完全燃焼した山本由伸は来季に向け、疲れをしっかり取ることも佐野氏は大事とした(C)Getty Images 野球評論家の…

完全燃焼した山本由伸は来季に向け、疲れをしっかり取ることも佐野氏は大事とした(C)Getty Images

 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回はドジャースのWS連覇に大きく貢献した山本由伸にスポットを当てる。 

 ドジャースがワールドシリーズ連覇を果たした。

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 強打のブルージェイズ相手に山本由伸は山本は第2戦で完投勝利を達成。優勝決定Sに続き、PSにおいては2試合連続の完投勝利となった。さらに延長18回の死闘となった第3戦では志願のブルペン入り。

 さらに驚愕のパフォーマンスは続く。第6戦では6回96球を投げ、WS2勝目をマークすると、勝負の第7戦でも9回途中から登板。「中0日」の登板ながら、2回3分の2を投げ無失点でWS3勝目をマーク。この活躍でWS3勝、日本人選手としては松井秀喜氏以来のシリーズMVPに輝いたのだ。
 
 佐野氏は今回のドジャース連覇に関して「まさに”驚き桃の木山椒の木”ですよ」と口元を緩ませる。「チームの団結力が最後の勝利を手繰り寄せた。献身的な選手が多く、みんなが報われた」とチーム全員でもぎ取った勝利と賞賛した。

 その中でも大きな働きだったのが、MVPに選ばれた山本投手であることは間違いないだろう。真価が問われるメジャー3年目となる来季に向けて、佐野氏は「僕から何も言うことないですよ。とにかくケガだけはしないでほしい」と切り出す。

 今季は大車輪の活躍でコンディションも心配される。その疲れは「簡単に言うと、終わったあとに力が抜けると(気持ちがオフになると)どっと疲れが出てくるんです」としながら、「それをいかに拭い去っていくのかを、大事にしていかないといけない。大丈夫だと思っても、疲れって意外と残っているんですよ」と自身の経験を踏まえ、その点は心配だという。

 メジャー2年目の今季は12勝をマーク、ポストシーズンも強さを発揮と来季は絶対的エースとして、周囲の注目も集まる。ただ佐野氏は「キャンプやシーズン序盤で調子が上がらないと、いろいろ騒がしい声が上がると思うんですけど、慌てず騒がずでいい」とアドバイスする。

 「結局、大事なのはシーズン終盤にどれだけ頑張れるかなんです。今季もスネル、グラスノーら、故障した投手が終盤に帰ってきてからチームも勝ちだしたじゃないですか」とドジャースも当初は先発陣が故障がちで心配されたが、ローテーションが機能し始めると勝ち星を積み重ねた点を指摘。
 
 山本の来季、臨む姿勢に関しても「マイペースでいいと思います。周りは年間通しての活躍を望むとは思いますが、現状のドジャースは強いのでそんなに負けが込むことはないですから」とあせることなく、自身と向き合ってほしいとした。

 「もちろん、来年もシーズン序盤から活躍して、圧倒的な活躍でサイ・ヤング賞を獲ってほしいという気持ちもありますが、自分のペースでやってほしい。それができる投手だと思います」とさらなる成長を見据えた。

 世界一連覇を果たしたチームでは山本、大谷翔平、佐々木朗希がそれぞれ持ち味を発揮。日本人3選手の活躍で日本を元気づけてくれた。来年も期待したいところだ。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

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