F1第21戦サンパウロGPレビュー(前編)「今週末は、何もかもがうまくいきませんでした」 サンパウロGPの決勝を17位で…
F1第21戦サンパウロGPレビュー(前編)
「今週末は、何もかもがうまくいきませんでした」
サンパウロGPの決勝を17位で終えた角田裕毅(レッドブル)は、ガックリと肩を落として言った。
その顔には怒りとも、呆(あき)れとも、落胆ともとれる表情が入り交じっているように見えた。
同じく予選で大苦戦を強いられ、最後尾からスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は3位表彰台。自身は最後尾17位フィニッシュ。この差はどこから生まれたのか。

角田裕毅にとってサンパウロGPは厳しい週末となった
photo by BOOZY
何もかもがうまくいかないレース週末は、FP1から始まった。
走り始めのアタック2周目、ターン4出口の縁石で挙動を乱してスピン。タイヤバリアに前後ウイングをヒットし、前戦からようやく角田車にも投入された新型フロントウイングを壊して失ってしまった。
痛かったのは、旧型フロントウイングで戦わなければならなくなったということだけでない。マシン修復で25分のロスを喫して、その後のロングランやショートランのプログラムがフェルスタッペンと異なる構成・時間帯になってしまったことだ。
そしてなにより、リスクを負って攻めて得られるものがある予選アタックではなく、得られるものなど何もないフリー走行の、それも走り始めに不用意なクラッシュを喫してしまったという事実。トップチームのシートにふさわしいドライバーであるか否かを審査されている今の角田にとっては、極めて大きな減点材料を作ってしまったことになる。
インテルラゴスでのレッドブルは、マシンセットアップが決して順調にはいかなかった。フェルスタッペンもスプリント予選で6位に沈み、スプリントレースでも1台がリタイアしての4位が精一杯という状況だった。
それを差し引いても、角田がSQ1でつけられた0.717秒もの差はあまりに大きすぎた。それはマシンやドライビングの差ではなく、タイヤのグリップがまったく引き出せなかったことに大きな問題があった。
「全体的にグリップが全然なくて、それがなぜなのかは謎です。なぜこんなにグリップが引き出せなかったのか、マシンから何かを見つけ出すことのほうが重要ですね」(角田)
【2台ともにQ1敗退は19年ぶり】
角田は規定外のセットアップ変更を行なってピットレーンスタートでスプリントレースに臨み、データ収集のための走りにあてた。ある意味でこれは、スプリント予選で苦戦を強いられこのまま勝てない状況に追い込まれた、チーム全体のためのチームプレーでもあった。
ただ、スプリントでは金曜に抱えていた謎のグリップ不足が解消され、マシンに問題があったことがはっきりとした。
そのデータを元に、フェルスタッペンも角田も予選・決勝に向けてはセットアップをアグレッシブに変えた。しかしこれが大失敗で、2台ともにQ1で敗退するという、レッドブルとしては2006年の日本GP以来19年ぶりという異常事態となってしまった。
「スプリントレースを終えた時点では、マシンバランス的にもドライバーのフィーリング的にも、とても満足できる状態ではなかった。最適なウインドウから外していると感じていた。そこで予選前にセットアップを変更し、勝負に出たんだ。結果的にはうまくいかなかったが、これが我々のレースのやり方だ。
我々はリスクを取って攻めるし、そのくらいリスクを取らなければ勝つことはできないと思っている。今回は結果的にそれが裏目に出て代償を払うことになったが、ここ数カ月の間に我々は同じようにリスクを取る決断を何度も下してきた。それこそがこのチームの戦い方であり、スピリットなんだ」
ローラン・メキース代表がそう語るとおり、2位や3位で満足するレッドブルではなく、「マクラーレンに勝てなければ意味がない」と考えるのがレッドブルだ。その結果、2戦前のオースティンではこの攻めの姿勢でポールトゥウインを勝ち獲ったが、今回は勝負に敗れた。
マシンにどんな空力性能やポテンシャルがあろうとも、タイヤを使いこなせなければその性能を路面に伝えることはできない。周りがソフトタイヤを履いているなかでスーパーハードタイヤを履けば、トップレベルのマシンであろうと最下位に沈む。それが克明に突きつけられたのがサンパウロGPの予選だった。
しかし、それでもあきらめないのがレッドブルだった。