11月12日、広島のマツダスタジアムで開催される「エイブルトライアウト 2025」の参加選手が発表されました。彼らは“将…
11月12日、広島のマツダスタジアムで開催される「エイブルトライアウト 2025」の参加選手が発表されました。彼らは“将来の主力”と期待されてプロに入ってきた選手たちばかり。改めてプロの厳しさを感じます。
今回はトライアウト参加者の中から筆者がアマチュア時代に取材し、印象に残っている3選手を紹介します。
東京都の選抜のエースとして活躍した井上広輝
まずは、西武・井上 広輝投手(日大三)です。高校2年だった2018年選抜で甲子園デビューし、同年夏の甲子園では150キロの速球を投げ込みました。躍動感のある投球フォームから繰り出す常時140キロ台中盤の速球は球速表示以上に伸びを感じさせました。
その冬、井上投手は東京都選抜に選ばれ、キューバ遠征に参加。チームのエースを任されました。東京都選抜はキューバと5戦しましたが、4連敗を喫します。そして最後の試合。井上投手が輝きます。
現在パナソニックで活躍する小山 翔暉捕手(東海大菅生)の2ランで逆転に成功した東京都選抜。9回裏に井上投手がマウンドに登ります。すると、最速146キロの速球でピシャリとキューバ打線を抑えたのでした。淡々と自分のピッチングを見せる井上投手の姿に頼もしさを感じました。首脳陣、選手たちもリスペクトの眼差しで彼を見ていました。
最後の夏は「自分にとって感覚が合うフォームが見つからず、思い通りのストレートを投げることができませんでした」と語るように、西東京大会準々決勝で敗れましたが、ドラフトでは西武から6位指名を受けました。
入団会見前に行ったインタビューでは、「球界のエースになりたい」と高い目標を語った井上投手。夏に比べてかなり体つきががっしりしており、しっかりとトレーニングしていることが伺えました。
6位入団ながら、期待は大きかった井上投手は、高卒2年目に早くも一軍4試合登板します。しかし、以降は一軍登板がなく、2024年からは育成選手となっていました。今季は二軍戦1試合登板のみ。戦力外通告を受けました。
西武投手陣の中では序列が低かったかもしれませんが、実際の井上投手は、フォームのバランスも悪くなく、環境を変えれば全然やれると思います。
北海学園大との交流戦では145キロ前後の速球、鋭く曲がるスライダーを投げていました。唯一の二軍登板となった8月12日のオイシックス戦でも最速147キロの速球、130キロ後半のスライダー、フォーク、110キロ台のナックルカーブをしっかりと投げ分け、2回無失点の好投を見せていました。
高校時代からずっと見てきた井上投手。トライアウトでアピールして新天地が決まることを願っています。
智弁和歌山出身の怪腕・小林樹斗 故障に苦しむも速球は健在
2人目は広島・小林 樹斗投手(智弁和歌山)です。注目を浴びたのは2019年選抜。高校2年生だった小林投手は準々決勝の明石商戦で6回をロングリリーフ。サヨナラホームランを浴びたものの、最速147キロをマークし、翌年のドラフト候補としてマークされるようになります。夏の甲子園では148キロを記録し、順調にレベルアップしていました。フォーク、スライダーの切れ味も鋭く、高卒プロ入りは間違いない投手だと思いました。
智弁和歌山は翌年も選抜に出場します。筆者は2020年1月下旬に取材を行い、小林投手の投球練習を見学しました。冬場にもかかわらず、躍動感溢れる投球フォームから切れ味鋭い速球を投げ込んでおり、逸材だと実感させられました。
中谷仁監督に小林投手について話を聞くと、「何度も野球に取り組む姿勢について厳しく説いてきた」と語ったのが印象的でした。小林投手も「中学時代はやったつもりになっていて、高校入学したら全くついていけませんでした」と話していました。
そこから必死に野球と向き合った小林投手。取材日には投球フォームについてコーチと相談しながら、自分にあった投球フォームを探す姿がありました。
3年時には尽誠学園との交流試合で、最速151キロをマーク。着実にパワーアップした小林投手は2020年のドラフトで広島から4位指名を受けました。
1年目は順調な滑り出しで、二軍で8試合30回を投げ、21奪三振・防御率3.30と好成績を残し、一軍登板も経験します。地元メディアの動画チャンネルでも小林投手の特集が配信されており、球団の期待の大きさも窺えました。しかし2年目以降、怪我が重なり、二軍でも思うようなパフォーマンスができず、4年目の昨年に一度目の戦力外通告を受け、育成契約に。今年は中継ぎを中心に二軍で27試合登板しましたが、防御率4.78に終わり、二度目の戦力外通告を受けました。
制球力が課題ですが、二軍の試合を見ると、140キロ後半の速球を投げ込んでおり、現役続行をしてほしい投手です。
U-18代表ベストナイン・韮澤雄也は持ち味のバットコントロールを発揮できるか
3人目は広島・韮澤 雄也内野手(花咲徳栄)です。韮澤選手は下級生の時から花咲徳栄の正遊撃手として活躍し、3年になるとドラフト候補として注目されます。ドラフト候補に挙がる選手は、ほかの選手と比べてグラウンドでのオーラというのか、存在感が違います。3年春の埼玉県大会で韮澤選手を見た時もそれを感じました。
準々決勝・東農大三戦でヒット性の当たりを阻止したファインプレーには、ドラフト候補ならではの華がありました。惜しくもこの試合で負けましたが、スカウトたちが熱視線を送るのも納得のプレーでした。最後の夏は埼玉大会で26打数10安打の活躍を見せ、5年連続の夏の甲子園出場に貢献。甲子園では3打数1安打に終わり初戦敗退に終わりましたが、攻守の総合力の高さを評価され、U-18代表に選出されました。
韓国で行われたU-18では29打数10安打の活躍をみせます。大会期間中に打撃練習を見た際の、大振りせずに丁寧に広角に打ち分けている姿が印象的でした。金属から木製バットに切り替えた高校生打者はヘッドが走らずに凡フライになることが多いのですが、韮澤選手は正確にボールを捉えていました。
またこの大会、韮澤選手はショートではなく、ファーストでスタメン出場。ほとんど経験がないようですが、なんとかこなしていました。そして大会を終えると、一塁手のベストナインを受賞します。表彰式後、「守備は上手くないですし、おそらく打撃で評価されたと思います」と語り、また一塁の経験についても「もしプロにいくことがあれば、一塁をやることは絶対にあると思います。そういう経験ができたのはプラスになりました」と前向きに捉えていました。
2019年のドラフトでは広島から4位指名を受け、高卒4年目の23年には45試合に出場しますが、打率.140と低打率に終わり、今年は一軍出場がなく、二軍戦でも打率.195と思うような打撃は発揮できませんでした。個人的にはバットコントロールの良さに惹かれた選手の1人。まだまだやれる選手だと思っています。
初めて選手会主催となる今年のトライアウト。『高校野球ドットコム』でも速報でお届けする予定です。参加者には甲子園を沸かせたスターたちや、当時のドラフトの主役となった選手たちが多くいます。多くの選手の雄姿を取り上げていければと思います。