はじめに糖尿病の治療の目的は、「血糖値を下げること」だけではありません。それ以上に大切なのは、動脈硬化や神経障害などの合…

はじめに

糖尿病の治療の目的は、「血糖値を下げること」だけではありません。

それ以上に大切なのは、動脈硬化や神経障害などの合併症を防ぐことです。

そのためには、血糖・血圧・脂質・体重といった多面的なコントロールが必要になります。

この記事では、糖尿病治療の3本柱(食事・運動・薬物療法)を中心に、治療の流れと当院の取り組みをわかりやすく解説します。

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1. 治療の基本 ― 「血糖を上げない生活」をつくる

糖尿病治療の中心は、食事療法と運動療法です。

これらで改善しない場合や、合併症リスクが高い場合に薬物療法を併用します。

食事療法

食事のポイントは「糖質を摂りすぎず、バランスを整える」ことです。

・主食:白米やパンは控えめに、雑穀米や玄米へ

・主菜:肉・魚・大豆をバランスよく(脂質を控える)

・副菜:野菜・きのこ・海藻で食物繊維を摂る

・果物:果糖が多いので1日80〜100kcal以内に制限

・飲料:甘いジュース・缶コーヒーは避ける

・糖質の吸収を緩やかにするために、**「野菜から食べる」**順番も効果的です。

運動療法

運動は、血糖を下げるだけでなく、インスリンの効きを良くします。

・有酸素運動:ウォーキング・ジョギング・自転車などを1日30分

・筋力トレーニング:スクワット・腕立てなどを週2〜3回

血糖コントロールだけでなく、脂肪肝(MASLD)や高血圧・脂質異常症の改善にも有効です。

2. 薬物療法 ― 血糖コントロールを補助する

食事・運動で改善が不十分な場合は、薬を併用します。

薬にはさまざまな種類があり、血糖を上げる仕組みに合わせて使い分けます。

(1) ビグアナイド系(メトホルミン)

・肝臓での糖新生を抑え、インスリン感受性を高める

・副作用:胃腸症状、まれに乳酸アシドーシス

・日本人でも第一選択薬として推奨(JDS 2024)

(2) SGLT2阻害薬

・尿中に糖を排出して血糖を下げる

・体重減少・血圧低下効果もあり、肥満や高血圧合併例に有用

・脱水や尿路感染に注意

(3) DPP-4阻害薬

・インクレチン(GLP-1)の分解を防ぎ、食後血糖を抑制

・低血糖リスクが少なく、日本で広く使用

(4) GLP-1受容体作動薬(注射/経口)

・胃排出を遅らせ、食欲を抑える

・体重減少効果があり、肥満糖尿病に有効

・近年は週1回注射や経口タイプも登場

(5) SU薬・速効型インスリン分泌促進薬

・膵臓からのインスリン分泌を促進

・食後高血糖を下げるが、低血糖リスクに注意

(6) インスリン療法

・膵臓が疲弊しインスリン分泌が不足した場合に使用

・血糖自己測定と組み合わせてコントロール

3. 治療の目的 ― 数値だけでなく「血管を守る」

糖尿病の怖さは、血糖そのものではなく合併症にあります。

治療の目的は「HbA1cを下げること」ではなく、血管・神経・臓器を守ることです。

代表的な合併症は「しめじ」:

・し:神経障害(しびれ、痛み)

・め:網膜症(視力低下)

・じ:腎症(腎機能低下)

さらに「えのき」:

・え:壊疽

・の:脳卒中

・き:狭心症・心筋梗塞

つまり、糖尿病治療は「全身の血管を守る治療」です。

4. 治療を成功させるためのポイント

1.早期発見・早期治療

 初期であれば生活習慣の改善だけでもコントロール可能。

2.定期検査の継続

 HbA1c・尿アルブミン・眼底検査などを年1回以上。

3.合併症を「見える化」

 血管の状態を検査し、治療の目的を実感できるようにする。

まとめ

・糖尿病の治療は 食事・運動・薬の3本柱。

・目標は「血糖を下げること」ではなく「血管・臓器を守ること」。

参考文献

1.日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』

2.American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes 2024.

3.Davies MJ, et al. Management of hyperglycemia in type 2 diabetes, 2023. Diabetologia.

4.日本糖尿病学会. 合併症予防ガイドライン2023.

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。