25年4月、大手予備校の「四谷学院」が広域通信制高校を開校した。26年春には野球部創部が決まっており、一期生となる入部予…

25年4月、大手予備校の「四谷学院」が広域通信制高校を開校した。26年春には野球部創部が決まっており、一期生となる入部予定者15名とともに一歩ずつ歩みを進めていく。そんな「四谷学院野球部」が目指すものはどこにあるのか。

「55段階個別指導」で本当の教育の実現へ!

「今までは予備校だけでしたが、今回から学校法人として認めていただいたので、これからは勉強だけでなく運動や芸術などトータルな教育をしたいです」(森みさ・四谷学院理事)

 通信制高校を始動させた四谷学院。理事には、かつてドジャース・大谷翔平選手も実践した「原田メソッド」の提唱者である原田隆史氏が就任している。原田メソッドは、『自立型人間』の育成を目指し、人格形成を土台として能力アップができるよう様々なツールが用意されている。

 具体的な内容としては「目的・目標の言語化」や「良質な行動の習慣化」で、様々な専用シートや日誌などがある。もちろん野球部員にもこの「原田メソッド」が取り入れられる。

 また、四谷学院といえば「55段階個別指導」が有名だ。この“四谷学院名物”も野球部員は受けることになる。

「55段階は英語や数学など中学1年生から、やるべきことを細分化する仕組みです。野球をやってきた人の中には、勉強ができなかった、もしくはやらなかった人もいると思いますが、例えば数学が厳しければ算数からやり直すような、今できることを積んでいく指導を行います。通信制はカリキュラムに自由度があるので、学び直しができますし、勉強した子達はどんどん先に進んでいくこともできます。その人たちのペースにあわせてやっていくことができる学習プログラムです。今の学校教育は学年ごとにカリキュラムがあって、どこかでつまずくと脱出できなくなるんです。そこを引っ張りあげることが55段階個別指導のいいところです」

 森理事はそう話し、さらに力説する。

「勉強で言えば行きたい大学に受かるのが目標ですが、大学合格はあくまで通過点にすぎません。そこまでのプロセスでどんな成長ができたかが大事です。55段階はテストに合格するとハンコを捺してもらえて、自分が成功体験を積んでいることが可視化されます。この一つひとつの成功体験が自信になって、『やればできる』というセルフイメージができていきます。『自分はやればできる』と思えないと、挑戦もできないですし、こうしたい、ああしたいとも思えなくなってしまいます」

「部活動教育」に新提唱!勝利至上主義にならない指導を!

原田氏は『部活動教育』に対しても、新たな評価基準を提唱している。

「『何かの大会で優勝すること』が教育になってしまうことを避けるためです。『勝てばいい』というのは教育にはなりません。人格も磨いていけるように働きかけをしたいと思っていますし、チームとして良くしていく、自らが良い人間になる訓練の場にしたいと思っています」

 部活動の評価の観点は2つ。「他人に対しての貢献や配慮ができること」、「競技力をあげていくこと」だ。その目標達成のために生徒自身が考え、監督や部長、コンディショニングの先生と3人体制でサポートしていくという。既に埼玉栄や郁文館などがスポーツにおける教育指標を取り入れている。入学を予定している保護者からも勉強・野球ともに高い次元でやっていこうとする姿勢を評価する声が上がっているという。

 そうなると重要となるのは野球部監督の人選だ。勝利至上主義では四谷学院の監督は務まらない。

「現在公表はできませんが、原田先生が主催する教師塾で原田メソッドを熱心に学び、過去に高校野球で指揮を執った経験がある方です。その方も野球だけではダメと思っている人です」(森理事)

 高校球児の中でプロ野球、社会人野球でも活躍できるのは一握りにすぎない。「野球しかできないのでは将来はシビア。高校卒業後、自分自身で進路を選択できるかどうかも親御さんは重視されています」(森理事)と球児たちの将来に目を向けられる指導者が求められていることは間違いない。

 通信制高校が2年目にして立ち上げることとなった野球部。「教育」と「運動」の指導を両立しながら将来的な茨城の頂点、甲子園出場の実現を目指して動き出す。