全日本大学駅伝で2区を走った小池莉希(3年) photo by SportsPressJP/AFLO【目標順位を下方修正…


全日本大学駅伝で2区を走った小池莉希(3年)

 photo by SportsPressJP/AFLO

【目標順位を下方修正するもクリアできず】

 全日本大学駅伝(11月2日)が終わったあとの待機所。7位の創価大は、来年のシード権こそ獲得したものの、目標の「5位以内」を達成できず、選手たちの表情は悔しさに満ちていた。

「学生三大駅伝」の初戦である出雲駅伝(10月13日)では、青山学院大、駒澤大、國學院大、中央大、早稲田大の"5強"という前評判のなか、選手たちが躍動し、過去最高の3位に入った。

「走ってくれた6人が、自分の力を出しきってくれた結果だと思います」

 榎木和貴監督も、会心の笑みを浮かべていた。

 それから3週間後、全日本大学駅伝の前日記者会見で、榎木監督は目標を「(三大駅伝)3位以上」から「5位以上」に下方修正した。出雲の結果から考えれば、全日本も同じ目標を掲げるだろうと見ていただけに意外だった。

「選手層の違いが大きいです。例えば、駒大は出雲で走っていなかった佐藤圭汰選手(4年)が入ってくるのは大きなアドバンテージになります。一方で、我々の7、8番目の選手は他校と比べると力が落ちてしまう。そのことを踏まえると、出雲より(2区間多い全日本は)厳しい結果になるのかなと。ただ、4区の織橋(巧・3年)のところまで3位以内、もしくは5位以内で来てくれると、後半の7区、8区には走れる選手がいるので(目標達成の)可能性が出てくるのかなと思っています」

 榎木監督は期待をこめて、そう言った。

 果たして、レースは1区の石丸惇那(4年)が区間8位ながらトップと5秒差。2区の小池莉希(3年)はすぐに先頭集団に追いつき、そこから力をため、ラスト勝負でさらに順位を上げると思われた。だが、途中で前に出たり、下がったりと、不必要な場面での出力が目立ち、5位で中継所へ。期待の大きかった3区、スティーブン・ムチーニ(3年)も不発に終わり、6位に後退したが、4区の織橋が目標圏内の5位に順位を戻した。

 榎木監督が「他校との力の差が大きい」と見ていた5区と6区では、5区の衣川勇太(1年)が区間6位の走りで、なんとか5位をキープ。6区の榎木凜太朗(2年)は6位に下げたものの、5位の青学大とは4秒差で襷をつないだ。だが、7区の野沢悠真(4年)は7位と順位を下げ、8区の山口翔暉(2年)も巻き返せず、7位のまま終わった。

【吉田響の抜けた穴をどう埋めるのか】

「厳しい結果ですね。現実を突きつけられた感じがします」

 レース後、2区を走った小池は、神妙な表情でそう言った。

「全日本に向けて、出雲を走った6人はまとめきれるというか、計算が立ったと思いますけど、残りふたりのメドがなかなか立たなかった。そのことを考えると、(目標)5位(以上)への下方修正は妥当だったと思いますし、それすら達成できなかったので力不足を感じています。このままだと『箱根3位(以上)』という目標は非常に危ういというか、かなり厳しいです」

 ひとりで大きな貯金をつくってくれた大エースの吉田響(現・サンベルクス)が卒業した今季、創価大はその穴を埋めるべく、選手個々のレベルアップに注力。トラックシーズン、出雲駅伝と結果を出してきた。実際、出雲組の6人は"5強"の主力と比べても遜色はないだろう。

 だが、その6人がそろって力を発揮できなければ、また、7人目以降の選手の押し上げがなければ、チームとして吉田響の穴を埋めきれない。小池はこう語る。

「昨年の全日本は4位だったのですが、今回は響さんのような大エースがいないので、順位を押し上げられず、どんどん後退せざるを得ない駅伝になってしまいました。響さんの不在がいろんなところに影響して、結果にも出ていますし、やらなければならない中間層の底上げがうまくいかなかった。僕ら上級生も、1区間でもトップを獲るとか、そういう勢いのある走りをしないと"5強"と言われる大学には歯が立たない。そこは僕自身も大きく反省しています」

 その小池について、榎木監督は「響のように力でねじ伏せる走りができていませんが、まだ成長の余地がある」と今後に期待をかけるが、主力と中間層の差と、チーム内の競争意識について尋ねると、厳しい表情を浮かべた。

「(全日本の5区と6区は)出雲以降、タイムトライアルや10000mのレースを見るなかで選考したのですが、自分で勝ち取ったというよりも、こちらが拾い上げないといけない状況でした。本来はもっと競争の激しいところから選手を選べるチームづくりをしないといけない。それができなかったのが、この結果につながっていると思います」

 ただ、箱根に向けて、期待できる材料もある。今後のレースや記録会で中間層の競争、選考が本格化していくなか、これまで故障を抱えていたり、調子を落としていたりして、今季の駅伝に絡めていない選手たちが復帰する見込みがあるからだ。例えば、昨年の出雲と全日本を駆けた黒木陽向(4年)、前回の箱根1区に出場した齊藤大空(3年)、同じく前回の箱根8区を走った石丸修那(2年)。さらには山(5区、6区)の候補もいる。彼らがそろえば、戦えるオーダーを組める。

【「ここなんですよ、うちの問題は」】

 一方で、出雲を走った6人のレギュラー陣について、刺激がない状態は健全ではない。過度の競争は消耗するだけだが、かといって"凪"のままではチーム自体も成長が望めない。

 小池は、こう語る。

「出雲組の6人は『俺らは全日本も走るよ』と、出るのが当たり前の意識になっていました。ここなんですよね、問題は。駒大や國學院大、青学大の選手たちは、いつ自分がレギュラーを外されてもおかしくないという自覚と危機感を持ってやれていると思います。

 でも、うちは競争がほとんどなく、その意識が芽生えてこない。自分が奮起すればいいのですが、それだけではチーム全体は盛り上がらないんです。やっぱり競争しているなかで、(選手個々が)『自分がやるんだ』とならないとチームは成長しないですし、駅伝では勝てないんですよ。もっとそういう危機感を持って、取り組んでいかないといけないと思います」

 小池が放つ熱は、チームを発火させるだろうか。ここでほかの選手が何も感じなければ、箱根でも目標の下方修正を迫られることになる。

 榎木監督は、選手個々の"箱根への想い"が試されると見ている。

「出雲、全日本と、ふたつの駅伝を終えて、選手自身が感じたことが多々あると思います。それを練習に落としこんで、どれだけ苦しいことに耐えていけるか。この2カ月は生活のすべてを箱根駅伝に注ぐくらいの意識でやっていかないといけない。そこが足りていないから7位という結果になる。選手がどう受け止めて箱根までやっていくか、ですね」

 全日本での苦い結果を受け、創価大はどう変わるのだろう――。