■日本サッカー考 エリート教育編(2) 日本サッカー協会(JFA)が選手育成のために立ち上げたJFAアカデミー(福島県)…
■日本サッカー考 エリート教育編(2)
日本サッカー協会(JFA)が選手育成のために立ち上げたJFAアカデミー(福島県)は来年、開校20年の節目を迎える。
世界で活躍できる人材を育てる「エリート教育」を掲げたJFAアカデミー。ただ、目的の一つである選手の輩出という点で課題も残る。
初代スクールマスター(校長)を務めるなど、発足に深く関わった田嶋幸三・JFA名誉会長にこれまでの道のりを振り返ってもらった。
――どのような役割を思い描いてJFAアカデミーを立ち上げたのでしょうか?
「ベースは(フランスのサッカーエリート養成機関)クレールフォンテーヌ。サッカーの方向性を示すようなシンクタンク的な役割を期待した。フランスから(名コーチとして知られるクロード・)デュソーさんを招いて、ボールを止める、蹴る、それを走りながら、というスタイルをめざしていた」
――都市部から距離があり、選手が集まりにくいという懸念はなかったのでしょうか?
「ネガティブな点で言えば(都市部から)遠い、対戦相手がいない、というのがあったのは事実。ただ、逆に親元から離すことの方が大切だと思っていた」
「欧米では寄宿舎制の学校に子どもたちを入れている。少し不自由な共同生活を経験することで、人付き合いができるとか、色々な立場がわかるとか。そうした社会性を養う意味でも寄宿生活をさせることが重要だと考えていた」
――開校前の取材では、2014年ワールドカップ(W杯)にアカデミー生が選ばれていたらという青写真を描いていました。しかし、アカデミーの男子卒業生で、これまでW杯の代表メンバーに入った選手はいません。
「これは自分にも責任があるんだけど、男子は指導者がコロコロ変わってしまった。変わる度に(開校時の理想が)薄れてしまったところはあったと思う」
「JFAで指導者の報酬のヒエラルキーは、代表監督が頂点。全体のバランスを考えて(他の給料を)決めているが、Jクラブのアカデミーの方が額が高く、オファーがあれば、どうしてもそちらに行ってしまうだろう。また、東日本大震災もあって、アカデミーから離れる者が多かったのも事実としてある」
「女子はアカデミーでやっていることが全国に発信されていて、我々が目指したものがそこにある。23年のW杯は5人、24年のパリ五輪には7人のアカデミー卒の選手がいた。成功した部分だと思っている」
「ただ、男子は残念ながら発信拠点という役割が薄れてきているのでは、と思う」