(2日、秋季近畿地区高校野球大会準決勝 神戸国際大付7―1大阪桐蔭) 「ようやく回ってきたチャンス」。神戸国際大付の背…

 (2日、秋季近畿地区高校野球大会準決勝 神戸国際大付7―1大阪桐蔭)

 「ようやく回ってきたチャンス」。神戸国際大付の背番号12・豊岡速伍(そうご)投手(2年)は、先発のマウンドをそう表現した。この試合にかける思いは誰よりも強かった。

 対するのは大阪桐蔭。ただ、気負いはない。マウンドで大きく息を吐き、ニコッと笑う。

 公式戦での先発は1年ぶりだった。昨秋の県大会では1年生ながらエースナンバーを背負い、3位決定戦で先発を任された。青木尚龍監督も「一番期待をしていた」。春の県大会でも登板機会を得るなど、チームの軸になるべき選手だった。だが、春に腰椎(ようつい)分離症を患い、公式戦での登板から遠ざかっていた。

 チームはエースの秋田依吹投手(2年)や宮田卓亜(とあ)投手(2年)ら投手陣の層が厚い。けがで動けない分、入念なストレッチで柔軟性を高め、負担のかからないトレーニングで体を作り直した。

 この日は「結果でチャンスをものにするしかない」と腕を振った。キレが増した「生命線」のスライダーを中心に、五回まで無失点に抑えた。

 六回に3連打で失点したが、けがの期間に支えてくれた母からの「楽しんできてね」という言葉を思い出した。内角の直球でピンチを切り抜け、6回1失点でマウンドを譲った。

 試合後、青木監督は「自信になったと思います。ただ、物足りないといえば、物足りないです」と、期待からこその言葉がこぼれた。

 豊岡投手は「もっと長いイニングを投げなければならない。いつか自分の手でエースの座を取り戻したい」。かつてのエースが見せた投球が、投手陣の競争をさらに活発にする。(原晟也)