捕手が9つのボタンを操作すると、投手側のスピーカーから音声が流れる 野球日本代表「侍ジャパン」は、来年3月のWBC(ワー…

捕手が9つのボタンを操作すると、投手側のスピーカーから音声が流れる

 野球日本代表「侍ジャパン」は、来年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)へ向けて、宮崎強化合宿での練習に「ピッチコム」を導入。日本プロ野球では未採用の機器に、選手の間では確かな効果と戸惑いが相半ばしている。

 メジャーリーグではおなじみのピッチコム。侍ジャパンが現在使用している機器は、バッテリー間で、捕手がサインを出す代わりに、送信機の9つのボタンを操作して球種、コースなどを伝達。投手は帽子の内側に仕込んだ薄型のスピーカーから「内角低め・スライダー」、「外角高め・ストレート」、「一塁へ牽制球」といった日本語の音声を受け取るシステムだ。送信機のボタンは3回押すことができ、“9×3=27通り”の音声に変換できる。サイン盗み防止や、試合時間短縮に効果があると言われている。

 宮崎合宿中、ピッチコムを装着して実戦形式のライブBPに登板した日本ハム・北山亘基投手は「装着の違和感は全くありませんでした。音量は20段階に調節できるのですが、僕は最大レベルの“20”にして使いました」と証言。「WBC本番の大歓声の中などでちゃんと聞こえるかどうかは、ちょっと分からないですね」と不安も口にした。

“送信側”の捕手はどうか。10日に行われた広島との練習試合では、代表入りしている捕手4人全員がマスクをかぶった。先発した阪神・坂本誠志郎捕手だけは、送信機を左手首に装着していたが、他の3人(巨人・岸田行倫捕手、ヤクルト・中村悠平捕手、オリックス・若月健矢捕手)はレガースの右膝付近に着け、ボタンを操作する際には、キャッチャーミットを上から被せるようにして手元を隠していた。

 村田善則バッテリーコーチは「坂本だけはレガースの形状上、送信機を付けるスペースが無く、しかたなく手首に着けたそうです」と明かした。

守備陣も装着してプレー、中堅を守った阪神・森下からは要望も

 井端弘和監督は広島との練習試合終了後、ピッチコムについて「ベンチから見ている限りではもう大丈夫だと思ったのですが、捕手陣に聞いてみたら『ピッチクロックの制限時間ギリギリのことが結構ありました』とのことだったので、もう少し慣れが必要なのかもしれません」と語った。

 ピッチコムは、投手の後ろを守る内野手などもスピーカーを装着することが多い。球種、コースに応じてポジショニングを変える必要があるからだ。練習試合では投手に加え、遊撃手、二塁手、一塁手がスピーカーを装着していた。

 終了後には中堅を守った阪神・森下翔太外野手からも(装着の)要望があったそうで、井端監督は「今のところ、機器の数に限りがある。投球中の投手と、(交代時の時間短縮のため)次に登板する投手に渡さなくてはならない。残りの3個をショートとセカンドに。韓国戦(15、16日に東京ドームで開催)では、ファーストでなくセンターに渡そうかなと思います」と説明した。

 練習試合に二塁手として途中出場したソフトバンク・野村勇内野手は「(スピーカーの)音量が大き過ぎると、走者に聞こえてしまう。試合中に音量を下げました」と使用上の注意点を発見するなど、試行錯誤が続く。

 プロ野球に先行し、侍ジャパンが取り入れたピッチコムは、日本の野球の形態を変えつつあるようにも見える。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)