いよいよ目前に迫った2025年の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」。多くの選手たちが夢のN…

いよいよ目前に迫った2025年の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」。多くの選手たちが夢のNPB入りを待ち望む中、四国地区では「隠し玉」とも言える現役銀行マンも運命の時を迎える。

 その人とは……現在大津支店に勤務する四国銀行硬式野球部の川田 悠慎(かわだ・ゆうしん)。身長体重は173センチ69キロと野球選手としては小柄。かつ右投左打と一見すると平均的なプレーヤーと思われがちな彼だが、ひとたび動き出すと誰もがそのスピードに驚かされる。50メートル走は一歩目からの計測で5秒7。一塁駆け抜けタイムは4秒を軽々と切り、二盗タイムは3.1秒台を叩き出す。

 さらに基本のポジションは外野手ながら二塁手もソツなく兼務。しかも二塁手の定位置から遊ゴロのカバーリングに入ってしまうような俊敏さも示している。さらには高知時代の定位置だった遊撃手もソツなくこなす。「自分は試合に出ていない時期も多かったので、試合に出ている以上全力でやるのは当たり前」。これが彼の信条だ。

 そんなスピードスターの川田であるが、自身が話すように、ここまでの野球人生は決して日の当たる道を歩いてきたわけではない。四万十市立中村中では陸上部兼任で100メートルでは四国中学総体出場。野球でもKボール高知県選抜で「全国中学生都道府県対抗野球大会in伊豆」での全国準優勝を果たしたことがきっかけになり高知への進学を果たした。しかし、2年夏まではレギュラー奪取は果たせず「もっと野球がしたい」と思いながら黙々と個人練習に取り組む日々が続いた。

 川田に最初に光を灯したのが彼の高知2年時8月に高知中監督から転じた濵口 佳久監督。高知中監督時代から「スピードはずば抜けていた」と川田に注目していた指揮官は「性格がしっかりして自分を持っている」と主将に抜てき。3年春になると高知中で最速150キロを投げた森木 大智(21年阪神タイガース1位)が入学してくる中、主将ばかりでなく森木と寮で同部屋の先輩としても奮闘。本人は「やりたいことが表現できなかった。もっとチームをよくできたと思う」と当時を振り返るが、最後の夏はチームを高知大会準優勝に導いた。

 その後、京都産業大でも主将を務め、地元・四国銀行に入行。ここで開花したのは打撃面であった。

 これまでは脚を活きる逆方向を意識するあまり、スイングが弱くなっていたものの「力強く引っ張る」ことを意識。2年目の今年に入るとバットのスイング軌道を変えたことで、2月、四国アイランドリーグplus所属の高知ファイティングドッグスとの交流戦で人生初のホームラン。右手親指骨折から復帰初戦となったJABA岡山大会・日本新薬戦でもホームランを放つなど、充実の時を過ごすことに。この秋は一次予選から6連勝で日本選手権出場を決め、晴れてNPB球団からの調査書もはじめて手にした。

 川田のドラフト指名が叶えば、四国銀行からのNPB入りは54年ぶり2人目。1971年ドラフト3位でロッテオリオンズに入団し、阪神タイガースでも活躍した弘田 澄男氏以来の偉業だ。波瀾万丈の野球人生を経ても「人生は気力が10割」をモットーに野球人としても、人間としても成長した韋駄天銀行マンは、10月23日夜の吉報を心して待っている。