「スターダム」なつぽい インタビュー後編(中編:スターダムに移籍後、なつぽいが繰り広げた中野たむとの抗争 記者会見での「…

「スターダム」なつぽい インタビュー後編

(中編:スターダムに移籍後、なつぽいが繰り広げた中野たむとの抗争 記者会見での「パスタ事件」の真相も語った>>)

 抗争を経て中野たむとの因縁に決着をつけ、コズミック・エンジェルズへの移籍を決断したなつぽい。しかし今度は、アクトレスガールズ時代からのもうひとりの宿命のライバル、安納サオリがスターダムに参戦する。

 長期休業などもありながら、今年5月には安納サオリとともにデビュー10周年興行を大成功させたが......その後、Sareee(サリー)から記者会見投げかけられた「くすぶってる」という一言で、再びプロレス魂に火が灯る。


今年5月、デビュー10周年の興行を行なったなつぽい

 photo by Tanaka Wataru

【安納サオリとのインディアン・ストラップ・マッチ】

――なつぽい選手がコズミック・エンジェルに加入し、安納サオリ選手がスターダムに参戦。それもアクトレス時代から続くストーリーですね。

「たむちゃんとのケージマッチに続いて、今度はサオリとインディアン・ストラップ・マッチですからね」

――そんなにデスマッチが好きなのかと......。

「私は好きじゃないですよ!(笑)。本当はやりたくないことばっかり。その試合は、ある記者会見中に、ロッシー小川さんが言ったんです。でも当時の私は、サオリと顔を合わせることも嫌でした」

――インディアン・ストラップ・マッチは、革の紐で手をつなぎ、最後にリングを一周して勝負を決める壮絶な試合。女子プロレスでは初めてでしたね。

「私、インディアン・ストラップ・マッチ自体、知らなくて(笑)。会見後に調べて、初めて知りました。試合は、場外で紐を引っ張られて鉄柱に頭をぶつけられたり、首回りがアザだらけになったし......でも、身体はボロボロでしたけど、戦ってわかり合うのがプロレスラーなのかなって思っちゃいます」

【休業を経てデビュー10周年興行へ】

――しかし、激しい戦いを繰り返したことで疲労が蓄積し、2023年10月から約5カ月間、欠場することになります。

「たむちゃんとの抗争の最中、一度、脳震盪で2週間休みました。そこからも、ごまかしながら戦っていたけど、積み重ねていたものが出ちゃいましたね。

 一番ひどかったのは、朝起きる時に、腕で自分の頭を支えないと起き上がれないこと。とにかく首の筋肉が機能しなくて、動かすと"キーン"と首筋に痛みが走りました。受け身を取る際も頭から落ちてしまうから、『いったん休憩しよう』となりました」

――半年間で、どのくらいよくなったんですか?

「首はよくなったけど、完治はしていません。『これ以上、休めない』と復帰したんですけど、気持ちの面ではめちゃくちゃリフレッシュしました」

――リング復帰は怖くなかったですか?

「私は目標を決めて、先の未来を想像するとワクワクするんです。逆に、ワクワクしないと走れない。欠場した期間に、私のやりたいことや目指すべき目標、走るべき道が明確に見えてきました。いろいろ考えることがリフレッシュになって、首のケガで気持ちが落ち込むより、ワクワクが勝ったので復帰しました」

――2025年5月31日、なつぽい選手と安納サオリ選手の自主興行「なつ&さおりー 来たよ。来たね。10周年。〜うちらの足跡〜」を開催しました。

「スターダムの大田区総合体育館史上、一番お客さんが入ったんですよ(2837人)。本当に参加してくれた選手やスタッフ、そしてお客さんには感謝してもしきれません。コンセプトは『10年間、関わってくれた人たちに、感謝の気持ちを伝えたい』。大事な人たちに出場してほしかったので、対戦カードもさまざまな思いが込められたものになりました。

 芸能活動は、私たちにとって避けて通れないテーマです。通常のプロレス興行とは一線を画し、私たちだからこそできる独自の試みとして、あえて芝居の要素を導入するという新たな挑戦もしました。私は、女優との『二足のわらじ』というのをずっと言っていたし、(元アクトレスガールの)サオリと一緒に『私たちがやってきたのはこれです』と、この10年間を体現したかったんです」

――いつから準備したんですか?

