今も記憶に新しい、雨のインテルラゴスで見せた予選3位(2024年)の快走。 今年のサンパウロもまた、予選は雨の予報とな…

 今も記憶に新しい、雨のインテルラゴスで見せた予選3位(2024年)の快走。

 今年のサンパウロもまた、予選は雨の予報となっている。

「そうですね、去年はいい思い出がありますし、ウェットでのドライビングの仕方もわかっています。去年のレースがよかっただけに、自信を持って臨めるのは確かですね。

 もちろんマシンが違うので、どんな挙動を示すかは気にしていますし、それは今回に限らずどのレースでもそうです。今週はスプリント週末なので、FP1でマシンに適応して、スプリント予選でどこまでパフォーマンスを引き出せるかがカギですね」


自信を深めてサンパウロにやってきた角田裕毅

 photo by BOOZY

 サンパウロGPに臨む角田裕毅(レッドブル)は、大荒れになりそうなこの週末に向けて不安はなさそうだった。

 自信を持って臨めるのは、前戦メキシコシティGPでさらなる自信をビルドアップすることができたからだ。

 たしかに結果は、まだ十分とは言えない。前回も予選はQ2で敗退し、決勝は入賞圏外11位に終わった。

 しかし、予選はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と0.211秒差、決勝もピットストップのミスがなければ10位か9位、フェルスタッペンのために後続を抑えるべくステイアウトしたチームプレーがなければ9位が狙えたレースだった。

「マックスと僅差になったのは初めてではないですけど、ショートランもロングランも、両方ともがあそこまで僅差になったのは初めてだったと思います。そういう意味ではいい傾向だと思いますし、このままトライし続けるだけです。

 マックスとのギャップはかなり小さかったとはいえ、まったく同じペースで走れているわけではありません。彼はスーパーなドライバーで信じられないくらい限界までマシンの速さを引き出しているので、僕も彼のやり方を参考にして学び、さらにパフォーマンスを高めようとしています。簡単ではないですけど、ベストを尽くすだけです」

 角田の速さと技術的理解度を知っているから、7年も前から目をかけてきたヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツアドバイザー)や、昨年からのボスであるローラン・メキース代表は、角田が結果を出してくれるのを待っている。だからこそ、当初はメキシコシティGP後に予定していた来季シートの決定を1カ月遅らせることが決められた。

【1/1000秒でも速く走れるように】

 ただ、フェルスタッペンのようにマシンの限界ギリギリまで性能を引き出すには、マシンに対する理解度と自信が必要不可欠だ。

 それはレッドブル昇格直後から角田が課題として挙げてきたことで、一朝一夕に同等レベルまでいけることではないのは自明だ。だからこそ焦っても仕方がないし、自分が今やれるのは、ほんの少しずつでも前に進み続けることだと、角田はわかっている。

「シーズン途中で移籍して、毎回初めてのマシンと初めてのサーキットの組み合わせで学んでいかなければならなかった。そういう状況で自信を深めていくのは簡単ではなかったですし、まだ100パーセントに近づいているとさえ言えないですね。

(マシンをフルに理解できていれば)自分自身がどのくらい自信を持って臨めるかはわかっていますし、それと比べると90パーセントとか85パーセントくらいですかね。でも、徐々に(理解は)深まってきていると思います」

 シーズン中盤からずっと抱えてきたロングランの問題がアゼルバイジャンGPから解消したことで、ロングラン対策のために犠牲にせざるを得なかったショートランのセットアップや、パフォーマンス自体に再び目を向けられるようになった。

 それと同時に、フロアやフロントウイングといった新しいパーツも、フェルスタッペン車から1〜2戦遅れで順次投入された。着実にフェルスタッペンとのタイム差は縮まってきている。

 だからこそ角田は、今週末のサンパウロGPに向けて不安におびえる必要などない。今までどおりのアプローチでマシンへの理解と自信をビルドアップし続け、1/1000秒でも速く走れるようにプッシュし続けるだけだ。その裏側では、チームのエンジニアたちと努力を続けている。

「ブレーキングをしてターンインしていくすべてのフェーズで、マシンの挙動を最大限に生かせるかどうか。そこはマシンに対してどれだけ自信を持てるかによりますし、レースごとにどんどんよくなってきています。

 アプローチとして今週末に何か特別なことをやるわけではありませんし、何か変えるつもりもありません。ただ今回はスプリント週末なので、FP1で可能なかぎり早くそこに適応していけるようにしたいなと思っています」

【天候が目まぐるしく変わるサンパウロ】

 金曜は気温が27度にも達する夏日だが、スプリントレースと予選が行なわれる土曜は雷雨。そして決勝日は気温が20度にも満たない曇天と、今週末のサンパウロは天候が目まぐるしく変わりそうだ。

 土曜の走行データは決勝にほとんど活用できないため、金曜のうちにどれだけ入念な走り込みとデータ収集を果たせるかにかかっている。

 昨年は角田が予選3位から表彰台圏内を争っただけでなく、フェルスタッペンが17番グリッドから大逆転優勝する快走を見せた。

 今年のサンパウロは、どんなドラマが待っているのだろうか。