昨年、独立リーグから計10人の選手がドラフトで指名されたが、そのほとんどは育成で、本指名は四国アイランドリーグpl…
昨年、独立リーグから計10人の選手がドラフトで指名されたが、そのほとんどは育成で、本指名は四国アイランドリーグplus(四国IL)から阪神に6位で指名された福永春吾ただひとり。ところが今年のドラフトでは9人中6人が本指名され、伊藤翔(徳島インディゴソックス)は西武から3位で指名を受けた。

石川ミリオンスターズからは(写真左2人目から)寺岡寛治、寺田光輝、沼田拓巳の3人がドラフトで指名された
なかでもルートインBCリーグの石川ミリオンスターズは、寺田光輝(DeNA6位)、寺岡寛治(楽天7位)、沼田拓巳(ヤクルト8位)の3投手が本指名を受けた。1球団から3人の本指名が出たのは独立リーグ初の快挙だった。
筑波大出身の寺田は、大学時代まで目立った実績はなかったが、「野球をあきらめるため」に独立リーグの門を叩き、その才能を開花させた。寺岡は大学から社会人入りしながらもドラフトにかからず、最後の望みを託して今シーズン石川に入団した。
そして沼田は、大学を中退し、社会人クラブチームに入団したあと、1年を経たずしてロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約。しかし、これが日本球界の”掟破り”と判断され、アマチュア球界から「出入り禁止」となっていた。
石川ミリオンスターズの発足以来、代表取締役社長として独立リーグの門を叩く若者を見続けてきた端保聡(たんぼ・さとし)は、今回の大量指名にも浮かれることなく、こう語る。
「今年は全体的にドラフト候補選手が少なかったらしいので、これを維持できるかは難しいところですが、選手のレベルが上がっているのは間違いないと思います。昨年も、育成ですが3人が指名され、そのあと問い合わせが殺到したんです。いい選手が集まってきているのは確かですね。社会人野球出身の選手も増えています。彼らは基礎が出来上がっていますから、野球はもちろんですが、ほかの部分でも良き見本になってくれています」
近年、”プロ(NPB)への近道”として、独立リーグに進路を求める選手が増えている。先述した西武3位の伊藤もそのひとりだ。伊藤は横芝敬愛(千葉)を卒業後、大学からの誘いがあったが断り、独立リーグへと進んだ。そして1年でドラフト指名という夢を叶えたのだ。
草創期の独立リーグは、行き場をなくした”野球難民”が集まる場所という印象が強かった。四国ILが発足した2005年に何度か足を運んだが、茶髪、細眉の選手たちがいかにも練習のための練習という感じで繰り返す試合前のシートノックの風景からは、正直”プロ予備軍”と呼ぶには無理があった。
もちろん、そのなかにはどうしてもNPB挑戦をあきらめきれない野球エリートの姿もあったが、2007年以降、雨後の筍(たけのこ)のように全国に独立リーグが乱立するようになると、選手のレベルは全体的に低下。アマチュア時代に何の実績もない選手も加わるようになった。
そんななか、トップ選手のレベル向上に大きな役割を果たしたのが、NPBファーム(二軍)との交流戦だった。NPBとの対戦は、目標を明確にすると同時に、足りないものを自覚する貴重な機会となった。また、NPBスカウトたちにとっても、独立リーグの選手たちの実力を目の当たりにできる絶好の場となった。端保もその存在の大きさを認める。
「今では巨人の三軍や楽天二軍との試合は公式戦扱いでやっています。NPBの選手と対戦することで、目標もはっきりしますし、自分がどのレベルなのかを知ることができる。昔から対戦させてもらっていますが、我々を見る目が変わってきたように思います」
この交流戦の効果を最も実感しているのがBFL(ベースボール・ファースト・リーグ)だろう。前身である関西独立リーグのゴタゴタを引きずっていたこともあり、「プロリーグ」を名乗りながら選手に報酬も支払えない状況で、チーム数もわずか3つしかない。正直、このリーグで残した成績がスカウトの参考になることはない。
だが、今年のドラフトで兵庫ブルーサンダースの田中耀飛が楽天から5位指名を受けた。リーグ戦で15本塁打を放ち、三冠王を獲得するなど、圧倒的な数字を残したが、スカウトの目に留まったのは9月に行なわれた楽天との交流戦。ここで田中は2試合連続本塁打を放ったのだ。
BFLは、四国ILとBCリーグで結成した日本独立リーグ野球機構に加盟していない。そのため両リーグに認められている社会人や大学と試合ができない “孤立状態”が続いており、NPBとの交流戦は数少ないアピールの場だ。関西を拠点とするBFLは、今季も3回にわたり選抜チームを仙台にまで派遣して交流戦を行なった。田中の指名については、これが功を奏したかたちとなった。
交流戦の効果もあり、少なくともレギュラークラスに関しては独立リーグのレベルは確実に上がっている。草創期の独立リーグを知るロッテの山森雅文スカウトは次のように語る。
「リーグが発足した当時は、速い球は投げるけど、どこにいくかわからないという選手が多かったですね。でも今は、速いだけでなく、まとまりもあります」
今年ロッテは、ドラフトで高校時代は陸上部だったという異色の外野手、BCリーグ・富山GRNサンダーバーズの和田康士朗を育成ドラフト1位で指名した。山森は、直接の担当ではなかったが、和田の印象についてこう語る。
「とにかくバットをしっかり振れていました。フォロースルーも大きいですし。野球経験は少ないかもしれないけど、球団と担当者のなかで『育てることができる』と判断したのだと思います。19歳でしょ。まだまだ伸びしろはありますから」
BCリーグでは、来シーズンから”定年制”を導入するという。オーバーエイジ枠を各チーム5とし、26歳の年齢制限を設けることで「NPBという夢に区切りをつけさせる」というのだ。
山森スカウトは「指名するにあたり、年齢は絶対条件ではない。各球団の事情にもよるが、使えると判断すれば20代後半の選手だって獲得する」と言うが、”伸びしろ”を考えると、今回の措置は現実的なものと言えるだろう。
リーグとしては、経験豊富だけど、もう先の見込めない”ベテラン”がポジションに居座っている状況を打破し、より若い選手に出場機会を与えたいという意図がある。その一方で、主力に引導を渡すことでプレーのレベルが低下するのではないかという懸念もある。それでも端保は、「育成という原点に戻るもの」と前向きにとらえている。
発足当初は、球界の本流を外れた選手も多く、学生野球や社会人野球の組織から「ウチに不義理をして出て行った選手を指名したら、今後ウチからは選手を出しませんよ」という、暗にNPB側に忖度(そんたく)を求める圧力もあったという。
またNPBサイドには「行き場を失った選手に大枚を支払うことはない」と足元を見る風潮もあった。しかし、独立リーグが年々洗練され、レベルアップしていくなか、即戦力を期待できる有望選手を他球団にさらわれないためには、育成ではなく本指名せざるを得ない状況になっている。
もはや独立リーグはアウトローな存在ではない。アマチュアからNPBへの”パイプライン”として確固たる地位を確立しつつある。