■After Game Talk あのとき、何を思い、試合に臨んでいたのか。時を経て選手同士が語らう「After Gam…

■After Game Talk

 あのとき、何を思い、試合に臨んでいたのか。時を経て選手同士が語らう「After Game Talk」。第107回全国選手権準々決勝で戦った県岐阜商の坂口路歩(ろあ)一塁手、横山温大(はると)右翼手と横浜の阿部葉太中堅手、奥村凌大(りょうた)二塁手の4人をオンラインでつなぎ、振り返ってもらった。

 ――試合は延長11回、タイブレークの末に県岐阜商が8―7で勝ちました。第107回大会のベストゲームにも挙げられるこの試合の前、互いにどんな印象を持っていましたか。

 阿部(横) 宿舎で県岐阜商の3回戦を見たんですけど、めっちゃみんな笑顔で試合をしていて、不気味でした。雰囲気を持っていかれたら怖そうで、横山君だけは絶対に抑えようと。

 奥村(横) 自分たちとの試合も、応援が県岐阜商寄りだったのが印象に残っています。

 坂口(県) 横山寄り……。横山が打席に立つと、(観客席から)「うわー!」って。ワンオク(ONE OK ROCK)のライブみたいな感じで、盛り上がりがえぐかった。

 横山(県) そんなか(笑) もう、横浜と試合ができるだけで光栄で、春ずっと甲子園見とったんで、そんなチームと試合ができるのは幸せやなって、みんなで言いながら。感謝して楽しんでやろうと逆に楽な気持ちでした。

■横山君だけは……

 ――試合は序盤から互いに外野手の好守がありました。

 阿部 横山君だけは絶対に抑えようと。二回に打球をダイビングして捕ったんですけど、その前の一回の横山君の守備で全部、持っていかれました。

 横山 (2死二塁で奥村頼人が)打った瞬間、打球が低かったので前に出ちゃって。判断を間違えて。めっちゃ伸びてきて、「やばい」と思ったんだけど、グラブを出したらたまたまボールが入ったので本当に良かった。

 阿部 わざとじゃないですか?

 横山 全然。抜けて先制点入っていたら全然変わってたなって思います。

 ――五回までで県岐阜商4―0横浜の展開でした。

 坂口 先発した横浜の織田(翔希)君のボールがめっちゃ速いと思っていたんですけど、捕手の小鑓(稜也)が一打席目が終わった後に「球が見えた」とめちゃめちゃ喜んで帰ってきて、それでほっとしてリラックスできたかな。

 横山 試合前の予想で、相手先発は「織田君はないやろ」とみんなで言っていたので、まさかだった。連投を感じさせない速さとキレで、全国レベルは違うなとベンチで盛り上がっていました。部でメンタルトレーニングをやっていて、どんなことがあっても前向きに、心の底から楽しむめば結果が出るという意識に変わっていたと思います。

■練習していなかった「内野5人シフト」

 ――八回までに横浜が4点差を追いつき、九回のピンチで内野5人シフトを敷きました。

 坂口 内野5人シフトにはびっくりしました。「えー!」って感じでした。

 奥村 内野5人シフトを使う時は、1点もやれない場面。間を抜けないように守る形で、特に練習とかはしないんです。ミーティングで監督さんが全てのシフトのパターンを説明してくださって、「いざという場面で使う」と言われていました。全員で理解して聞けていたのが、守り切れたところにつながったと思います。

 ――内野5人シフトでスクイズを阻止し、2死満塁からサヨナラを防ぐ奥村二塁手の好判断がありました。

 坂口 僕が一、二塁間に打って、サヨナラと思いきや、気づいたらセカンドに投げられていてアウトになっていました。

 奥村 一塁手の小野(舜友)がいつも以上に(一、二塁間に寄ってきて(一塁ベースに入るのが遅れた)。「何してんだ」って。一塁は絶対間に合わないと思って、気づいたらセカンドに投げていました。日頃からそういうことも監督さんから言われているので、遊撃手の池田(聖摩)が入ったか見ていないんですけど、そこしかないと思って投げました。

 阿部 センターから小野の動きを見て「やばいやばい」と、負けたと思いました。気づいたら凌大がセカンドでアウト取っていて「こいつまじすげえな」と。完全に流れが来ました。

 ――十回に互いに3点を奪い、最後は県岐阜商が競り勝ちました。

 横山 3点差をつけられたときは焦っていたと思うけれど、ベンチが「想定内」と迎え入れてくれた。それで気持ちを落とさずに行けました。

 坂口 延長十一回のサヨナラの場面は、追い込まれていて「やばいな」と。低めは捨てて、三振したらしゃあないと思って打ちました。打った瞬間は何が起きたか分からなくて、歓声で勝ったことを実感して鳥肌が立ちました。

 阿部 本当に悔しいんですけど、また違った感情もあって。甲子園、ましてや夏の準々決勝でこれだけの試合ができたということは、自分の高校野球人生において良い経験になりました。

 奥村 横浜の最後の打者になって、悔しさはあります。でも、自分が今までやってきたことが全て出せた試合でした。

 ――この試合で得たもの、学んだことは。

 阿部 やっぱり野球は1球で流れが変わる。野球の醍醐(だいご)味が全部詰まった試合でした。今後の野球人生において、どこの選手よりも経験値としてプラスになると思っています。

 奥村 今までにない試合ができたと思いますし、そのなかで負けを経験したことは、これから先の野球人生において一生残る。今後の糧になる試合になりました。

 坂口 あの試合はあきらめないことと、笑顔で明るくやることの大切さが身にしみてわかった試合。長い人生において良い経験なのかなと思いました。

 横山 甲子園という舞台に立たせてもらったことはこれからの人生でもプラスにつながることですし、しかも横浜高校さんというとても強いチームとこんな試合ができた。この先の人生でもその経験がたくさん生きてくると思います。(構成・平田瑛美)