蹴球放浪家・後藤健生には心配なことがある。サッカー取材に必要なものが、消えようとしているのだ。デジタル化の波、はたまた…
蹴球放浪家・後藤健生には心配なことがある。サッカー取材に必要なものが、消えようとしているのだ。デジタル化の波、はたまた、その他の理由で国内外から消えつつある、取材のマストアイテムの「不在」を憂うとともに、その紙を手に入れるための「冒険」を振り返る!
■苦労した「日本招待」のコパ・アメリカ
1999年に、日本代表がコパ・アメリカに招待されたことがありました。パラグアイでの大会で日本はペルー、パラグアイに完敗。最終戦でボリビアと引き分けただけで、グループリーグ敗退に終わりました。
この大会では、試合前にメンバー表を手に入れるのに苦労しました。メンバー表はあることはあるのです。実際、持っている人もいました。
ただ、メンバー表はどこか決まったところに置いてあるとか、記者席で配ってくれるという方式ではないのです。メンバー表のコピーを持っている係員からもらうのですが、その係員がどこにいるかが分からないのです。たまたま、通りかかった係員から受け取ることもあれば、遠くにその係員がいるのは分かっていても混雑のために近づくことができないこともありました。
■そもそも「存在しない」香港リーグでは…
そもそも、「メンバー表」などというものが存在しない試合もあります。
20年以上前に香港リーグを観戦に行ったときのことです(別の用事で香港に行ったときに、ついでにリーグ戦を観戦に行ったのです)。「ついで」なのでメンバーが分からなくても問題ありませんし、そもそも選手の名前が分かったとしても、それがどんな選手かほとんど分かりません。
でも、やはりメンバー表がほしいのです。これは、もう「習性」のようなものです。
で、隣にいた香港の記者に聞いてみたのです。
「メンバー表ってないの?」
もともと、そんなものがない場所で聞いてみても、相手には何を聞かれたか分かりません。キョトンとしていましたが、やっとこちらの質問の意味が分かったのでしょう。彼はこう言いました。
「メンバーを知りたければ、ロッカールームに言ってチームに聞けばいいんだよ」
■韓国のK3リーグでは「至れり尽くせり」
2014年の仁川(インチョン)アジア大会を観戦に韓国に行ったときのことです。大会期間中、Kリーグはお休みになりますが、下部リーグはやっていたので「K3チャレンジリーグ」のソウル・ユナイテッド対忠北清州(チュンブクチョンジュ)の試合を観戦に行きました。4部リーグに当たります。
ソウル東部の盧原(ノウォン)区の公園内にある小さな競技場。観衆は約50人という試合でした。
もちろん、メンバー表なんてありません。
そこで、本部席に行って「選手名単(メンバー表)ありませんか?」と聞いたのです。
そうしたら、「ちょっと待ってて」と言って係員が持ってきたのは両チームの登録選手リストのコピー。選手名(ハングル)の他に、漢字名から身長・体重。さらになんと選手の住所まで載っている優れモノでした!