森岡亮太の進化が加速している--。優雅なボールさばきと敵のディフェンダー網を突き破るキラーパスに加え、ポーランドでは相…

 森岡亮太の進化が加速している--。優雅なボールさばきと敵のディフェンダー網を突き破るキラーパスに加え、ポーランドでは相手ゴール前でのすごみが増し、ベルギーではヘディングシュートという武器を得た。



ベルギーでの活躍が認められ、3年ぶりに代表復帰を果たした森岡亮太

 ベルギーで森岡は「古典的な10番」と称されることが多い。だが、その実態は180cmの長身を活かした「現代風にアレンジされた古典的な10番」だ。

 10月14日付の『ヘット・ニーウスブラット』紙が森岡のインタビューに丸々4ページを割いたことでもわかるように、ベルギーメディアは森岡の活躍にゾッコンだ。

 11月6日付の『ガゼット・ファン・アントウェルペン』紙の1面トップでは、森岡がチームメイトとゴールを喜ぶ写真がメインで扱われた。さらに10面に掲載されたワースラント=ベフェレンvs.ロイヤル・エクセル・ムスクルンのマッチレポートには、『7ゴール8アシスト。森岡亮太はベルギーとの親善試合に向けて完全に準備が整った』という大きな見出しも。その記事では、ヘディングシュートで先制点を決めた森岡の活躍と、11月14日にブルージュで行なわれるベルギー戦への期待が報じられている。

「森岡亮太は今季のセンセーション。代表復帰はベフェレンでの大活躍のご褒美だ。7ゴール8アシスト--。この数字はベフェレンの全ゴール(31ゴール)のほぼ半分に絡んだことになる。ベルギーリーグでここまで結果を残した日本人は他にいない」(『ガゼット・ファン・アントウェルペン』紙から抜粋)

 ベルギーリーグが開幕してまだ3ヵ月。新たな地でこんなにもスムーズに森岡が適応できたのは、単に技術の高さばかりではなく、ベフェレンというチームにうまくフィットしたこと、『フットボールとは考えるスポーツである』と信じる彼の思考力、そしてポーランドで挫折と成長を経験したことなどが挙げられるだろう。

 ポーランド時代の森岡には、忘れられないゴールがある。

 2016年2月、森岡はシロンスク・ヴロツワフの一員としてポーランドリーグでデビューを飾った。だが、3月5日のザグウェンビェ・ルビン戦の前半だけでベンチに下げられると、翌週のコロナ・キェルツェ戦から指揮を執り始めたマリウス・ルマク監督に呼び出しを受け、こう告げられたという。

「お前はポーランド語が話せないから使いづらい」

 3月19日のルフ・ホジューフ戦でも出場機会は与えられず、森岡は「ポーランドまで来て、なんで俺はベンチ要員になっているんだ」と悩んだ。

「新しい監督になってから、ポーランド語を話せない外国人選手はレッスンを受けないといけませんでした。ただ、そのレッスンは英語で行なうのですが、あのときの自分は英語もわからなかった。『これじゃあ、いつまで経っても試合に出られない。きついな……』と思いましたね」

 ところが4月1日のレフ・ポズナン戦で、森岡に転機が訪れる。試合前の戦術練習でも控え組だった森岡は、「ベンチだろうな」と思って試合当日を迎えていた。ところがロッカールームに入ると、その日の戦術を説明する用紙に、セットプレーのキッカーとして『10』という森岡の背番号が書かれてあった。

「あっ、俺、試合に出るんだ」と気づいた森岡は、大急ぎで準備を始めたという。

「『10』という番号を見た瞬間、『ここでやるしかない』と思いました。チームはパワー頼みのサッカーをしていて、スタジアムでもファンのため息が漏れていた。『そんなチームで俺は……』と、そうネガティブに考えていた時期でした。そこで急にチャンスがやって来た。『俺が上に上がれる選手だったら、絶対にここで結果が出る』と、自分に言い聞かせたんです」

 試合開始10分、ペナルティエリア内で左からのクロスを受けた森岡はファーストタッチでミスを犯してしまう。しかし幸運にも、ボールは味方フォワードに当たって森岡のところにふたたび戻ってきた。森岡は冷静にニアサイドへシュートを放ち、これが値千金の決勝ゴールとなる。

「そこから9試合で7ゴール。一気に(ポーランドリーグ内での)評価が上がりました」

 それまでの森岡のシーズンキャリアハイは、ヴィッセル神戸時代の2013年(J2)と2015年(J1)の5ゴール。その数字をポーランドリーグの1年目、それもたった半年で塗り替えた。そして翌年、森岡は8ゴールを記録し、自身の記録を更新している。

「自分のプレースタイルが変わりました。ポーランドでは『チームがうまくいくように味方をサポートし、ゲームを作って、最後にパスを出す』ということを、まったくしなかったんです。そんなことをしても、絶対にどこかでボールを取られてしまうし、いくらサポートしても誰からも評価されないから。だから、点を獲るしかなかったんです」

 シロンスク・ヴロツワフでのポジションはトップ下だった。しかし、実際の試合では「2トップのように前線に張っていた」と森岡は振り返る。

「センターフォワードの選手がロングボールを落とし、そこから自分が一度サイドに出して、センタリングに対して走っていきました。『(ペナルティエリアの)中に入って、何とかそこでゴールを決めてやろう』という気持ちだったんです。日本では、点を獲っていなくても評価される。だけど、こっちでは攻撃的な選手の評価はゴールのみ。ポーランドでは、アシストすら評価されませんでしたから」

 そんな森岡の姿を、ベフェレンのスカウトはしっかりとチェックしていた。

「いい選手だが、ポーランドのサッカーと合ってない。しかし、ウチのチームなら森岡はフィットする」

 そのスカウトの慧眼(けいがん)どおり、森岡は見事にフィットしてみせた。ポーランドでは放棄していた「チームが機能するように味方をサポートし、ゲームメイクし、チャンスを作る」というプレーをベフェレンで披露している。さらに森岡は、ゴールゲッターとしても進化し続けているのだ。

「ベルギーに来て、めっちゃ楽しいです。『サッカーをする』という意味で、みんなのレベルが高い。しっかりとボールをつなぎ、(森岡がトップ下として位置する)真ん中にもボールが入ってきますし」

 ハリルホジッチ監督は「森岡のことは知っていたが、興味はなかった。ベルギーに行ってから気になり始めた」と言った。本人を前に「失礼かも」と思いながら、森岡にハリル発言の感想を求めてみた。

「ステップアップのつもりでベルギーに来たので、個人としては結果を出し続けるしかないです。何ていうんですかね……代表に入りたいからベルギーに来たというよりも、ステップアップのためにベルギーに来て、ここで結果を出したら代表というのがついてきたという感じです。

『ポーランドにいたときは興味がなかった』。それはしょうがないでしょう(苦笑)。ヨーロッパの他国のチームの人だって、『ポーランドの選手? 見に行くの、遠いわ』というイメージがありますから。やっぱり難しいでしょう」

 森岡は以前、「やっぱり海外には出てみるものですね」と言ったことがある。うまくいかないときに己と向き合い、結果を残してステップアップし、よりよい環境で自身を高めていく--。その成長サイクルを、今の森岡は肌で感じているのだろう。