8月にメジャー初昇格…WS第6戦では“奇跡のプレー”を生んだ ロサンゼルスへの愛を語った翌日、他球団への移籍が決まった。…
8月にメジャー初昇格…WS第6戦では“奇跡のプレー”を生んだ
ロサンゼルスへの愛を語った翌日、他球団への移籍が決まった。ドジャースは6日(日本時間7日)、ジャスティン・ディーン外野手を40人枠から外すアウトライトとしたと発表した。その直後、ジャイアンツがクレーム(指名)して同地区のライバルへ移籍。28歳の苦労人ルーキーは激動の1年を送っている。
ディーンは2018年ドラフト17巡目(全体502位)とブレーブス入りし、その後も移籍することなく昨季まで在籍した。その後FAを自ら選択し、ドジャースとマイナー契約を結んだ。3Aの90試合で打率.289、6本塁打、OPS.808、27盗塁の好成績を残し、8月8日(同9日)のブルージェイズ戦で守備固めからメジャーデビューを果たした。
レギュラーシーズンでは18試合に出場したが、打席数はわずか2。代走と守備固めが主戦場だった。そんな“伏兵”が主役になった試合がある。ワールドシリーズ第6戦だ。
ディーンは2点リードの9回から守備固めで出場。無死一塁からアディソン・バーガー内野手の打球は左中間へ飛んだ。必死に追いかけたディーンはフェンス手前でクッションボールの処理をしようとしたが、打球は跳ね返って来ず。左翼のエンリケ・ヘルナンデス内野手の声掛けもあり、両手を挙げて打球がフェンスに挟まったことをアピールした。
打者走者はホームまで激走し、場内は同点になったかと思い沸き立ったが、ディーンのアピールもあって審判団はエンタイトル二塁打と宣告。走者が残る形となった。これが大きかった。その後、内野フライ、左飛、そして二塁へ送球しての併殺が生まれ、ドジャースが激闘を制した。ディーンの好判断がなければ試合に負けていた可能性もあり、“影のヒーロー”として称えられた。
8月に昇格…「出場機会が少なくてもいいから、勝利に貢献したい」
連覇後に行われた優勝セレモニーで、ディーンにも大歓声が送られた。その後、5日(同6日)には市内でウィル・クライン投手とともにファンイベントを実施。大勢のファンが詰めかけていた。地元メディア「The Dodgers Bleed Los Podcast Network」はディーンへのインタビューを実施。世界一への胸中を楽しそうに話していた。
ワールドシリーズ・チャンピオンの響きについて「全然飽きませんね(笑)。最高の響きです。まだ現実味がない感じですが、本当に嬉しいです」と笑顔を見せた。そして、“伝説のプレー”について振り返り、「本当に珍しいプレー」「角度もスピードも完璧じゃないとあそこにはまらない。彼(バージャー)は本当に完璧に打ちました。再現不可能な一打ですね」と回顧した。
プロ入りから8年目で初めてメジャーに到達した。ディーンは「最初はただ感情が溢れましたね。マイナーで長い時間を過ごしてきたので、とにかく嬉しかったです」。そして自らの役割を理解し、「チームの役に立ちたいと思いました。どんな形でもいい、出場機会が少なくてもいいから、勝利に貢献したい。だから、出番が来たときは全力でやるだけでした。このチームは偉大なチームで、自分もその一員になれることが誇りでした」と胸を張った。
ドジャースは時に金満球団と呼ばれ、連覇を果たした後に球界内外から批判の声も上がった。しかしディーンは「才能だけじゃ勝てないというのを僕たちは理解していました」と語る。「スター選手がいても、全員が同じ目標に向かって努力しなければならない。誰であっても毎日しっかり準備して、ディテールにこだわってプレーする。その積み重ねがチャンピオンを生むんです。全員がハードワークして、全員がチームのために動いていました」と、ドジャースの一員として感じた献身性に感動していた。
インタビューの最後に「ジャスティン。改めて、ワールドシリーズ・チャンピオンおめでとう!」と言われると、ディーンは照れくさそうに「ありがとう! 一生この肩書きは消えませんね(笑)。LAを愛してます。ワールドシリーズ・チャンピオンです」とファンに感謝を届けた。その1日後、ディーンはドジャースでは“なくなった”。しかし、たった3か月でも、その存在は確かにファンの心に刻まれ、永遠に色褪せることはない。(Full-Count編集部)