「学びしかなかった」阪神タイガースでの4年間を終え、「エイブルトライアウト2025~挑め、その先へ」に臨むことになった森…

「学びしかなかった」阪神タイガースでの4年間を終え、「エイブルトライアウト2025~挑め、その先へ」に臨むことになった森木 大智投手(高知)。バンテリンドームでのプロ初登板初先発で鮮烈な印象を残した1年目から一転、一軍未勝利のまま今年は育成選手として背番号120を背負い、独立リーグとの交流試合での登板が多かった。図らずもYouTubeでの配信映像で見る機会もあったことから本人いわく「自分の技術不足」以上の苦しみにあったことも理解していた。

 高知中時代は坊っちゃんスタジアムでの軟式球「150キロ」を現地で体感し、高知時代も何度も試合・練習を取材してきた筆者にとって、正直に言えば期待より不安が上回っていたことは否めない。

 しかし、実際のマウンドで森木は、私の不安を払拭した。

「この4年間でたくさんの方々に愛情を頂いたことに感謝しつつ、自分の伸びしろも感じることができた。野球の考え方や制球、出力の部分で自分の30%しか出せていなかったので、もっと自分を解放したいと思ったし、この1ヶ月半はストレートの質から見直しました」

 シーズンよりいい姿を見せようとする、その片りんが随所に見えた。

 この日の森木はセットポジションから両腕をいったん下げリラックスさせてから両腕も上げていくフォームに変更。高知でよかった時期と同じく無理に腕を上げようとせず、スリークォーターに近い位置から離すリリースが安定したことで課題を抱えていた制球も格段に改善した。

 この日の最速は149キロだったが、それも森木本来の強みである「力感なく」出したもの。このフォームが固まれば制球の伴った150キロを軽々と出せる余地は十分に感じられた。

 また、高校時代にキャッチボールで試していたツーシームも「キャッチボールで投げてみたら使えると思った」と構想外になってから本格採用。フォーシームとほぼ同じ球速で空振り、凡打を奪える決め球の習得は、安打・四球・遊ゴロで終わった打者3人との勝負の先が見てみたい感情を抱かせるものだった。

 そんな22歳右腕の獲得へ真っ先に獲得に手を挙げているのは森木が阪神タイガースから戦力外通告を受けた直後から「NPBが獲得しないのであれば、ウチは必ずオファーを出します」と球団関係者が明言している四国アイランドリーグplus所属の高知ファイティングドッグスである。

 過去には藤川 球児(現:阪神タイガース監督)、今年途中にもラファエル・ドリス投手を阪神タイガースへ。さらには元広島の藤井 皓哉投手(おかやま山陽)を福岡ソフトバンクホークスに送り出すなど、NPB復帰の実績がある。さらに森木自身も「ふるさとで頑張る選択肢も自分の中にはありますし、面白いと思っている」と興味を持っていることを認めている。

 ただ、トライアウト当日の取材を高知ファイティングドッグスの他にも接触を図っている球団もある模様。「NPB希望とかそういったことも言っていられない状況」と自分の置かれている立場を十分理解しつつ「世界一の投手になるために力強く一歩を踏み出したい」と高知中・高知高時代からずっと目指していた夢を叶えるための次なる場所はどこになるのか。

 「今日も応援して頂いたファンの皆さんに恩返しをしたい」まずかは彼自身がどんな決断を下すのかを静かに見守りたい。