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 11月12日(現地時間11日、日付は以下同)、ダラス・マーベリックスはニコ・ハリソンGMの解雇を発表した。

 ハリソンは昨シーズンの2月、当時のフランチャイズの象徴であり若くしてリーグを代表するスーパースターとなっていたルカ・ドンチッチをロサンゼルス・レイカーズに放出した。以降チームは低迷を続けており、今回の解雇はチームの現状を踏まえた判断となっている。

 2月にドンチッチのトレードが報じられた翌朝、マブスのファンは本拠地であるアメリカンエアラインズ・センター前で抗議デモを行い、“模擬葬儀”が行われる事態にまで発展した。マブスのホームゲームでは「Fire Nico(ニコ・ハリソンを解雇しろ)」というチャントが上がり、その声はシーズンを通して止むことはなかった。

 ドンチッチ放出後の戦績低迷が相まって、マブスは奇跡的にNBAドラフトの1位指名権を獲得したが、それでも「Fire Nico」のムーブメントは止まなかった。6月のドラフトで超大型新人であるクーパー・フラッグを獲得した際も同様のチャントが巻き起こり、今シーズンの試合でも続いていた。

 決定打となったのは、11日のミルウォーキー・バックス戦での敗北のようだ。第4クォーター終盤、PJ・ワシントンが残り1.2秒で同点のチャンスとなるフリースローを得た際にも、観客席からは「Fire Nico」コールが鳴り止まなかった。ワシントンは3本中2本を外し、マブスは114–116で敗北した。翌日、ハリソン解雇の報道が流れ始めた。

 このバックス戦で、SNSを中心に注目を集めている「謎の青年」がいる。コートサイドで目撃されたその青年は、マブスとバックスの試合にも関わらずロサンゼルス・レイカーズのユニフォームを着用し、マブスのオーナーであるパトリック・デュモンと会話している様子がキャッチされている。青年が着ているのはドンチッチのユニフォームであり、この翌日にハリソンの解雇が報じられているため、SNSでは「彼が裏で糸を引いた黒幕なのでは」「オーナーを動かした彼は何者なんだ」といった声であふれた。

 現地メディア『The Athletic』によると、その青年は18歳のダラス在住のマブスファンであり、デュモンの4列後方に家族でシーズンチケットを保有しているとのこと。同メディアによる青年への取材によれば、デュモンはドンチッチのトレードについて後悔の念を口にしていたという。記事の中で、青年は次のように語っている。

「パトリックは、“あのトレードを本当に後悔している”と言っていました。僕はこれまで彼にヤジを飛ばしていたことを謝ったんですが、彼は”みんなに償いたい”と言っていました」

 どうやらこの青年がオーナーを動かしたわけではなさそうだが、解任の裏でオーナーの心情を直撃することに成功したようだ。オーナーの“償い”が今後どのような形でマブスに表れるのか、GM解雇後のチームの動きに注目が集まる。