聞こえない・聞こえにくい人のための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が15日に開幕する。デフバドミントンに…
聞こえない・聞こえにくい人のための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が15日に開幕する。デフバドミントンに出場するのは、北海高校(札幌市)3年生の森本悠生選手(18)だ。
生まれつき難聴で、日常生活では補聴器を着けている。だが、デフバドミントンでは補聴器は禁止。パートナーの位置も打球音も聞こえない。無音の世界の中で、視覚に集中する。
バドミントンと出会ったのは小学1年生のころ。父親に誘われたのがきっかけだった。初めはなかなかラケットに当たらなかったが、コツをつかんでからはのめり込んだ。
中学まではろう学校に通っていたが、北海高校バドミントン部顧問の伊藤健史教諭の猛烈なアタックを受け、一般校に進む決意をした。
伊藤教諭は、当時中学1年生だった森本選手の攻撃力の高さから、障害の有無に関係なく「間違いなく全道に行く」と確信したという。
森本選手の部屋の本棚にはバドミントンの雑誌がずらり。勉強に飽きたらページをめくり、効果的な練習方法などを読んで学ぶ。最近はデフバドミントンが取り上げられていることもあり、うれしくなる。
2023年にブラジルで開かれた世界デフユースバドミントン選手権大会では、混合ダブルスで優勝、男子シングルスで準優勝に輝いた。世界ランキングは男子シングルスで16位。
初めて日本で開催される今回のデフリンピックでは男子シングルス、男子ダブルス、混合団体戦の三つに加え、けがで休場した選手に代わり、混合ダブルスにも出場する。およそ10日間、連日複数試合をこなすハードな日程になるという。
強みは切り替え力と前向きさ。4種目出場は体力との戦いになるが、「高校3年間の集大成として、粘り強さと迫力あるスマッシュを見せたい」と意気込む。
7日に行われた壮行会では、全校生徒約1140人を前に「障害を持っている人でも夢を持つことの素晴らしさを伝えたい」と語った。
金メダルを目標に掲げているが、3年間見守ってきた顧問の伊藤教諭は「背負いすぎずに自分のためにのびのび戦ってほしい」と話す。大会期間中は観客席から見守り、楽しんでプレーできるような声かけをしていくつもりだ。(鈴木優香)