2025年シーズンWRC第13戦ラリージャパン(ターマック)は11月9日(日)に最終日の6SSを走行し、トヨタのセバスチ…
2025年シーズンWRC第13戦ラリージャパン(ターマック)は11月9日(日)に最終日の6SSを走行し、トヨタのセバスチャン・オジエが今シーズン6勝目を挙げた。2位にエルフィン・エバンス、3位にサミ・パヤリが入り、トヨタが表彰台を独占した。4位にはヒョンデのオィット・タナック、5位にMスポーツ・フォードのグレゴワール・ミュンステールが続き、6位にSS3でのトラブルから粘り強く走り切ったカッレ・ロバンペラが入っている。
ラリー4日目は『ヌカタ(20.23km)』と『レイク・ミカワコ(13.98km)』に続き、岡崎中央総合公園での『オカザキSSS(1.98km)』を2本連続で走行。ステージに隣接する中央総合公園でタイヤフィッティングゾーンを経て、午後は『ヌカタ』と『レイク・ミカワコ』をリピートする6SS、72.38km。最終のSS20はボーナスポイントが付与されるパワーステージとして実施される。
最終日には70kmを超える距離が残されており、しかも中間サービスがないため、マシンにダメージを与えずすべてのステージを走り切る必要がある。首位のセバスチャン・オジエ(トヨタ)と、総合2番手につけるエルフィン・エバンス(トヨタ)との差はわずか6.5秒。前日のSS11でバリアにヒットし、SS14を前にデイリタイアした勝田貴元(トヨタ)はマシンを修理し、無事に再出走を果たした。
この日のコンディションは予報どおり雨。ウエットコンディションとなったことを受け、トップクルー全員がウエットタイヤ5本を選んでサービスを後にした。再出走を予定していたヒョンデのティエリー・ヌービルはサービスを出た後、電気系トラブルによりワイパーが作動せず、無念のリタイアを決めている。
ウエットコンディションのなか、SS15はタナックが、ロバンペラに0.4秒差、勝田に4.2秒差をつける一番時計。エバンスは5.7秒差のSS4番手タイム、オジエは6.5秒差のSS5番手タイムでまとめ、ふたりの合計タイム差は5.7秒に縮まった。総合3番手を走行していたアドリアン・フルモー(ヒョンデ)は、ステージ終盤、走行中にウインドスクリーンが曇りコースオフ。立木にボディ右サイドを激しくヒットし、コ・ドライバー側のドアを失うなど、マシンに大ダメージを負ってしまう。フルモーは21.5秒差の7番手タイムで走り切ったが、ラリー続行を断念。これでサミ・パヤリ(トヨタ)が総合3番手に順位を上げた。

SS16は「前のステージは突然の豪雨に対応できなかった」と振り返ったオジエが、それでもエバンスに1.0秒、勝田に1.7秒差をつけるベストタイム。これでオジエとエバンスの差は6.7秒に広がった。総合4番手を走行するタナックは、段差を越える際に右フロントタイヤをパンク、20秒ほどを失ってしまっている。
SS17とSS18は、岡崎中央総合公園に設けられた『オカザキSSS』を連続で走行する。強く雨が降り続けるなか多くの観客が集まり、SS17では水柱を上げながらオジエと勝田が同タイムのベスト。エバンスはフィニッシュ直前にブレーキングミスからコースオフ、道からこぼれ落ちたが運良くノーダメージでコースに復帰、1.1秒差の3番手タイムでロスを最小限にとどめた。
続くSS18も勝田が連続ベストを刻み、オジエはエバンスを0.5秒上まわるSS3番手タイム。午前中のセクションを終えて、首位オジエと総合2番手のエバンスとの差は8.3秒と、わずかに拡大した。総合3番手につけるパヤリはSS17で左リヤをバリアにヒットさせたが、フィニッシュ後にタイヤを交換し、無事にSS18を走行している。
岡崎中央総合公園の駐車場に設けられたタイヤフィッティングゾーンで、15分間の簡易サービスが行われた。依然として雨は降り続き、トップクルーはウエットタイヤ5本を搭載し、最終セクションへと向かった。走るタイミングよって雨量が変わることとなったSS19は、比較的落ち着いたコンディションで走行したオジエが、エバンスに3.2秒差のベストタイム。最終のパワーステージを前に、その差を11.5秒にまで拡大している。勝田はスタートでギヤボックスが不調をきたし、タイムロスを余儀なくされた。
迎えた最終パワーステージは、SS16『レイク・ミカワコ』の再走SS。WRC2の上位陣、ヤン・ソランス(トヨタGRヤリス・ラリー2)からコースイン。WRC2をリードしてきたアレハンドロ・カション(トヨタGRヤリス・ラリー2)がWRC2で勝利を収めた。ラリー2車両勢では、オリバー・ソルベルグが現役チャンピオンの強さを遺憾なく発揮してトップフィニッシュを果たした。ラリー1勢は勝田からスタートとなるが、勝田はコース途中でスピンを喫し、さらに右フロントタイヤをパンク。SSは走り切ったが、パワーステージでのポイント加算は厳しくなってしまった。続いて走ったロバンペラは、きっちりと暫定ベストタイムをマーク。後続のミュンステール、タナックとも、このタイムを上まわることができないまま、ステージは進行。

