早田が張本との熱戦を制して頂点に立った(C)Getty Images 11月9日までドイツ・フランクフルトで行われたWT…

早田が張本との熱戦を制して頂点に立った(C)Getty Images
11月9日までドイツ・フランクフルトで行われたWTTチャンピオンズで、早田ひなが念願の初優勝を果たした。チャンピオンズとは、国際卓球連盟が主催するWTTシリーズのうち、グランドスマッシュ、ファイナルズに次ぐハイレベルの大会。今大会は中国選手が不参加だったため、中国に次ぐ実力の日本選手が優勝する可能性が高いと見られていた。
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その予想通り、決勝に進出したのは準決勝で伊藤美誠との激戦を制した早田ひなと、準決勝でパリ五輪2024ベスト4の申裕斌(韓国)を破った17歳の張本美和だった。
両者の過去3大会の対戦成績は、早田が2勝1敗と勝ち越しているが、いずれもフルゲームの接戦。中でも先月のスターコンテンダー・ロンドンでは決勝で張本が早田を4-3で破り、総得点数は実に61-60とわずか1点差の大大大激戦だった。
実力は完全に互角で、どちらが勝ってもおかしくない上に、どちらも初優勝がかかっていて絶対に勝ちたい。こういう状況がもっともプレッシャーがかかる。
早田が2ゲームを先行すると、張本がすかさず取り返して2-2と並んだ。そこから早田が1ゲームを取って王手をかけると、第6ゲームも9-6とリードした。勝負あったかに見えたが、ここから張本が逆転で取り返す。そして迎えた最終ゲーム、第6ゲームの逆転の勢いそのままに今度は張本が6-3とリードする。内容的にも、早田はレシーブやブロックなど、ラケットの角度が合わないミスが目立ち、初優勝は張本かと思われた。
そして次のラリー、早田がギリギリ届いたボールを高く打ち上げてやっと返したが、頭の高さほどまで弾んだそのボールを張本はスマッシュミスしてしまう。絶対にミスの許されないボールだった。たった1点だが、こういうミスの後に流れが変わった試合は数知れない。そこから早田はまったくミスをしなくなり、逆に張本はハイリスクの攻めを強いられてわずかにボールが外れ、最後は9-11と逆転を許した。新旧エース対決を制して初優勝を手にしたのは早田だった。
12月10日からはWTTファイナルズ香港が始まり、組み合わせによっては再戦の可能性がある。さらに来年1月には、早田が張本に決勝で2連勝中で、史上4人目となる4連覇がかかる全日本選手権が控えている。当然、張本は初優勝を狙うが、これに伊藤美誠、平野美宇、橋本帆乃香、大藤沙月らが割って入る。この層の厚さも日本女子の強みだ。
才能ひしめく卓球日本女子の熾烈な戦いに目が離せない。
[文:伊藤条太(卓球コラムニスト)]
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