尊敬する三浦監督に代わって新たにベイスターズを率いる相川監督(C)萩原孝弘三浦野球の継承という物語 今秋にDeNA時代と…

尊敬する三浦監督に代わって新たにベイスターズを率いる相川監督(C)萩原孝弘
三浦野球の継承という物語
今秋にDeNA時代となってから4代目の監督に就任した相川亮二。現役時代に横浜を離れ、巨人とヤクルトを渡り歩いた男と球団の物語は、「兄貴分」と慕う三浦大輔の下へ帰還したことから再開した。
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前任監督の三浦大輔は言わずと知れた“横浜のアイコン”。現役引退後も、長く球団フロントや現場でベイスターズに関わっており、25年にベンチコーチを務めた進藤達哉は「ずっと横浜のユニフォームを着続けてやってくれていたのは、三浦大輔という投手だったわけですからね」と、現役時代に阪神からの好条件のFAオファーを断り、横浜一筋を貫いた決断を改めて評する。
「私はチームが良い時に関わりましたけれども、その後も低迷した時期に関わった選手もいたわけで。どこの時代に関わったかにはそれぞれですが、やっぱり彼(三浦)が長年横浜というチームを背負っていってくれたというリスペクトみたいなものが、それぞれにあるのかなとは思いますね」
誰もが“ハマの番長”と慕う男の持つ求心力。そこに惹かれた一人である相川にとって「寮の時からお世話になっている兄貴分」とする三浦は特別な存在であった。4年前、14年ぶりにベイスターズに復帰した際には、「僕にとってコーチできることは幸せ」と三浦“監督”と共闘できる喜びを口にしていた。
「監督を男にするため力になりたい」の一心で三浦を支えた相川は、入閣初年度から最下位に沈んでいたチームをリーグ2位に押し上げる原動力となり、翌年にはヘッドコーチに昇格。指揮官の傍らで作戦を構築する辣腕を振るった。結果、24年のチームは3位からの下剋上を果たして日本一に輝くなど、「Aクラス常連チーム」と化した。
球団の命題であったリーグ優勝を掲げた2025年シーズン。その目標に届かず、2位フィニッシュながら、阪神に独走を許した責任を取り、三浦監督は辞任を決意した。その重責を担うのは弟分の相川亮に決定し、物語は新たなフェーズに進んだ。
相川監督誕生に対し、編成のトップを務める木村洋太社長は「継承路線というような形で当然、お願いはしています」とドラスティックな変革ではなく、三浦監督の作り上げた“基礎”を引き継ぐ意向を重要視すると説明する。
さらに「相川さんにおきましては、三浦監督と現役時代から一緒にやっていたということに加えて、オリンピックでも一緒に代表でした」と関係性も深いと力説した上で、「今のチーム状況は非常によくわかっているということと、コーチングスタッフとして優勝の経験があるというようなことを鑑みました」と内部昇格が球団のコンセプトに沿った選択だったと言葉を加えた。

早くも現場に立ち、秋季キャンプで若手たちの指導に汗を流す相川監督(C)萩原孝弘
捕手陣を立て直した指導力
新監督に求めるものは、ずばり三浦野球の継承。
「相川監督の背番号についてですが、三浦監督の路線を継承しながらも自分の色を出していくということを念頭に、今の80番に1つアクセントを加えるという意味も加えて、81番を継承して付けていただくこととなりました」
相川も託された番長の想いを背に、戦いに挑んでいく――。その体制づくりは、今秋に球団を去った人事のトップ・萩原龍大チーム統括本部長が掲げていた「監督が変わってもチームのビジョンは変わらない組織」が目標であるDeNAにとっても、最適な路線だった。
横浜に帰ってきてからの相川は、ベンチワークは光っていた。バッテリーコーチから作戦チーフコーチを経て、ディフェンスチーフコーチと名称こそ変わったが、試合前には捕手陣を指導する姿は日常の風景だった。
就任初年度の捕手陣は嶺井博希(現ソフトバンク)がFAで抜け、主に伊藤光と戸柱恭孝と若手の山本祐大で構成されていた。その当時に「選手は良い。ありがたいメンバー。バッテリーで問題があれば僕の責任です」と言い切っていた相川は、山本を侍ジャパンに抜擢されるまでに成長させ、「できれば、レギュラーキャッチャーを作りたい」との理想を実現させた。
また、24年の終盤に山本が骨折で離脱の憂き目に遭っても、伊藤と戸柱の両ベテランが貫禄の働きで穴をカバー。さらにドラフト1位のトッププロスペクトである松尾汐恩もメキメキ頭角を表すなど、こと捕手においては球界屈指の陣容にまで整えた。その指導力も、今回の指揮官に推挙された重要なポイントとなっていると推測できる。
秋季キャンプが始まり、指揮官としての活動も本格的にスタートした。だが、「今までと変わらないです」と積極的にコミュニケーションを取る相川の姿はコーチ時代と不変だ。
「逆にこういう立場によってそういうものがなくなっていく方が怖いので、スタッフの皆さんにもいつもで通りお願いしますと言いました」
そう自然体を強調する指揮官が掲げる秋のテーマは、「チーム全体、選手、コーチ、チームスタッフ、どういう野球をやっていくのかっていうのを本当にみんなで理解して秋季トレーニングを終えられる、そこがゴールになるのかな」。ここでもチーム一丸の三浦野球の踏襲を思わせるコメントを残している。
相川体制に求められているものは2つだ。兄貴分の果たせなかったリーグ優勝の達成。そしてDeNAの思い描く世界一の野球チームを具現化させること。決して達成が容易ではない目標となるが、新指揮官が内に秘める魂を解き放ち、勝利の女神を振り向かせるストーリーが、すでに始まっている。
[取材・文/萩原孝弘]
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