総合3番手につけるパヤリはリスクを避けたアタックで、暫定5番手タイムでフィニッシュ。自身初のWRC表彰台を確定させた。フィニッシュでは「初めての表彰台を日本で達成できたことは本当に特別な気持ち」と語り、トヨタとチームへの感謝を述べた。エバンスはロバンペラのタイムを9.3秒も更新する渾身のフルアタック。2位以上、エバンスにとっては45回目のポディウムを決めて、ラリージャパンのSSを走り切った。エバンスは「セブに勝つのは常に難しいし、今週末は少しだけだったが彼の方が速かった。自分としてはベストを尽くした。上出来だよ」と、笑顔を見せた。上位陣最終走者のオジエは、エバンス同様にフルアタックを敢行。スプリットタイムでも勝ったり負けたりという展開のなか、最後に0.1秒差でエバンスを上まわり、パワーステージを制することに成功した。オジエはこれでシーズン6勝目、キャリア67勝目を獲得。トヨタにとっては単独最多勝利記録を更新する、通算105勝目となる。

最終SS終了時点での暫定総合順位は、オジエ、エバンス、パヤリ、タナック、ミュンステール、ロバンペラの順。トヨタは表彰台を独占した第9戦フィンランドから、5戦連続で1-2位を占める強さを見せている。パワーステージポイントは、オジエ、エバンス、ロバンペラ、タナック、ミュンステールがそれぞれ5〜1点を獲得した。スーパーサンデーはオジエ、エバンス、ロバンペラ、タナック、勝田という順となった。この結果、ドライバーズポイントはウイナーのオジエがフルポイントの35点(25点+5点+5点)、2位のエバンスは25点(17点+4点+4点)、3位のパヤリは15点(15点+0点+0点)、4位のタナックが16点(12点+2点+2点)を獲得した。これで272点でエバンスがランキングのトップ、269点の2番手にオジエ、248点の3番手にロバンペラという順になった。213点の4番手タナックは、これでタイトル獲得のチャンスがなくなってしまったことになる。
ロバンペラもわずかに可能性を残してはいるものの、エバンスとオジエのふたりによるタイトル争いの決着は、最終戦に持ち越しとなった。マニュファクチャラーズポイントは、すでにチャンピオンを決めているトヨタが692点、464点の2番手にヒョンデ、Mスポーツ・フォードが191点、TGR-WRT2が145点となっている。
次戦は2025年シーズンの最終戦、11月26日〜29日に初めて開催されるサウジアラビア。紅海に面する港町ジェッダを拠点に開催されるグラベルラリーだ。F1グランプリが開催されるジェッダ・コーニッシュ・サーキットの駐車場をサービスパークに、17SS、319.44kmで争われる。ランキングトップのエバンスにとって、一番走者のハンデは避けられない。チャンピオン争いは、どのような結末を迎えるのだろうか。
WRCラリージャパン 暫定最終結果
1. S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 3:21:08.9
2. E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) +11.6
3. S.パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +2:16.6
4. O.タナック(ヒョンデi20 Nラリー1) +3:18.1
5. G.ミュンステール(フォード・プーマ・ラリー1) +6:48.7
6. K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) +7:01.5
7. O.ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー2) +9:35.5
8. A.カション(トヨタGRヤリス・ラリー2) +10:41.6
9. N.グリアジン(シュコダ・ファビアRSラリー2) +11:36.2
10.J.ソランス(トヨタGRヤリス・ラリー2) +12:26.0