりを期待し、イベント縮小懸念に対する反対材料にしたいという。しかしステージ環境から観戦エリアが限定されがちとなる点は否めなく、豊田スタジアムのスーパーSSがなくなった今年の有料観客数は、4日間を通して7万3400人(うちサービスパークは3万7700人)。来年は5月末開催となることで、稲刈り後の田んぼを使用していた観戦エリアも使用が難しくなる懸念も発生している。豊田市ではリエゾンを活用した面的な盛り上がりとファン接点の拡大が強みとしながらも、安全上の重大課題として「リエゾン区間での追随行為」を挙げている。今大会では、4日間を通してリエゾンで36万人近くを集客するなど、リエゾンはラリーの応援に欠かせない要素となっているが、ラリーカーの追随は単純に危険であるだけでなく、今後のラリー開催を難しくする要素にもなってしまう。世界が評価する日本のラリーファンとして、長くWRCの開催が続くよう、だれもが楽しめる形でラリーを迎え入れたいものだ。