(27日、秋季高校野球近畿地区大会準々決勝 智弁学園6―5東洋大姫路) 大ピンチの場面で、智弁学園(奈良1位)の捕手、…
(27日、秋季高校野球近畿地区大会準々決勝 智弁学園6―5東洋大姫路)
大ピンチの場面で、智弁学園(奈良1位)の捕手、角谷哲人(2年)は迷っていた。
試合は25日に始まり、五回終了時点で智弁学園が4―0とリードした。だが、雨の影響で翌々日に継続試合になり、この日六回から再開した。
だが、チームはミスを連発してしまう。
先発左腕の杉本真滉(2年)が七回に2点二塁打を浴びて2点差に迫られた。八回は1死から一塁手の逢坂悠誠(1年)が失策。ここで杉本の制球が乱れる。死球などで満塁とされると、暴投で1点差となった。
さらに四球をはさんで、再び逢坂の失策で2点を献上し、逆転を許した。
4点差をひっくり返して盛り上がる東洋大姫路(兵庫3位)のベンチ。一方で、マウンドに集まった智弁学園の内野陣は、まさかの事態にうなだれるしかなかった。
主将の角谷は考えた。どんな声をかければいいのか。「逢坂は泣きそうな顔をしていた」
新チームで主将に指名されたとき、小坂監督からは「後輩の目線で考えられる選手になれ。1番上の立場になる人間が偉そうにしていたら、誰もついてこない」と伝えられた。
思い出したのは近畿大会1回戦の近大付(大阪2位)戦だ。三回までに6点を奪われて大量リードを許していたが、粘った末に八回に逆転した。
仲間に言った。「あのときも6点とられたけど逆転したやん。大丈夫やって」。逢坂を見て、「次でアウトにしよう。大丈夫、大丈夫」と言い続けた。
角谷は1年生の気持ちを考えた。ミスを責めてはいけない。「近畿大会のようなプレッシャーのかかる場面をまだ経験していないので、しょうがない。まずは落ち着いてもらおうと思った」
後続を抑えると、直後の攻撃で先頭の角谷が右前安打で出塁した。1死一、三塁とし、スクイズで同点に追いつく。すると、最後に逢坂が気を吐いた。九回2死一、三塁で一塁強襲のサヨナラ安打を放った。
エースの杉本は粘って完投。「焦りすぎて最初は角谷の話が聞こえていなかった」と苦笑いで振り返る。「でも、呼び止められて『大丈夫だから』と何度も言われて、やっと落ち着けた」
来春の選抜大会で近畿地区の一般枠は6。智弁学園は4強入りを決め、2021年以来の選抜出場をほぼ確実にした。
九回に左前安打で逢坂につないだ角谷は「アドバイスが聞こえていたかはわからないけど、ほっとしました」。
試合後、記者たちに囲まれて笑顔の仲間を見ながら、胸をなでおろしていた。(室田賢)