宇野昌磨アイスショー『Ice Brave2』京都公演・現地レポート前編『Ice Brave2』京都公演で『Gravity…
宇野昌磨アイスショー『Ice Brave2』京都公演・現地レポート前編

『Ice Brave2』京都公演で『Gravity』を演じる宇野昌磨
Photo: Toru Yaguchi ©Ice Brave Executive Committee All rights reserved.
【妥協なきプロ精神が心をつかむ】
11月1日、京都。宇野昌磨がプロデュースするアイスショー『Ice Brave2』が華やかに幕を開けた。大盛況だった『Ice Brave』の続編で、フィギュアスケート界で最高の競技者だった宇野は、表現者としても着実に世界を広げている。
「競技生活を離れても、練習してきたことをお披露目できる場所があるのはありがたいことです。競技とはまた違った緊張感があって、アイスショーは『楽しんでもらう』っていうところで、自分たちも楽しむ姿を見せられる。そこでいい空間が生まれているなと感じています」
座長である宇野は言う。言葉の端に見えるプロフェッショナリズム。それは彼の生き方にも通じ、ショーの土台にもなっていた。
いくつもの赤いペンライトが観客席で振られるなか、宇野はリンクを激しく疾走した。スタートからアクセル全力だった。ふたりのスケーターを従えながら、『Great Spirit』の重低音で響く音に合わせ、ダイナミックに滑る。冒頭の一瞬で、観客の心をつかんだ。
そしてグループナンバーのあと、ソロの『Gravity』で一気に畳みかける。パープル、ピンク、ブルーが混ざったようなシャツは宇宙や地球を感じさせ、重力につながる。照明も含めて、トータルな世界観が感じられた。現役時代も滑っていたプログラムだけに、長年のファンにはノスタルジーも感じさせるだろう。
回転の速いスピンでは、歓声のボリュームが一気に上がった。低い重心の滑りは変わらず、十八番(おはこ)のクリムキンイーグルもサービスした。最後は万感の思いを、見上げた空に解き放った。
「『Gravity』は現役時代に使っているので、体に馴染んでいるのはありました。今回はステファン(・ランビエール)がいないので、ステファンが前回やったものを僕がやる形ですかね。『Ice Brave』から見た人は、また違った気持ちで今回のショーも見てもらえるはず。演目に関しては想像を超えることはなかったですけど、想像どおり、悪くないクオリティだったかなって」
宇野は彼らしく、正直に言う。とにかく脚色しない。そこにおかしみが生まれるが、彼の"妥協しない"プロ精神にもつながっている。
【見せる部分にこだわる座長の作法】
そこからも怒涛だった。タンゴ『ブエノスアイレス午前零時』は、グループナンバーだったが、宇野を中心に6人が競演した。
最後に真っ赤なドレスの本田真凜が登場し、『天国の階段』ではフラメンコの律動で艶かしくも高潔に観客をあおった。スパイラルで盛り上がりが最高潮に達すると、再び宇野がソロで舞い、『Your Last Kiss』ではトーループやアクセルを降りた。疾走感のある滑りで、黄金のような髪がなびいた。
相当なエネルギーを、それぞれのスケーターが使ったはずだ。そこでショー中盤にあるMCタイムで、ひとりのスケーターは息が上がってしまった。少し疲れて消耗したように見えた。その日2回目の公演だけに疲労がたまるのは無理もないが......。
「これが1回目の人(観客)もいるので、疲れてなさそうにいきましょう!」
宇野はやんわりと声をかけ、会場全体を明るくした。その後はスケーターたちが「元気」をアピールし、見事に活気は増している。宇野自身が誰よりもエネルギーを使っていたが、プロのスケーターあるいは座長の作法のようなものを率先して見せた。
「『Ice Brave』は『1』に引き続き『2』も、体力面はきついんですが......」
宇野はそう言って、こう続けている。
「自分の強みは競技者時代から、全部において出しきる、やりきるってところで。ペース配分とかはあまり考えられないから、すべてに全力で挑み、きつくなったらきつくなった時に考える。それがずっと続く、自分なりの一生懸命でした。たとえば、自分たちキャストは何公演目って数えますけど、そのなかの1回しか見ない人もいるはず。自分たちがきついと感じる部分を、見せていいところとダメなところは意識していますね」
おそらく、そのプロフェッショナリズムこそが、『Ice Brave』のベースだろう。今年7月、『Ice Brave』公演後のインタビューで宇野に問うたことがあった。
ーー現役引退してたった1年、ここまでプロスケーターとして活動している自分を俯瞰してどう思いますか?
「不思議というか......なんですかね。『プロになって現役の時より練習するようになった』という話を聞いていたんですが、その意味がよくわかりました。今回、初めてプロデューサーという大役を任されたのはあると思いますが、言い回しとしてよく使われる『プロになってより自由になった』というのが、まさにそのとおりだなって。
もっともっとうまくなりたいって現役の時にも思い描いていたことですが、うまくはなりたいけど、点数にはならないからとブレーキをかけていたところが解消されました。プロは、皆さんを楽しませることだけをひたすら磨き続けられる。自由っていうことは、やることが無限にあって、すごく充実していているんですよ」
宇野は表現者として無限の入り口に立ったのだ。
中編につづく