熊本大学の伝統行事「阿蘇耐久遠歩大会」が、開学記念日の1日に合わせてあった。前日の10月31日午後11時に阿蘇山上広場…

 熊本大学の伝統行事「阿蘇耐久遠歩大会」が、開学記念日の1日に合わせてあった。前日の10月31日午後11時に阿蘇山上広場の駐車場をスタートし大学の黒髪地区(熊本市中央区)までの61・5キロを歩くフルコースと、中間地点の新阿蘇大橋展望所(南阿蘇村)からのハーフコースに計441人が挑んだ。

 60回目の記念大会。熊本地震や新型コロナの影響で昨年まで規模縮小が続いていたが、10年ぶりに阿蘇山上広場からのコースが復活した。初めて卒業生の参加枠も設けられて盛り上がった。

 学生組織の熊本大体育会が主催。役員の70人が、スタート地点に参加者を運ぶ貸し切りバスの手配や、ルート各所での警備と安全確保などの運営に奔走した。実行委員長の教育学部4年、江上ひなさん(22)は「少ない役員みんなで複数の持ち場をかけ持ちした。力を合わせて乗り越えられ、感無量」と振り返った。

 薬学部で製剤設計学を専攻する博士課程2年の久保平悠斗さん(27)は、研究室の6人で参加し、若い後輩たちに先んじて13時間でゴールした。「気合の違いです」と余裕の表情。薬学部は大江地区に小さな単独のキャンパスがあり、普段は他学部との交流も少なめという。「大勢の学友と一体感をかみしめ、歩きながら喜びにひたった」と振り返った。

 完歩者はフルコースが269人のうち210人、ハーフコースが172人のうち169人だった。(伊藤隆太郎)

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 記者も「61歳で61キロ」を目指した。

 最初は、星空や風景を楽しみながら歩けた。オリオン座からの鮮やかな流れ星に、一緒に歓声を上げた。

 学生たちからは、何度も「OBさんですか?」と声をかけられた。気さくさがありがたかった。たぶん祖父母の世代にも近い参加者を珍しがってくれたのだろう。

 明け方近くに中間地点へ達するころから、若者たちのスピードに追いつけず途中で余裕を失った。元気な声でおしゃべりを絶やさない女子3人組に追い越された。運動部員でもなく、「たまたま同じアパートの隣同士」とのこと。はじける笑顔に若者パワーを感じた。

 事前に聞いていたのは「速い参加者は6~7時間でゴールする。平均的な到達時刻は正午ごろ。最後は夕方6時」というデータだ。痛み出した右足を引きずりながら、「自分はいま○○人目くらいかな……」などと、姑息(こそく)な計算ばかりが頭に浮かびつづけた。

 40キロを過ぎたあたりから、右足首の痛みが増した。次第にスピードが落ちて、ふと気づけば最後尾グループにいた。

 50キロのチェック地点を制限時間ギリギリで通過し、およそ14時間歩いたところでリタイアを申告した。「完歩したい」と悔やみつつ、ゴール地点へ先回り。健闘をたたえ合うにぎわいも取材できて満足だった。(伊藤隆太郎)