「2024年の11月に、サオリから焼肉屋さんで『やらない?』と提案があって。その日が"いい肉の日(11月29日)"でした(笑)。そこで『やろう』と決めて、次の週には会社に企画書を提案。怒涛の会議が始まりました」

【Sareeeからの「くすぶってる」の言葉に思うこと】

――11月10日の「Sareee-ISM チャプター9」で、なつぽい&橋本千紘vs Sareee&鈴季すず戦が決定。その記者会見で、Sareee選手から「(なつぽいが)くすぶってる」と言われましたね。

「たむちゃんとの因縁、ユニットの離脱、インディアン・ストラップ・マッチ......。あらためて振り返って、『こんなにずっと走っていたんだな』と。走っていると気づかないけど、追い詰められてるくらいの戦いが生きてる心地がして、楽しかった。確かにその感覚を、最近は見失ってる気がします。

 平和というか、『プロレスしてる!』という感覚になれなくて。たむちゃんや、サオリとドロドロした感情や因縁があり、バチバチしている時がプロレスラーとして楽しい。10周年からの約半年間、モチベーションをどこに向けたらいいのか、わからなくなっちゃったんですよ」

――今は、目標がない状態なのかもしれません。

「赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)という目標はありますが、ベルト云々ではない部分ですね。根本的に、夢中で燃え上がれないのを感じています」

――Sareee選手は、「くすぶっている気持ちは自分次第でどうにでもなる」というのを伝えたかったんでしょうか。

「記者会見の言葉やからもSareeeの愛を感じるし、それに応えないといけない気持ちもあります。Sareeeと向き合う時には、ただのチャレンジマッチみたいな戦いはしたくない。自分に自信をつけるためにも、周りを納得させるためにも、結果を残してからじゃないとSareeeと向き合っちゃいけないと勝手な縛りを作っていました。

 でも、Sareeeに『そんなことを言ってる場合じゃない。自分自身(の問題)だ』と言われて、『私の強みは"根拠のない自信だった"』と気づきました。何もできてないし、結果も残せていない。それでも勝手に自信に満ち溢れて、『やってやるよ!』みたいに思っている時こそ私らしいのかなって。ちょっと自分に気合が入りました。久しぶりに、デビュー戦の時の『私、天才じゃん!』という気持ちを思い出しました(笑)」

――そして11月7日、後楽園ホールより「ゴッデス・オブ・スターダム ~タッグリーグ〜」が開幕、安納サオリ選手と出場しますね。

「2023年11月、ゴッデスのタッグベルトを私の欠場で返上して以来、"なつ&さおりー"としての結果をしっかりと残せていません。今年は10周年ということもあり、10周年興行も大成功させてさらに絆も深まっている今、『そろそろ結果を残さないと』いう気持ちで燃えています! うちらはいつも色違いのものばかり持ち歩いてますけど、そろそろ"お揃い"を手に入れたいです!」

【プロフィール】

なつぽい

1995年7月19日生まれ、神奈川県出身。身長150cm。幼少期よりジュニアアイドルとして活動し、3歳から芸能事務所に所属。小学校から高校卒業まで約12年間、バトントワリングに打ち込み、全国大会にも多数出場。女優を目指すなかでスカウトされ、2015年5月31日に「万喜なつみ」としてプロレスデビュー。アクトレスガールズ、東京女子プロレスを経て、2020年9月にスターダムに電撃参戦。「なつぽい」に改名後、ドンナ・デル・モンド(DDM)に加入し、その後COSMIC ANGELS(現:meltear)に移籍。ワンダー・オブ・スターダム王座やハイスピード王座など、数々のベルトを獲得している。