サッカーJリーグのJ2昇格へ向け、正念場の戦いが続くJ3のヴァンラーレ八戸。クラブには、選手たちを食で支える「お母さん…

 サッカーJリーグのJ2昇格へ向け、正念場の戦いが続くJ3のヴァンラーレ八戸。クラブには、選手たちを食で支える「お母さん」と呼ばれるスタッフがいる。悲願の昇格をともに果たすため、家庭の味で選手やスタッフを後押しする。

 「キャベツ盛りつけようか」「柿、切っておくよ」。6日朝、ヴァンラーレのホーム「プライフーズスタジアム」(青森県八戸市)にある調理室で、3人の女性が声を掛け合いながら、手際よく昼食作りの手を動かしていた。この日、用意したのは選手・スタッフ合わせて34人分だ。

 練習を終えた選手がすぐにでも食べられるようにするため、朝8時すぎから準備を始める。チームが遠征に出る日はもっと早い。

 3人は、よっちゃん、みっちゃん、えっちゃんの愛称で選手らに親しまれている。選手たちにとっては「かっちゃ」(青森の方言で「お母さん」の意味)のような存在だ。

 3人にとっても、選手たちは「我が子」だ。「おなかをすかせているんだから、いっぱい食べさせてあげたい。しっかり食べて勝ち進んでほしい」と目を細める。

 日々のメニューで大切にするのは「家庭料理の味」。それと共に、アスリートの体づくりに必要なたんぱく質を多く取れるようにするなど、栄養のバランスを意識しながら献立を決めている。

 「悩んだら『何が食べたい?』って選手に聞いたり、しばらく出していない料理を作ったり。他のチームのメニューを参考にすることもあります」

 人気のメニューは、カレーや豚キムチ、マーボー豆腐など。地元・八戸の郷土料理「せんべい汁」も好評で、石崎信弘監督は「大好物」と言う。8日の奈良戦で同点ゴールを挙げた妹尾直哉選手は「練習後の疲労回復には食事が重要。栄養面を考えながら、終わってすぐ食べられるように作ってもらってありがたい。メニューのリクエストにも応えてもらっている」。石崎監督も3人の作る食事が「選手たちの力になっている」と太鼓判を押す。

 クラブのサポーターでもある3人。ホームで試合があるときは応援に駆けつけ、スタンドから選手に熱い声援を送る。「けがをしないでほしい」。そんな親心でピッチを見つめている。

 食事を終えた選手たちには「いってらっしゃい」と声を掛ける。「がんばって」の意味を込めて。「また『ただいま』って元気に帰ってきてもらいたい。選手の元気と笑顔が私たちの元気の源なんです。そんな選手たちのために働けるなんて、幸せなことですよ」

 ヴァンラーレは15日にアウェーで高知ユナイテッドSCと対戦する。他チームの結果によって、最短では16日に昇格が決まる。「さあ、J2へ突っ走れ!」。かっちゃたちは祈るような思いで選手たちの背中を押す。(野田佑介)