6月16日のパドレス戦で669日ぶりの投手復帰を果たした 2年ぶりに投手復帰を果たしたドジャース・大谷翔平投手のピッチン…

6月16日のパドレス戦で669日ぶりの投手復帰を果たした

 2年ぶりに投手復帰を果たしたドジャース・大谷翔平投手のピッチングは以前と比べて、どこが変わったのだろうか。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏が“打者目線”で分析する。

“投手・大谷”は今季、6月16日のパドレス戦で、エンゼルス時代の2023年8月23日レッズ戦以来669日ぶりに投手復帰となった。1イニングから始めて徐々に投球回数を増やし、レギュラーシーズン最終登板の9月23日のダイヤモンドバックス戦では、6回無失点の快投を演じた。トータルでは14試合1勝1敗、防御率2.87の数字を残した。

 2023年9月に自身2度目の右肘手術に踏み切っていた大谷だが、6月28日のロイヤルズ戦でメジャー移籍後自己最速の101.7マイル(約163.6キロ)を計測した。投球回数47で62三振を奪い、奪三振率は11.87をマーク。2023年の11.38を上回り、2022年の11.87とほぼ同じで、球威には問題がなさそうだった。

 一方で新井氏は「今季の大谷はエンゼルス時代に三振を数多く奪っていたスプリットが、すっぽ抜けたり、引っ掛かったりして、精度を欠いていました。代わりに、カーブをうまく使えるようになって、投球全体の幅は広がりました」と評する。

 新井氏が注目したのは、右打者に打率.265(98打数26安打3本塁打)と打たれたのに対し、左打者を.179(78打数14安打0本塁打)に抑え、セオリーとは逆の傾向を示したことだ。ちなみに、手術前の2023年は対右打者の被打率が.170、対左打者が.197。2022年も対右打者が.188、対左打者が.221で、いずれも“セオリー通り”だった。

「今季は左打者に対し、内角に食い込むスライダー、カットボールといった“曲がり球”を厳しいコースに投げられていたことが要因でしょう」と新井氏。また、前述のカーブも特に左打者に対して有効で、自身も現役時代に右投げ左打ちだった新井氏は「左打者にとっては自分の体に近づいてくる軌道なので、“早く振り出さなければ”という反応になるのですが、実際にはスピードが遅く、バットが先に行ってしまいがちで、とらえるのが非常に難しい球です」と説明した。

「右打者に対する曲がり球は、長打を食らいやすい危険な球になる」

 逆に「こういった曲がり球は、右打者に対しては、甘く入ると長打を食らいやすい危険な球になります」と指摘する。ブルージェイズとのワールドシリーズ第4戦では、ブラディミール・ゲレーロJr.内野手に少し高めへ抜けたスライダーを左翼席へ運ばれ、逆転2ランとされたシーンがあった。

 ブランク明けの今季さえ、進化のあとをうかがせた“投手・大谷”。来季は満を持して、開幕から二刀流で臨むことになる。新井氏は「投手としては2桁勝利と防御率3.50以下。その上で打撃で3冠王を期待するのは、いくらなんでも酷でしょうか……。3割50本塁打100打点をクリアすれば、投打ともに超一流といえるのだろうと思います」とイメージを描く。

“漫画にも描けない”といわれる大谷の超人的な活躍が、またまた始まるのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)