例年、熾烈な昇格争いが繰り広げられるJ2。今シーズンもまさに「死闘」と呼ぶにふさわしい対戦が続いている。第33節では、…

 例年、熾烈な昇格争いが繰り広げられるJ2。今シーズンもまさに「死闘」と呼ぶにふさわしい対戦が続いている。第33節では、首位の水戸ホーリーホックと3位のジェフユナイテッド千葉が激突。J1昇格への大事な試合でありながら、希代の名勝負となった一戦を、サッカージャーナリスト後藤健生が熱意を込めて分析する!

■柴崎岳と知念慶と「互角」に戦ったボランチ・コンビ

 ジェフユナイテッド千葉は、小林慶行監督が就任して以来、アグレッシブなチームづくりを進め、2023年が6位、24年が7位と昇格争いに絡み続けてきた。そして、今シーズンは昨年までの得点源だった小森飛絢(現、浦和レッズ)を失ったものの、昨シーズンまでの反省を踏まえて、アグレッシブさと同時に安定感のある戦いを進めて、これまで上位をキープし続けている。

 一方の水戸ホーリーホックは、2023年は17位、昨年は15位とJ2リーグでも中位から下位に低迷していただけに、首位をキープし続けた今シーズンの戦いぶりは大きな驚きでもある。

 ただ、その前兆はあった。

 今年の2月1日にあった「いばらきサッカーフェスティバル」で、水戸は鹿島アントラーズ相手に善戦したのである(結果は1対1の引き分け)。

 この試合でも、やはり水戸のMFは能力の高さを示した。千葉戦のときにはMFは大崎航詩と山崎(※崎は“たつさき”)希一だったが、鹿島とのプレシーズンマッチで山崎と組んだのは川上航立。当時22歳の大卒新人だったが、山崎と川上のボランチ・コンビは鹿島の柴崎岳知念慶と互角に戦って見せたのだ。

 単にボールを奪うだけでなく、奪ったボールを効率的に前線に運ぶ能力も高かった。

■称賛されるべき「生え抜き」の指揮官

 もちろん、当時の鹿島は鬼木達監督が就任した直後でテストの段階であり、一般の評判もそれほど良くもなかった頃だ。

 それにしても、若手主体の水戸がJ1の優勝候補の一角である鹿島と互角以上に渡り合っている姿を見て、「水戸もなかなか強いんじゃないか」という印象を抱いたものだった。

 その鹿島戦とは、メンバーは大きく変わっているが、それでもプレーの内容はよく似ている。それだけ、チームとしてのコンセプトが選手に浸透しているということの証拠である。

 鹿島との試合の後の記者会見でも、森直樹監督はまだ足りないところはあるが、「チームの土台はできたかな」と手応えを語っていた。奪ってからシュートまでつなげていくことを、当時から重視していたようでもある。

 水戸は財政的にはJ2リーグの中でも小さなクラブで、有名選手もいない。そんな中で、首位争いをする安定したチームをつくり上げた森監督は大いに称賛されるべきだろう。森監督は、指導者として水戸でずっと活動してきた、いわば生え抜きの指導者だ(ちなみに、千葉の小林監督とは同じ埼玉県出身で同学年)。

 いずれにしても、水戸対千葉の一戦は、昇格を争う2部リーグの上位対決らしいタフなゲームで、90分間互いに引くところなく戦った両チームの選手を大いに祝福したい。

■「原点」ともいえる“質実剛健”な試合

 サッカーというのは非常に多元的な競技だ。

 テクニックを使って多彩なパスワークでボールを動かしてビルドアップする試合もあれば、圧倒的な個の力で勝負が決まる試合もある。また、監督の采配やアクシデントが試合の流れを大きく変える(良い意味でも、悪い意味でも)こともある。

 そんな中で、ボールを奪い合い、セカンドボールをひたむきに拾い続ける、そんな“質実剛健”な試合もサッカーの魅力であり、“フットボールの原点”であるとも言える。

 日本では、どちらかといえばパスをつなぐ技巧的なサッカーが称賛されることが多いし、また、最近はカウンタープレスから相手のボールを奪ってショートカウンターで決着をつける戦術的なサッカーも流行っている。

 そんな中で、その“フットボールの原点”とも言える、ボール支配をめぐって戦い続けるタフなゲームももっと増えていい。

■トーナメント・ステージで「勝ち切る」ために

 先日のU-20ワールドカップで、日本代表は素晴らしいパフォーマンスを発揮し、3戦全勝無失点でグループリーグを突破。ラウンド16でもフランス代表を圧倒した。だが、フランス戦では延長120分まで戦って得点を奪うことができず、逆に最後の最後にPKを取られて敗退となった。

 男子のあらゆるカテゴリーの世界大会で、日本チームはトーナメント・ステージの初戦の壁を突破できないでいる。森保一監督率いるフル代表はカタール・ワールドカップでドイツやスペインを破ったものの、やはりラウンド16で敗退となった。

 トーナメント・ステージで勝ち切るためには、“フットボールの原点”的なタフなゲーム。ボールを奪い合う格闘技的部分や、守るときには守り切る、奪ったボールを確実につなぐといった強度の高い試合を追求していくべきなのではないか。

 J1リーグも、J2リーグも、あるいは他のカテゴリーのリーグも秋になっていよいよ優勝争い、残留争いが熾烈になってくる季節だ。そんな中で、この日の水戸対千葉のようなタフな戦いをもっと見てみたいものである。

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