<令和7年度 秋季東京都高等学校野球大会:国士舘8―0成立学園(7回コールド)>◇2日◇準々決勝◇スリーボンドスタジアム…
<令和7年度 秋季東京都高等学校野球大会:国士舘8―0成立学園(7回コールド)>◇2日◇準々決勝◇スリーボンドスタジアム八王子
国士舘は飛び抜けた選手がいるわけではないが、秋の戦い方を知る独特のすごみがある。
投手陣はまず背番号1の新居 蒼虎(2年)が安定した投球で試合を作る。4回裏に安打2本を打たれ、タイミングが合いだすと、5回裏には背番号11の杉本 大維(1年)にさっとスイッチする。杉本も四球などで余計な走者を出すことなく、3回を無失点に抑える。「新居はコントロールがよく、落ち着いていました。杉本は粘り強く投げてくれました」と国士舘の箕野 豪監督は語る。
1回裏の成立学園の攻撃では、新居が立ち上がりだけは制球を乱し、2つの四球などで二死二、三塁のピンチであったが、成立学園の5番・横山 和也投手(1年)の痛烈な打球を左翼手の石田 凪人(2年)が好捕して得点を与えなかった。「地面がゆるく、すべってしまいました」と石田は言うが、しっかりと捕球した。
石田は攻撃でも試合を動かす。3回表一死一、三塁の場面で3番の石田は、きっちり右犠飛で三塁走者の新居を迎え入れた。
4回表に安打2本で1点を追加した後の5回表、一死一塁から石田が右中間を破る三塁打を放ち、1点を追加する。「高めに浮いた真っ直ぐを、詰まることなくうまく運べました」と、石田は言う。
7回表は1番・鈴木 亮汰内野手(2年)がセンターオーバーの打球。ベースランニングがうまい鈴木 亮汰は一気に生還した(記録は三塁打と中堅手の失策)。
続く2番・大信田 怜真外野手(2年)は遊ゴロだが、大信田の足が速く内野安打になる。続く石田の右前安打で無死一、三塁となったところで成立学園は1回戦から1人で投げていたエースの横山を降板させ、松﨑 孝大(2年)が登板した。
それにしても、3番・石田は夏も中軸を担った選手だが、今大会の安打は2回戦の工学院大付戦で放った二塁打の1本だけ。3回戦は5打数で一度も出塁できなかった。「(コーチの)池田(泉)さんに指導してもらい、頭が突っ込んでいることがわかりました。それで頭を残して振るようにしました」と石田は言う。週末ごとに試合があることをうまく活用し、平日の練習で問題点を修正する。これもセンバツ出場10回の実績が示す、国士舘が秋の大会に強い理由の一つだ。
国士舘は代わった松﨑から5番・丸井 浩暉内野手(1年)が中前安打を放ち1点を追加。続く6番・髙橋 昊太内野手(2年)の三塁打で2人が還りこの回4点目。7-0となり裏の成立学園の攻撃を0点に抑えれば、コールドゲームが成立する。ただコールドゲームをより確実にするにはもう1点が欲しいところ。そこでこの試合で初めてスタメン起用された鈴木 一朗内野手(2年)が高めの難しい球に体をのけぞらしながらもしっかりスクイズを決め、8-0とした。まさにコールドをより確かなものにするダメ押しの1点だ。
日米で野球殿堂入りしたマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏と同姓同名の鈴木 一朗は1回戦でも試合の流れを変えるバスター安打を決めている。三塁手としてスタメン出場したこの試合でも、三塁のベンチ方向の難しいファールフライを好捕するなどの活躍をしており、この大会のラッキーボーイになりつつある。
国士舘は準々決勝で本来の戦いに磨きがかかり準決勝に進出した。準決勝の相手は日大三を破った帝京だ。際立ったスター選手はいないものの、一戦ごとに強くなっている秋の戦いを知る国士舘の今後の戦いが注目される。