起源が100年前にさかのぼる「館山湾寒中水泳大会」が、今年1月に開かれた第78回大会を最後に廃止されることになった。主…

 起源が100年前にさかのぼる「館山湾寒中水泳大会」が、今年1月に開かれた第78回大会を最後に廃止されることになった。主催団体の一つである千葉県館山市は、「健康リスクの高さ及び安全管理にかかる負担」「悪天候による中止リスクの高さ」「市職員体制の逼迫(ひっぱく)」などを廃止理由に挙げている。近年は参加者も減少傾向にあったという。

 同大会は、大寒の頃に、参加者が輪になって歌を歌い、掛け声を上げながら寒中水泳を楽しむ伝統行事だ。ちょうど100年前の1925(大正14)年、旧制安房中(現安房高)水泳部が寒中稽古をしたのが始まりとされる。48年1月、当時学習院中等部に在籍していた皇太子時代の上皇さまが同市を訪れた際に記念行事として開催されて以降、年中行事になった。

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 大会の廃止は「仕方ない」と受け止める反応がある一方、残念がる声もある。安房高出身者は、後継の大会の独自開催に向けて動き出している。

 同高水泳部出身で同校の非常勤講師をしている加藤宗人さん(68)は、大会が廃止されると聞き、「何で?」と思ったという。最後となった今年の大会は、団体参加が安房高と自衛隊のみで寂しく感じたが、それよりも「伝統行事として欠かせないもの」という思いが強かった。

 水泳部出身者に連絡すると、「ぜひとも残してほしい」といった声が大半で、「自分一人でもやります」という反応すらあったという。

 10月11日にはオープンウォータースイミングの日本学生選手権が館山市の北条海岸で開かれた。他県の水泳関係者との間で寒中水泳大会の話題になり、「なくなっちゃうの?」と聞かれて、加藤さんは「そんなことはない」と言い切った。

 「あれは水泳部の伝統行事だから」。そう言って開催に向けて意気込む同高水泳部関係者だけでなく、同高の他の運動部出身者の中にも同調する動きが出てきつつある。

 県水泳連盟会長でもある加藤さんは、大会運営の経験が豊富で、安全確保などのノウハウも持ち合わせている。開催にあたっては、一般参加は受け付けず、海に入る時間は5、6分程度とし、さらに看護師による事前の健康状態のチェックを実施するなど対策を施すつもりだ。

 「現段階では50人ぐらいでやりたい」。そんなイメージを膨らませている加藤さんは「LINEグループを若い世代にも広げて、(開催の)輪を大きくしていきたい」と目を輝かせる。(八鍬耕造)